男前Lお題---コスチュームプレイ 2 「余裕だな、竜崎」 「何が、ですか?」 「だって、今夜も同じベッドで寝るんだろ?」 笑っていたLが、途端にスイッチを切ったかのように表情を消す。 対して、僕は思わず口の端が上がるのを止められなかった。 「今日は、このままリュウザキ月とヤガミLで行こう」 「……何の意味があって?」 「ゲームだよ。先に素に戻った方が負け」 「良いですけど……昨夜も言ってましたが、負けたらどうなるんですか?」 「おまえが負けたら、もうゲームは終わりだ。 勝てば明日も茶番に付き合ってやる」 僕が勝てば、もう監視なんかさせない。 ミサにデスノートを掘り起こさせ、Lを殺す。 「分かりました……命が賭かってるわ受身だわで 著しく私の方が不利ですが、仕方ないですね……」 「命が賭かってるってのは僕がキラだった場合だろ? おまえの思い込みだ」 「それなら良いんですが、そう楽観的になれないタチな物で」 「なら別に棄権してもいいよ。用意……スタート」 「……」 瞬間的に背筋を伸ばし、やや顎を上げたL。 不器用そうにシャツのボタンと格闘するのを見て、僕は笑いを堪え、 背を丸めた。 「では、ベッドルームに行きましょうか、リュウザキくん」 「ああ」 何とかボタンを留め終えたLは言葉少なに答え、大股で寝室に向かう。 なんだ、普通に歩こうと思ったら歩けるんじゃないか。 僕なら絶対にスリッパを履くが、細かい事には目を瞑ってやろう。 「待って下さいリュウザキくん」 「遅いな。早く来いよ」 僕はそんなに高飛車な物言いはしていないつもりだし、いきなり 不機嫌そうな顔もしないと思うんだが。 それでも「L」の特徴を取り去ったLは、全く別人のようで面白かった。 ぼそぼそ喋っても通る声だったが、活舌よく話すと思ったよりずっと良い声だ。 姿勢も良いので、後姿はちょっとしたイケメン風になっている。 大学でもそうしておけばあんなに目立たなかったのに。 縞シャツのLはベッドに座ると、少し顔を顰めた。 「まだ痛みますか?」 「ああ……少しね。でもそれより、ヤガミの服のせいで節々が窮屈で」 「……あなたに呼び捨てにされるのは違和感があります」 「ボクだっておまえに『くん付け』されるのはちょっと気持ち悪い」 先程の様子からLはすぐに笑い出すかと思ったのに、案外と 完璧に「ヤガミライト」を演じていた。 僕もかなり「L」を再現している自信はあるが。 「思ったんだけど、ボクが夜神月で行くんだから、ボクが上でいいんじゃないか?」 「言ってみただけですよね?リュウザキくん」 誰を演じていようが、抱いてくれと言い出したのはおまえだ。 嫌ならゲームから降りればいい。 「……ああ」 Lは不承不承といった顔でベッドに横たわった。 しかも、ちゃんと背中を伸ばして。 しかしこうしてみるとLは驚く程僕と体格が似ている。 顔さえ見なければ、まるで自分を目の前にしているようで奇妙だった。 僕が、僕の服を脱がせる日が来るとは……。 と思いながらベッドのうえにしゃがみこみ、指先だけを使って コットンパンツのボタンを外す。 汚い物を触るような手つきで自分の服を触るのは複雑だが、自分でも意外な事に Lの形態模写がだんだん楽しくなって来ていた。 「完璧」を目指し、そのように振舞う人生は自分の選択だが どこかLの野生に憧れる部分もあったのかも知れない。 そんな事を思いながらファスナーを下ろすと、Lの手が、僕の手を押さえた。 「上は、脱がせないのか?」 「リュウザキくんがしそうな事を再現しているので」 「……」 「それにその縞のシャツ。似合ってますよ? そのまま四つ這いになって下さい」 Lは演技なのか素なのか、僕を一睨みした後、後ろを向いて膝を突いた。 緩めていたズボンが、尻の半分までずり落ちる。 そのまま下着ごと、太腿まで下ろすとびくっと震えた。 後ろを向くと、ますます僕のようだ……。 気持ち悪いと言えば気持ち悪いが、逆にLの目には、 僕がLのように映っている筈だ。 「自分に抱かれる気分は、どうですか?リュウザキくん」 「自分を抱く気分はどうだ?ヤガミ」 尻だけ剥かれた間抜けな格好でも、即返してくる所がさすがLだ。 まあ、僕だとしてもそうするだろうが。 「流石に、萎えてますね……」 「おまえはどうだ?この状況で勃起してるとしたら 相当の変態だぞ?」 「幸いにもワタシは変態ではないようです」 興奮、しないでもなかったが、いきなり勃起は出来ない。 昨夜は一体どうして出来たんだろうか。 Lの生殖の事。 両手を手錠で繋がれて、ベッドに貼り付けにされたL。 ……暴行に無抵抗な、正義の味方。 思い出してみると微かに兆すものはあるが、まだ不十分だ。 だが僕は構わず、枕元に用意してあったハンドクリームを手に取った。 馴染ませてから、少し開いた太腿の間に手を入れる。 「いきなり、だな」 「誤解ですリュウザキくん」 敢えて陰茎には触れず、目の前にぶら下がった睾丸を揉む。 太腿の内側にもクリームを塗ると、不自由そうに振り返ったLの頭上に クエスチョンマークが見えるようだった。 笑いを堪えながら、足を閉じさせて自分の陰茎を露出させて手を添える。 柔らかい物を、指で道を開きながらLの太腿の間に挿入するように入れると、 相手は驚いたような声を上げた。 「何するん……だ?」 惜しいな。 もう少しで「何するんですか夜神くん」って言う所だったのに。 「素股です」 「ごめん。日本語が不自由なつもりはなかったんだけど、 ちょっと分からない」 ほら。口調は僕の真似のままだけど、少し抑揚がなくなってるよ。 「こういう事です」 そのまま尻を掴んで前後に腰を動かすと、刺激を受けて硬くなってくる。 先は、垂れたままだったLの陰茎を何度も押したが、 その内何にも当たらなくなった。 どうもLも、勃起してきたらしい。 変態め。 「……なあ、ヤガミ」 「何ですか?リュウザキくん」 「そういう方法があるんなら、ボクなら今日は挿入しない」 「日本語が怪しくなってきてますけど。大丈夫ですか?」 Lが、少し混乱してきている。 元々日本語は母国語ではない。 丁寧語で覚えてしまっているのなら、口語で喋るだけでも それなりに集中力が要るのだろう。 「『竜崎』なら、相手が傷めている場所を、敢えて攻撃しないって 言ってるんだ」 「つまり?」 「今日は尻を使わないで欲しい。 スマタって言うのか?それで終わらせて欲しい」 妙に生々しいLの弱音に、僕は思わず吹き出してしまった。 まあ、勝負はお互いの物真似が崩れた時にしかつかないから 勝ち負けには関係ないが。
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