男前Lお題---濡れ 2 私も仕方なく、バスローブの袖に手を通し、タオルを頭に掛ける。 そのまま紐を結びながらバスルームを出ると、後ろから来た夜神に 何故か体当たりされた。 「なんですか」 「おまえさ、謝れよ」 「謝ったじゃないですか」 「じゃなくて。……悪かったからさせてくれって頭下げろよ!」 「夜神くん……」 「何?」 私は思わず笑い出してしまい、バスタオルごと夜神を抱きしめた。 「何だよ!」 「あなた本当に東大に入ったんですか?」 「入ったよ!おまえと一緒に主席でな!」 「にしては……いや、そこが可愛いんですが」 「バカにしてるな?」 「いいえ。褒めてます」 言いながらキスをすると、夜神も破顔して、二人で縺れながら ベッドに倒れこむ。 「……夜神くん。我慢できません。させて下さい」 耳元で囁くと、夜神は目を伏せて考える振りをした。 「どうしようかな……」 「滅茶苦茶にさせて下さい。朝まで離しません。 あなたが何度射精しても、許してくれと言っても。 ……頭がおかしくなるほど、感じさせてあげます」 夜神は切なげに眉を顰めながら、足を開いた。 「竜崎……今度はおまえが、僕を殺してくれ」 「『キラ』のセリフとも、思えませんね」 この一風変わった青年を電脳の海からピックアップしたのは 偶然に過ぎない。 彼は後腐れのない出会いを求めていたが、その年齢から きっと援助目的の事なのだろうと察せられた。 細身好みで自身も細身、学生、リバ、首都圏、それ以外何の情報もなく、 本人のコメントも無個性で素っ気無い。 しばらく見ていたが誰かと交際した様子もなく、なんとなく気になって メールを送ると、思いがけない速さで返事が返ってきた。 『あの、Lか?』 私のネット上の仮名は「L」だが、特に意味はない。 「あの」と言われても恐らく違うとしか言いようがないが、 夜神はあっさりと自分の(恐らく)本名、写真を送ってきた。 驚く程美形だった。 そして、通っている学校は、本当かどうか、東応大学との事だった。 私は、セックスには自信があるが、正直容姿は人並み以下だと思う。 猫背で顔色は死人だと言われるし、目の下の隈は恒常化している。 せめて髪型や服装に構えば良いのだろうが、生憎興味が持てない。 こういう、自分の容姿に自信のあるタイプとはきっと合わないだろう。 と、写真を送るのを拒否したが、夜神はその返信にすら満足そうに 会おうと言ってきた。 こんなに若くて可愛い子が、私などに執着するのが何だか気持ち悪かったが 性欲には勝てず会う約束をする。 夜神は驚くことに人ごみの中から一目で私を見つけ、 「久しぶり」 と言って寄ってきた。 私を見分けた事には感心するが、その後は少しひいた。 夜神には、極度の妄想癖があった。 どうも、私が世界一の探偵、夜神が何やら超常現象を扱う大犯罪者だと 思い込んでいるらしいのだ。 飲んでいる時もその話ばかり、ホテルに誘うとあっさり着いてきたが 少し間が空けば「キラ」と「L」の話をしていた。 ……探偵に抱かれたがる犯罪者とは奇妙だが。 そういうシチュエーションも悪くない。 どこまで本気なのか分からないが、私は夜神の妄想に付き合う事にした。 それから、夜神は体を繋げている間も自らの犯罪について 語り続けている。 矛盾やご都合主義ばかりだが、話としては面白い。 小説家にでもなれば良いのにと思う。 と思っている間に、話の中で私が死んでしまったのだ。 という事は、今夜神を抱いている私は一体どういう立場なんだ? 「あ……ああっ!だめ、また、イッちゃう、」 「で、倉庫の中に、ニアはいたんですか?」 「そこ……いい!もっと、もっと、」 「どうなんですか?」 「いた、SPKと一緒に、でも、面を被って、」 「それで?」 「ちょっ、ダメ、今は、イかせて、」 「こちらこそ駄目です。教えて下さい。どうなったのか」 夜神は、私の指だけで何度イッただろう。 それでも勃起しているのだから、若さというのは凄まじいものだ。 「魅上が!」 「魅上が?」 「魅上に、ニアとSPK全員の名前を書かせるつもりだったんだ! ……頼むから」 「何ですか?」 「……欲しい」 「何がです?」 「……」 「はっきり言ってくれなければ、分かりません」 「……」 やはり夜神は、極度の負けず嫌いらしい。 涙を浮かべたまま歯を食いしばり、大きく息をすると 今回の絶頂の予感を何とか逃したようだ。 「……ニアが、魅上のノートのページを入れ替えるのは 計算どおりだった。計算違いだったのは、」 「……」 「魅上も、自らの手で高田を殺そうとした事……」 「つまり本物の、デスノートを取り出して書いたのですね?」 「何故それを?!」 「簡単な推理です。あなたほど用心深い人が、ニアの尾行を予想しない訳もなく そんな人に本物のノートを携帯させる筈もない。 ならば、本物はどこかに隠しておいてまとめて裁いたのですね?」 「……おまえは、やっぱり『L』だ。僕はずっと、Lのコレが欲しかったんだ」 夜神は体を起こして私の上にのしかかり、張り詰めた私を 人差し指と中指で挟んでいた。 「いいだろ……?」 「はい」 答えると同時に、夜神は私の腹に乗って自らの秘所に私を導く。 「くっ……あ……」 そして腰を沈め、私をくわえこんだ。 「やっぱり、変です。探偵に抱かれたがる犯罪者なんて」 「……ふふっ。そうでもないよ。 でも当時は自分でもそんな気持ちに気づいていなくて、勿体無い事をした」 「動いて良いですか?」 「僕が動く」 夜神が、私の上でゆっくりと上下始めた。 髪を振り乱し、深く私を迎え入れる。 「僕が、東大生なのは、本当だよ、」 「はあ、」 「後で、学生証を見せる。 おまえだって、イギリスかどこかの、トップ大学、出てるだろ?」 ……どうして分かったのだろう。 交わしたメールではそんな話はしなかった。 身分証明か何かを抜かれたのだろうか、と思い返すが このホテルに入ってから夜神はずっと私と共にいる。 「でも、私の名は、竜崎ではありません」 「僕だって、夜神月じゃ、ないさ」 はあはあと、獲物を前にした獣のように喘いで獣のように涎を垂らす。 「本当に、覚えてないの?」 「何十年か前に、キラという得体の知れない教祖だか犯罪者だかが出たのは 知識としては知ってますけどね」 「そのキラの、最大のライバルは、おまえだったんだよ……L」 それを最後に動きがどんどん激しくなり、夜神の声は言葉にならず、 ただただ淫靡な呻き声が続く。 私もどうしようもなく追い上げられ、頭の中が焼け付いて 遂には本能以外何も残らず、夜神の体の奥に全てを放った。 射精直後の鈍い意識の中、右手首を金属の輪で引っ張られたような気がした。 勿論錯覚なのだが、夜神の話を聞いた後なので奇妙な既視感のように思えて 何となく薄気味悪くなる。 その筈もないのに、リアルに思い出される温まった合金の感触。 そしてその先の鎖。 かちゃ……かちゃ。 妙に耳慣れたその音は、 現世では聞いた事のない筈の、罪人の音色だった。 --了-- ※原作ベースでは難しい、いちゃいちゃや淫乱月が書けて嬉しいです。 最初は「キラ事件の妄想を語る男娼・月(っぽい人)」と 「可哀想な子の世話を(性的に)するL(っぽい人)」にするつもりでした。 (つまりデスノートと関係ない世界) それじゃL月じゃないと気づいて(いやそれはそれで良いんですが) 転生ネタにしました。
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