男前Lお題---酒 2 ……一体何杯くらい飲んだだろう。 最初は一口飲んでは捨てていたが、アイスペールが一杯になってしまって 全部飲まざるを得なくなってきた。 テキーラ辺りから既に、頭がふらふらするような気はしていたが、 思考はまだ冷静だ。 だが、竜崎に合わせて少し酔った振りをする。 しっかりと座ったり、きちんと発音するのがだるいからではない。決して。 「イギリスに辿り着くまで、あと何杯くらいだ?」 「降参すれば、そこで終わりですが……アマルーラクリーム、私にもちょっと下さい」 「ん」 南アフリカ産と書いてある甘ったるい酒をその辺のグラスに注ぐ。 余分に酒を飲んでくれるのは大歓迎だ。 「どうも。甘い酒は、好きです」 「辛いのは?」 「そうでも、ないです」 何だか、いつもより返答がシンプルだ。 考えるのが億劫になっているとしたら、僕にとって良い傾向にある。 そろりと質問を進めてみた。 「ところで目的地のイギリス……って、竜崎の国?」 「はい。他言、無用に願います」 「うん……言わない」 竜崎の見た目は、僕が部屋に入った時と様子が変わらない。 まるで、同じ顔色だ。 それでも、あっさりと国籍をバラしてしまう辺り、平常心を失っているとみえる。 対して僕は、頭の中は冷えているが……やはり頬が熱い。 ソファに凭れ始めると、もう体重を支えられなかった。 まずい……早く目的を達成して、部屋に帰ったほうが良い。 竜崎に話し掛けようとそちらを向くと、そのまま目が回ってバランスを崩す。 白いTシャツの腹に頭を乗せてしまった。 「悪い……」 「良いですよ。お互い様です」 「竜崎……あの、さ」 暖かく、上下する柔らかい腹が何だか気持ちよかった。 「はぁい?」 「僕の名前……変か?」 「えーっと……いきなり答えにくい事聞きますね……」 「……」 「個人的には綺麗な名前だと思います……ある意味香港風ですね。 成龍(シンルン)なのにJackie-chen、みたいな 」 「違うんだけど……そう言われるとナシでもないか、という気がしてくる」 「今までナシでしたか?」 明らかに笑い混じりの声。 竜崎の喋り方は基本的にあまり感情が籠もっていなくて 分かりやすくはっきりとした発音だった。 それがこんな風に崩れると、アナウンサーが突然地の言葉で 話し始めたような違和感がある。 「ナシだったねぇ。月と書いてライトと読むって何だよって ずっと思ってた」 「夜神くんは、誰よりも完全に満たされていて…… しかも、それを自覚している人、だと思ってました」 「ああ……うん。誰もが持っているコンプレックスってのが 一つもないというのもコンプレックスだからね。 名前を一応コンプレックスと位置づけてただけで、実はそう気にもしてない」 竜崎は今度こそ、声を上げて笑った。 竜崎の笑い声を、初めて聞いたかも知れない。 「それはまた……敵を作りそうなコメントですね」 「大丈夫。おまえ以外には言わないよ」 「それは……光栄に思うべきですか?」 それとも、もう既に敵だから関係ないという事ですか? 聞こえるか聞こえないかの呟きは、聞こえなかった振りをする。 「でもさ、名前って大事だよ」 「夜神くん」 「ん?」 「回りくどい言い方をせず、ストレートに聞いたらどうですか?」 「何を?」 「私の本名」 ……思考が停止した。 いや。止まっている場合じゃない。 酔っ払いの振りをして、何も考えていない振りをして、この刃をかわさなければ。 「うん……教えて」 「嫌です」 まあ、教えてくれないよな、普通。 だが何とか凌げたようだ。 やっぱりレムに書かせるしかないか。 「なぁ、そう言わずに教えろよ」 「上から目線ですね」 「教えて下さいよ〜」 「やーですよ」 くそっ!酔っ払いめ。 「ところで私、誘惑されてます?」 「ん?」 「上に乗らないで下さい。身の危険を感じます」 「ばか。男なんか襲うかよ」 「そうですか?私のを舐めたら本名を教えるって言ったらどうします?」 「……本当か?」 思わず、目を見開く。 本名を教えるのは、命を差し出すのと同じ事だと言うのに。 そんなに簡単に教えてしまって良いのか? それともそこまで酔っているのか? だが、これは色々な意味で絶好のチャンスだ。 目を逸らしたら、冗談ですと言われそうで。 僕は、竜崎の目を見つめたまま手探りでジーンズのファスナーを下ろし トランクスの中から熱い肉を取り出す。 そして、テーブルに手を伸ばして触れた酒瓶を取り。 一口含んで、竜崎の足の間に顔を寄せた。 「Ouch!」 アルコールを含んだまま敏感な粘膜に触れたので、亀頭や尿道が 刺激されたのだろう。 突き飛ばされて、思わず大笑いしてしまう。 僕の口の端から強い酒が垂れ、首筋、鎖骨、とシャツの中に流れ込んで行った。 流れたところがちりちり、ひやりとする。 「最悪です」 「ごめんごめん。軽い消毒だよ」 笑いながら、もう一度竜崎の股間に近づくと、少し逃げられたが ジーンズを掴んで止めた。 「もうしない。舐め取るだけだから」 「L」の、若干怯えた顔に軽く血が沸き立つ。 ぴりぴりした刺激のせいか、少し芯を持ち始めた肉に、舌を這わせた。 酒の匂いがしていたが、何度も舐める内に消えて来る。 そして。 「おっきくなってきたね」 「夜神くん、上手いですね。慣れてるんですか?」 「ははっ、まさか。初めてだよ」 初めてだよ、と言うのも変だな、いつかするつもりだったみたいじゃないか。 本来こんな事は絶対しないんだけど。 ……冥途の土産に、一度だけいい思いさせてやるよ。 「竜崎、おまえって僕より年上だろ?」 「はい」 「簡単に認めるね」 「う〜ん、酔ってるからですかね」 「まあいいや。 前から思ってたんだけど、僕に、丁寧語を使わなくても良いと思うんだ」 「これは……気を使っているわけじゃなくて、距離を置きたいんですよね」 「そうなんだ?」 「はい。私はあなたを逮捕するつもりですから……あまり親しくなると辛いです」 「へぇ。竜崎でも、そんな人間らしい事思うんだね」 「思いますよ。人間ですから」 埒もなく頭の悪そうなしゃべり方をしながらも唇は離さず、 時々舌で撫でるのも忘れなかったので、竜崎はますます硬くなった。 「大丈夫。僕はキラじゃないから、こんなに近づいても」 「ちょっと……夜神くん、もうやめて下さい。出そうですから」 「ここで止めたら辛いだろ?出したら?」 「いえいえ!出してしまう方が辛いです!真面目に、もう」 本気で弱っているような竜崎の声に、何故か高揚が止まらない。 僕は口を大きく開けて、竜崎のモノを口内に含んだ。 「夜神くん!」 「丁寧語、やめたら僕もやめてやる」 「本当ですか?」 また丁寧な言葉に、もう一度口に含んで亀頭を吸い上げる。 「分かりました!分かった!ライト、止めてくれ!」 ……本当に、丁寧語をやめた。 竜崎が普通に話しているのを聞いたのは初めて…… いや、モニタの中のワタリには命令口調で話していたか。 「ライト!」 「そっちが最初に舐めろって言ったんだから、止めないよ」 「この……嘘吐き!」 ますます興奮して暴れそうな竜崎の、睾丸を指で押さえて動きを止め じゅるじゅると音をさせて激しく吸い上げる。 苦いような味が滲んで来たのは、先走りか。 「ライト……頼むから、もう、やめてくれ……本当に……」 泣きそうな竜崎の声に、ぞくぞくする程興奮して、顔の動きを早める。 それでも口が疲れて来て痺れ始めた頃、竜崎の腰が跳ね上がった。 「だめだっ!ライト!」 「ん……」 「あ……、いっ……くっ……!」 「……」 喉の奥に、塩水の塊が出現したのを感じた。 竜崎の……精液だ。 ……馬鹿馬鹿しい話だが。 僕はその時初めて、血の気が引くのを感じた。 何を、やっているんだ?僕は……。 ぴく、ぴく、と小さく震える竜崎のペニスから吐き出されたモノを。 出そうと思ったが、そうすると口内を通るので味わってしまう事になる。 刹那迷った後、思い切って飲み込んだ。 最初に日本酒を飲んだ時のように、食道や胃を刺激されるようで 軽く吐き気がした。
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