Guinol 5
Guiniol 5








夢中でジェバンニの中に出してしまってから、ふと我に返る。
ずっと薄絹を被せられていたような意識がクリアになり、部下の、しかも男の中に自分の性器が入ったままという状況に酷く混乱を来す。

いや、入れたのは確かに私なのだが……。
一体……。

ジェバンニは、私が最後に激しく動いた時に、また射精したようだった。
先程出したばかりだと言うのに、若さというのは凄いな。
お陰で中が締まり、うねり、私まで吐精に追い込まれてしまったが。
男も、行けるのか私は……この年になってこんな事で自分に驚くとは思わなかった。

それにしても、この状況をどうした物か。

ジェバンニは、突っ伏したまま肩を大きく上下させている。
興奮の名残なのか、それとも泣いているのか。
私はと言えば、そんな彼の中から出せば精液が絨毯に垂れてしまいそうで、尻から出すに出せない。
ティッシュはベッドの頭の方にある。

……ジェバンニはベッドカバーに射精してしまっているから同じ事か。
いや、そうでもない、一人分の精液が検出されるのと、二人分では大違いだ。


「その……済まない」


何を言っているんだ……この状況で。
その前に抜けという話だが、抜く為にはジェバンニに身体を伸ばして貰ってティッシュを取って貰うしかない。
その為には対話をしなければならないから……まずは謝るしかない、な。
他に道はない。


「信じて貰えないとは思うが……こんな事をするつもりは、全く無かった」

「……」

「……まずは抜きたいから、ティッシュを取ってくれ」


いや……最悪ジェバンニの血が染み込んだタオルでも良いか?
そうすると、また夜神家からタオルを失敬する事になる……望ましくはないが。

その時、無言だったジェバンニが、くぐもった声を出す。


「……信じます」

「ああ?」

「さっきあなたは私を、『ライトくん』と呼んだ」

「ああ……そうだったか?」

「大方夜神月に懸想していた誰かの幽霊か生き霊が、憑依でもしたのでしょう」

「……」


正に。
正に私もそう思っていたのだが、口にすると巫山戯ていると思われそうで言えなかった。
それを相手の口から言われて、何とも言えない安堵感に脱力しそうになる。


「その……そうなんだ。済まなかった。
 君の言う通りで、私は本当に、ゲイじゃないんだ」

「でも僕はゲイですが」

「え?」


……え?


「気付きませんでしたか?」

「いや……全く」


そんな、急に、何を、
というか、


「さっきは女性の身体を見て興奮していたじゃないか」

「それは」


ジェバンニは向こうを向いたままゆるゆると上半身をもたげ、マットに肘を突いた。


「あの夜神が、こんな物を見ていたのか、というのと」


私と同じだ。
やはり彼には似つかわしくないと見える。


「あなたと同じ部屋に居ながら、こんな物を広げている……という状況に興奮しました」

「?……よく、分からないのだが」

「……」


ジェバンニは身体を伸ばし、指先でベッドヘッドにあったティッシュを引き寄せた。
それに従って中が動き……少し、刺激される。


「ティッシュは渡します」

「あ、ああ」

「でもその前に……あと一度だけ、お願いします」

「……え?」


今日何度目だ……こんな間抜けな声を出すのは。
それでも。


「分かりませんか」

「……」

「さっき勃起していたのは、あなたに肌を触れられたからです」

「……」


ゆっくりと、振り向く。
乱れた前髪の間から、涙で光る目が私を凝っと睨んでいた。


「今勃起しているのは、期待からです」


表情と台詞が、噛み合っていない。
思わず前に手を回すと、本当に半分以上勃ち上がっていた。


「若い……」

「そうですね。それでも私はあなたが好きです」

「……」


さっきとは別の意味で、思考がついていけない。
もう何者かに邪魔されている訳でもないのに、全てが判断出来ない。


「その……私は、今年四十二になる」

「そうですか。私は二十七です」


本当に、若い。
二十七の頃……私は。
そうだな、丁度彼女と別れる少し前か……。


「私は……冴えない中年で、ゲイでもないが。
 君のような前途洋々たる若者に、如何なる意味でも好かれて悪い気はしない」

「……」

「しかし、」

「おためごかしは止めて下さい。嘘を吐かないで下さい」

「……いや」


そうだ……この男は、頭の回転が速いだけではなく、人の機微を見るのが上手いのだった……。


「ずっとあなたを見ていたから分かります。
 あなたは人を愛したり、愛される事を良しとするタイプではない」

「……」

「誰にでも優しく、誰とも深い関係にならない、そんな所をニアは気に入っているのだと思います」

「……ならば」


分かっているのならば。


「それでもあなたが、好きです。
 最初はいくら何でも突然無理矢理は嫌だと思いましたが、今となっては夢見心地です」


抜くに、抜けない……。
なんだこの状況は。


「ライトの身代わりでも良い、今だけで良い。
 ですからどうか、抜く前に後一度だけ」

「いや、ライトは本当に関係無いし……それに、もう弾切れだ」


ジェバンニは自慰をするように前に右手を伸ばし、そのまま尻の穴に触れてそこに刺さった私の根元と睾丸を、三本の指で愛撫し始めた。
同時に、少しづつ腰を動かして、中も刺激する。
そんな事をされても……。

……っ!

……信じられない。
射精したばかりの私が、また兆し始めている……。






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