Guinol 4
Guiniol 4








「あの、あの、何を、」


夜神月のベッド。
目の前の白い肌。

ジェバンニの血と体液で濡れた手で前に触れると、そこは硬く尖っていた。


「ピンナップを見てからずっとか」

「え?え?いえ、違、というか、」


左手で背中の血と体液をタオルで拭きながら、右手を忙しなく動かす。
ジェバンニは痛みと快感と狼狽に、身体全体を蠢かしていた。


「どうして、こんな事を、」

「止めろとは言わないのか」

「……」


黙ったのを良い事に、その性器を蹂躙する。
まるで若い頃を思い出す、その角度。その硬度。
自分の物を扱いている錯覚を起こしそうになる。
もどかしさに、つい夢中になって擦ってしまうと、目の前の赤く爛れた背中がガクガクと揺れて、ジェバンニは溜め息のような悲鳴と共に達した。


「……どうして」

「……」

「どうして、こんな事を」

「それは、」


手に付いた精液をどうすれば良いのか一瞬戸惑ったが、すぐに分かった。
ジェバンニの後ろに回して、その排泄孔の周囲を解すように撫でる。


「レスター、指揮官!」

「彼は、」


……?
何だ?

何を言おうとしているのだ。

私は……?


「彼は、私の獲物だった」

「……は、はい?」


夜神の尻もこんなに滑らかで、扇情的だったのだろうか。
暖かく、私を誘うような、


「……私の、手で、司法の手に、引き渡す……引導を渡す筈、だった……」


そうだ……。
生まれて初めて、命を賭けても良いと思えた獲物。

私は初めて人前に姿を曝し、


「……え?」

「え?って、何、とにかく、指揮官!その手を、」


なんだこれは……。
私の思考ではない。
私の口も私が思ってもいない事を語り、私の手は私の意志と関係無くジェバンニの肌を撫で、その尻を愛撫する。

有り得ない事なので気付くのが遅れた。
何となく動かしているだけで、その気になればいつでも制止出来ると思っていた。

よく考えれば、ジェバンニの性器に触る所からして有り得なかったと言うのに。

それでも彼自身を扱いていた時から、私も。


「レスター……どうか、もう」


ジェバンニがベッドに顔を押しつけて嗚咽を漏らしている。
私はいつの間にか自分の前をはだけ、猛り狂った物を揺すっている。


「どうか。正気に」

「正気ですよ私は」


……乗っ取られる……。
「自分」が、「自分」をただ傍観するだけの「何か」に成り下がっている。

私は身体を屈め、ジェバンニの背に覆い被さった。
火傷にシャツが擦れ、悲鳴を上げて逃げようとするジェバンニの耳朶を前歯で噛む。


「……ライトくん」

「!」


同時に私は、ジェバンニの腰骨を掴んでその中心に自分自身を突き立てる。
私を拒むかと思われた穴は、案外すぶすぶと柔らかく飲み込んでいった。


「ああ……」


締まる……。
何年ぶりだろう。
誰かを抱くのは。

結婚するだろうと思った女もいた。
だが、特殊部隊という職業柄、死と隣り合わせの人生に彼女は怖じ気づいたのだろう、結局プロポーズの直前で逃げられてしまった。
まあ今思えば無理も無い。


「ああっ、ん……レスター、指揮官、いきなりそんな、」


それからは、誰も愛すまいと。
人生を共にしたいなどと思うまいと。
偶に商売女と寝る程度で。


「きつい……太い……」


そんな時に、「彼」と出会った。
あんなに私を興奮させた人間は、彼だけだった。


「あっ、そこは、」


それは殆ど性的興奮に似ていて、


「レスター、駄目だ、そこは、駄目、駄目だめダメダメ、あっ、」


……キラ……。






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