初恋 27 「Lになる事を求めているのか?」 「……」 「僕は、キラだ」 「……」 「と、おまえが言ったんだろ?」 流河の手が緩む。 怯んだ気配がする。 僕はその機を逃さず、素早く起き上がった。 「流河。僕が何と言っても、おまえの中で僕達は敵同士だ」 「そうですが、」 「僕はキラじゃない。だがそれをおまえが納得するまでは 僕達の関係はお預けだ」 「……」 言ってやった……! と思ったが、流河は上目遣いで僕を睨んだ後、目を細めた。 「……ごちゃごちゃと煩いですね。さっきから」 「え?」 人格が変わったかのように。 突然荒々しく僕の手首を掴み、乱暴に押し倒す。 「大人しく口説かれていれば良い物を」 ……昼間の、やや強引だけれどフェミニンな、一方的に僕を感じさせるだけの セックス。 「おかしくなってしまう程嬉しい」と、「陶酔して愚かになってしまいそうだ」と。 言っていたのは、嘘だったのか? 「あなたが好きです。愛しています。それは本当です。 でも私も、男なんです」 「……」 「お願いです。これ以上、焦らさないで下さい」 丁寧な口調とは裏腹に、乱暴に毛布を捲って僕のシャツを引き裂く。 「や、やめ、」 「止めません。昼間以上に感じさせてあげます。 何度でもいかせます。 二人ともドロドロになって溶けるまで、あなたを愛します」 裂いたパジャマのシャツは、全部脱がさず手首を縛って。 それを、ベッドヘッドの飾りに結びつけて。 「やめろ!」 「大きな声を出したら、先輩方が来ますよ?」 「それが狙いだ」 流河は仕方がない、といった風に肩を竦め……諦めた。 ように見せかけて、突然僕の口を塞ぐ。 ポケットから、昼間自分の目を隠していた手拭いを取り出し、 僕の首の後ろに通して口の中で結び目を作った。 「うー!」 「すみません夜神くん。あなたが大声を出す気が無かったとしても あんな高い喘ぎ声を出す口を、そのままにはして置けません」 「っ!」 何て間抜けなんだ僕は……。 これでは昨日と同じだ! いや、昨日と同じなら流河は僕の体に手を出さない筈だが、 「少しだけ、我慢して下さい。すぐに気持ちよくさせます」 「!」 精一杯首を振るが、流河の手は止まらない。 瞬くまに僕のパジャマの下も脱がせて……僕を、真っ裸に剥いた。 「ああ……」 「……」 「やっと、見る事が出来ました……きれいな物ですね」 「……」 「受験勉強をしながらこの筋肉を作ったという事実に、あなたの 自制心とセルフプロデュース能力の高さが窺い知れます」 煩い煩い煩い! 冷静な口調が面憎い。 いい加減、現実を受け入れて対人スイッチをオフにして。 肉体を明け渡し、時が過ぎるのを待つのが得策かと思う。 が、この期に及んで何とか逃れる方法はない物かと、頭の片隅が フル回転するのは止められなかった。 「どちらも私に欠けている物ですから……憧れますね」 それから流河は、再び僕に覆い被さって来る。 胸板が合わさって、気持ち悪い。 さらさらと熱くて、脈打っていて。 手は、脇腹を撫で上げ、 「んっ!」 乳首を摘む。 僕の反応に気を良くしたのか、しつこく押し潰したり摘んだりしながら 唇を。 下唇を啄んだ後、顎を舐め、首を軽く噛んだ。 「ちゃんとしたキスが出来なくて申し訳ないです。 終わった後、いっぱいしましょう」 気持ち悪い……! そう思うのに、頭を下げた流河に咥えられた途端、待ち望んでいたかのように 腰が蠢いてしまった。 今度は目隠しがないせいか、変な刺激もないが、 狙った通りに追い上げられていく。 じゅる、じゅる、と、汚い音がして流河の唾液が垂れ 僕の足の間の、奥の方に…… ……! わざと、か! 唾液の筋が尻の穴に達した途端に、流河は僕の足を大きく広げて 指を突っ込んで来た。 「うーー!うーー!」 「気持ち良いでしょう?昼間の余韻が残っているでしょう?」 そんなつもりはなかったが、僕は流河の指を易々と受け入れている。 そして、中の「その場所」は、まるでまだ腫れて熱を持っているかのように 流河の指に敏感に反応した。 「んんんっ!」 既に、目が潤んでいる。 昼間の快楽の記憶が、僕の精神の箍を外そうとする。 指はいつの間にか二本に増えていたが、痛みは無かった。 「んーー!んんっ!」 やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ! これ以上したら、僕は、 ……おかしくなる……。
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