初恋 25
初恋 25








「いや……動くと舟がひっくり返りそうだから、このままで良いよ」


そう言って膝を開こうとするが、足が強張って動かない。
どうやら僕は、緊張しているようだ……。

流河は僕の股に自分の体を拗込むようにして、足を開かせた。
そして、


「冷たい!」


ねばねばしている癖に、氷のように冷たい物が、内股に塗りつけられる。


「そこじゃない、流河」

「すみません」


わざとでは無いのだろうが、出した後、時間が経って冷えた精液を
変な所に塗られるなんて、おぞましい。
どちらにしても、夕食前には風呂に入らなければ。

僕は仕方なく、自分から足を開いて腰を突き出すようにした。
流河は今度は手探りでその中心を探り当て……また、冷たい物を塗り込んだ後
中指を入れてきた。


「っ!」

「痛いですか?」

「いや……痛くは、ない、けれど」


吐き気がしそうに不快だ。
冷えた精液の感触。
他人の指が自分の内臓に触れる感触。

ぞくっとして、思わず身震いする。


「ぅあ、」


その刺激で、中で指が動いて……気持ち悪い。
気持ち悪い。

やがて、流河の中指が少しづつ入り込み、


「ちょっと……動かさないでくれ。気持ち悪い」

「生きている人間の直腸を触ったのは初めてですが、驚きました。
 こんなに締まるんですね……中も動いていて、熱くて、凄いです」


死んでいる人間の直腸なら触った事あるのかよ……と思ったが、
もしかしたら本当に、検視か死体見分で直腸で体温を測った事があるのかも知れない。


「早くあなたの中に入りたい。前立腺ってこの辺ですか?」


そう言いながら中で指を曲げ、前の方を探る。


「あっ!」


何だ、今、目の前が真っ暗になるような、
殴られたかのような、
痛み……。

いや違う、痛みを伴わない衝撃……。


「ビンゴですね」


流河が、指でそこに触れたまま、小刻みに出し入れをする。
何故か抗い難く、電気ショックを受けたかのように、僕の腰はびくついていた。


「うーっ!うっ、」


変な声が出てしまいそうで、慌てて自分の口を押さえる。
代わりにやはり涙が出た。


「気持ちいいですか?」


気持ちよくなんか……むしろ辛い。
頭がおかしくなりそうだ。
しかも流河は、舌で僕のペニスを探し……。


「夜神くん。また大きくなってます」

「んっ……うっ……」


また口で、咥えて、尻の穴から指を出した。


「ああ……」


少なくとも内側からの攻撃は無くなり、口から手を外して一息吐く。
自分の息に熱せられていた、口の周りがひんやりとした。

と、その時、また尻の穴に指を当てられる。
今度は、二本だ……。


「いやだ、いや、」

「大丈夫です。もう解れているのでさほど痛くない筈です」

「ああっ!……うっ、ん、ん、」


論理的に制止する間もなく、抗議する間もなく、倍の質量が
僕の内部を押し広げる。
僕は自分の親指の付け根を噛み、ただ耐えて時が過ぎるのを待った。







「気持ちよかったですか?夜神くん」


流河の声が、聞こえる。
僕は答える気力も無く、全身を弛緩させてぼんやりと虚空を眺めていた。

足に力が入らない。
股間を拭ったり、下着やパンツを上げて身形を整える気力も無い。
ただ舟縁から垂らした指先が冷たい水に冷やされて、そこから全身が
少しづつ現実に戻って来るようだ。

目隠しをした流河に、前立腺とペニスを苛まれて……何度も射精した。
苦しくて、止めてくれと何度頼んでも止めてくれなくて。
仕舞いには恥も外聞も失って、擦れた喘ぎ声を上げていた。


「最後まで出来ませんでしたが……」


したも同然だろう……。
流河にとって「最後」とは何だろう。
僕の尻の中で自分が射精する所までか。


「あなたが感じてくれて、嬉しいです」


流河は手探りで僕のパンツのポケットからティッシュを出すと、
僕の尻とペニスを拭って下着とパンツを上げてくれた。


「もう良いですね?」


その声に顔を上げると、流河はやっと自身の目隠しを外した所だった。


「ずっと目隠ししてたんだ……」

「はい。あなたの言う通り、やはりお互いの生まれたままの姿を見るのは
 神聖なベッドの上が良いと思います」

「……」


気付けば、薄紙一枚向こうに居るように見えていた流河の輪郭が、くっきりと見える。
その背後の緑もうっすらと見えていた。


「霧が、晴れてきた……」

「岸からだいぶ遠ざかっていたようですね。
 この分ならあなたの声も聞こえていないでしょう」

「声なんか、出してないだろ」

「覚えてないんですか?女の子みたいに、喘いでましたよ?」

「……」


しっかりしろ、夜神月。
挑発に乗る代わりに力を溜めて、今後に備えろ。


「戻ろう」

「はい」

「戻ってすぐに風呂を沸かして入って、今日は早めに寝る」

「という事は今日は初夜」

「馬鹿言うな!もう、疲れ果てて出す物もないよ。今日は無理だ」

「そんな」


困ったような顔をした流河は、それでも櫂を持って、漕ぎ出してくれた。
ぼんやりと眺めていた水面に、やがて洋館の影が映って。
僕達は、無事岸に辿り着いた。

僕は地上に降り立って少し屈伸をした後、ボートの始末を流河に任せて
何事も無かったかのように歩き始めた。






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