人形の家「私の將來は亡びてしまつた」3
人形の家「私の將來は亡びてしまつた」3








このまま入れられたら、痛いだろうな……。
だが、僕は声一つ立てるまい。

Lが望むなら、今日は抱き人形に徹してやろう。

それが、僕の体にメスを入れなかった事への、僕なりの礼だ。

……だが。
Lが僕の乳首を舐め、臍を舐め、更に下に顔を進めた時。
思わず息を呑んでしまった。

何、を……。

Lの鼻息が、陰毛に当たる。
生まれて初めて、他人に股間に顔を埋められている。

ぴくりと、足の指が動いた。

と同時に、ぬるりと暖かい物に、僕のペニスの先が包まれる。


「んっ……」


信じられない……。
あのLが、丹念に僕の亀頭に舌を這わせている……。

ゲイではないと言い切っていた。
男は抱けないと。
その、Lが。

……だが、僕だってゲイでも何でもなかったのに、Lの物を舐める事が出来た。
強い目的や意志があれば、不可能な事ではないだろう。

Lの目的は、一体何だ……。


麻酔というものは、体表から抜けていく物なのだろうか。
それとも、Lが「それ」目的で、特殊な麻酔を使わせたのだろうか。

体は動かせないのに、そこは痛いほどに感じて張り詰めた。


「……っ、……」


深く飲み込まれて、腹筋がびくびくと動く。


「あなたが感じてくれて、嬉しいです」


口を離したLは囁くように言った後、今度は睾丸を口に含んだ。
それから、片足を持ち上げて……尻の穴を曝して。


「あっ……んっ……」


遂に、声が漏れる。
ぬるぬると。
体の一番奥が、浸される。

……犯されていく。
今までとは違う方法で。

動けない。
快感を逃がす事すら、出来ない。


「L……っ!」


もどかしい、やわやわとした、


「何ですか?」


快楽地獄。


「……」

「月さん?」

「……て、」


身を捩りたい。
のたうち回りたい。
なのに動けない。


「何ですか?」

「来て……」

「……」

「奥、まで……くれ!」


僕は、擦れた声で、叫んでいた。


「月さん……、」


Lも擦れた声で呻き、慌ただしく突っ込んで来た。
痛みが、一気に奥まで走る。
その事に僕は、満足する。


「L……、L、」


快楽は、ヒトの頭を狂わせる。


「月さん、愛しています。私には、あなたしか居ません。
 私の人生には、あなたしか居ません……」


Lも狂ったようにぶつぶつと繰り返しながら、激しく腰を打ち付けてきた。
人形のようにただ揺らされながら、目を見開いて、
それでも僕の体の中は燃えるようだ。


「月さん、愛しています。あなたが、男であっても女であっても」


うん。
知ってる。

僕も、口が麻痺していなければ、うっかり「愛してる」なんて口走ってしまいそうだ。

少なくとも。
今この瞬間は、お前のために女に生まれ変わるのも、悪くないかも知れない。
人形になりたい。

……なんて思ってしまいそうだよ。

相変わらず、突かれる度に苦しい、逃れようのない快感。

を、どこか他人事のように俯瞰していると、不意に目の前が真っ白になった。
Lの部屋が白いからじゃない。
白い闇に飲み込まれたような視界。

それから、下腹が痛いくらいに固くなって。

僕は、爆発するように、射精した。






  • 人形の家「美しいといへば、あなたのご氣性は本當に美しい」1

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