人形の家「私の將來は亡びてしまつた」2
人形の家「私の將來は亡びてしまつた」2








「具、合……悪く、ない……」

「そうですか」

「死、たい、な、て、思……てない」

「……?」


Lが、僅かに口角を上げたまま少し首を傾げる。


「女、に、な……て、も」

「……」


Lは少し目を見開いた後、布団を捲った。
ああ、メロの続きをすると言っていたか。
まあLになら何もかも見られているし、覚悟も出来ているからマシだが。


「驚きました……」

「何、」

「あなたがそこまで動揺している事に」

「して……ない」


Lはメロが持っていた溲瓶を取り上げ、軽く振った。


「この形を見て、気付きませんでした?」



……え、

え?



「男性用です、これ」


Lはそう言いながら術衣の前をはだけ、下着をずらして僕の物を取り出した。

……取り出した。

そして、溲瓶の口に入れて体重を掛けて下腹を押す。


なん、だ……。
切り取られた訳じゃ、なかったのか……。


安堵感に、なけなしの力も入らず、
ちょろちょろと、情けない音が部屋に響いた。
Lは全く動じず、淡々とした声で続ける。


「……本当に誤解するとは、思いませんでした」

「……」

「手術の内容を言わなかったのは、あなたの反応を見たかった……
 ちょっとした悪戯のつもりだったんです」

「笑ぇ、ない」

「すみません。本当の手術内容は、GPSつきのRFIDチップの移植でした」

「……」

「暫く首が痒いかも知れませんが、掻かないで下さい」

「……」

「あ、あと、髭の永久脱毛もさせて貰いました。
 無精髭が伸びて、丁度良かったので」

「……」


もう、どうでもいいけど。

何だか……心身共に脱力して、笑いたくなってくる。
その気力もないし無理だけど。


Lは溲瓶を置いて僕の先を拭った後……狭いベッドの上に
よじ登ってきた。


「っ!」

「全身麻酔したのは、悪戯だけが目的ではありません」

「……悪、戯、ろ……」


Lはきょとんとした顔をした後、ニヤリと破顔する。


「そうですね。これから悪戯します」

「こっ……は、動け、ない、ん……勘、弁、して……くれ」

「ですから、それが狙いですから」

「……最、悪」

「人形みたいに動けないあなたを、一度好きにしてみたいと思って」


酷い言い様だ。
本当はもっと怒って良いんだろうが、女にされた訳ではなかった、
という安堵で気が削がれて、今は多少の事で感情を波立たせるのは難しい。


「でも、メ、ロ、」

「ドアに鍵を掛けます」

「窓……」

「から見られても、私は別に構いませんが」


それでもLは僕の体を起こし、背負うように引きずってドアから出た。
廊下に出た所で、こちらに向かっていたメロとかち合う。


「あ、L。ライトをどうするんだ?」

「医務室のベッドは狭いので、私の部屋に寝かせます」

「ライトの部屋じゃなく?」

「はい」


Lは訝しげなメロを黙殺して僕を引きずったまま自室に戻り、鍵を掛けた。
僕をベッドに寝かせた後、森に向いた壁面を白くする。

薄暗くなった室内に、Lの少し荒い呼吸音が響いた。
自分と同じくらいの体格の人間を運んだんだ、体力を消耗したのだろう。

それから改めて術衣を脱がせ、僕を裸にする。
さっきよりは少し感覚も戻ってきたが、やはり手足は相変わらず
丸太のようで動かせなかった。


「月さん、本当にマネキン人形のように美しいですね」

「……」

「こういうのも凄く……興奮します」


そう言って自らも服を脱ぎ、僕の腕を自分で自分の首の後ろに回させて
僕の唇を吸った。

僕は、首から上は自由に動けるので反応する事が出来るのだが
わざと動かず、目も見開いたまま視線を動かさず、人形を演じる。


「あなたが、好きです、月さん」


知っています。

心の中で、月(つき)が答える。
Lは人形遊びをする子どものように、一通り僕の体を弄んだ後、
足を広げてその間に体を入れてきた。






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