人形の家「あなた、少し亂暴ぢやなかつたんですか?」4 それからLは僕の服を丁寧に脱がせ、僕の体をソファの上で仰向けにして正対した。 表情の無い目で僕の胸や股間を見下ろし、何かを待つようにじっとしている。 仕方が無いので、 「……恥ずかしいから、もう見ないで下さい」 そう言って膝を閉じ、手で目元を隠すと、Lの息づかいが激しくなった。 「月さん……」 そう言って慌ただしく膝を割り開き、体を入れて口をつけて来た。 ジェルでべたべたした指でもう一度乳首を捏ね、腹を、足の付け根を、撫で回す。 そしていきなり尻の穴に指を押し当てて来た。 「あっ……」 「入れます。指」 「あの、じ、自分でさせて下さい」 「は、はい?」 「その、こんな所に指は。自分で、します」 昨日の、他人の指の不愉快な感触を思い出す。 慣らすのが不十分だったせいで痛かったし。 Lが使っていたジェルの蓋を取り、指にたっぷり取ってから足を開き、 自分の尻の穴に手を伸ばす。 さすがにLの顔を見る事は出来ず、かと言って指先の行方も見えない。 仕方なく目を瞑り、手探りで自分の尻の穴を探し当て、指で広げていると Lが「ごくり」と、響く程大きな音を立てて喉を鳴らした。 「月さん。反則です」 「え?」 そう言うと、覆い被さって丸い物を押しつけて来たので、慌てて指を抜く。 いきなり腰を抱え上げられ、必然的にペニスが中に入ってきた。 「だ!……から、ゆっくりしてくれないと、痛いって、」 Lは無言で、僕の尻を抱え直して動き始める。 中に入れたジェルが逆流したのか、ぐちゃぐちゃと、卑猥な音が静かな部屋に響いた。 「ゆっくり……ゆっくりだ」 「はあ。可能な限りそうしますが、」 言いながらもLは、小刻みに腰を揺らすのを止めない。 僕は……自分はダッチワイフだ、性欲処理の人形だ、そう言い聞かせて 感覚や感情をシャットダウンするよう努めた。 だが、絶えず内臓を掻き回される感覚。 普段は息をしていないのではないかと思う程物静かなLの、過呼吸気味の呼吸音。 に、すぐに現実に引き戻される。 「月、さん、生きて、ますか?」 「……はい」 「目を開けたまま止まっているから、心配になってしまいました」 心配していた割に自分勝手に動いてたけどね。 Lが再び覆い被さって来る。 長い舌を突きだして、僕の乳首を舌先でかすめる。 Lの腹に自分の物が当たって擦られ……その瞬間、勝手に体がびくん、と跳ねた。 「?!」 たったあれだけの刺激で? いや、中も……いや、中が。 「あっ……あ、」 突然、決壊するように快感が溢れ出す。 リューザキに抱かれていた頃の、忘れていた感覚が蘇る。 「勃起して来ましたね……」 「いや、」 感覚を逃がそうと、気を逸らそうと、すればするほどそれは膨れ上がり、 今やLの動き一つで達してしまいそうになっていた。 「ちょっと、止ま、」 「止まれません」 「やめろって、言ってるだろう!」 う……出そう、になる……。 身を捩って逃れようとするが、やはり体重を掛けて上に乗っているLは強かった。 「月さん、イッて下さい」 「僕は、月じゃ、」 「好きです。愛しています」 「……んっ……」 「本当です。どうか、私で、感じて下さい」 「……いや、だ」 「私の精液を、受け止めて下さい。愛しています」 「……あ、や、いや、」 Lは譫言のように、月(つき)に愛を囁き続けながら腰を打ち付けてくる。 僕は……体は熱く、快感に震えているのに……心は、乾いていた。 揺らされて、枕と擦れた髪がざりざりと音を立てる。 天井で、森の木の陰だろうか、大きな影が揺れている。 月光を背に受けた、Lのシルエット。 が、滲んで揺れる。 横を向くと水が、目頭から零れて鼻柱を伝って反対側へ落ちていく。 「ああっ!」 嫌、だ……! その瞬間、腹に力を入れたが逆効果で、一瞬気が遠くなるような感覚と共に 僕は勢いよく射精していた。 「月、さんっ!」 直後、Lも月(つき)の名を呼びながら動きを止め、 ぶるぶると震えながらゆっくりと崩れて来た。
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