人形の家「あなた、少し亂暴ぢやなかつたんですか?」2 「さて、昨日は殺人手段について話して貰いましたが、 そのデスノートとやらがここに届くのは明日です」 「そう。なら、今日はデスノートの扱い方について話そうか」 「そうですね。順を追って、デスノートの使い方を知った経緯、 収監された犯罪者を操った方法などを話して下さい」 「それを話したら、男物の服を用意してくれるか?」 「……」 Lは爪を噛んで少し考えた後、不承不承頷いた。 「まあ、届けば分かる事なんだけど、表紙の裏にHow to use が書いてあるんだ」 「それは冗談ですか?」 「本当」 Lは無言で立ち上がり、台所に行ってブランデーボンボンが詰まった ボトルを抱えて戻って来た。 「面白いですね」 「ああ、後は、」 死神について話そうかどうか迷っていると、Lが声を鋭くする。 「癖ですか?」 「え?」 「その、時々何も無い空間を見上げる仕草」 「ああ、そうだな。考える時って、誰でもやってしまわないか?」 「そうですね。嘘を吐く時は右上とか言いますね」 「嘘を吐かない時でも、考える時は見上げたりするよ」 「いいえ、あなたのは違います」 「……」 「その癖は最初から引っかかっていました。 違和感の正体に暫く気付かなかったのですが、よく見ているとあなたの場合は 見上げる方向がランダム過ぎるんです」 ……そりゃ、黒い目立つ物がふわふわ浮かんでいたら、 ついそちらに目を遣ってしまう。 死神の存在を隠して、何かの切り札に使えるかと考えたが どうせ明日ノートが来て手に取られたら見られるんだ、隠さなくても良いか。 「実は、当時は死神を見ていたんだ」 「……」 「デスノートを落としたのは死神で、ノートにずっと憑いてる」 「……精神鑑定とか、狙ってます?」 「いや。まあ、明日ノートが来れば一緒に来るからおまえにも見えるよ」 「……」 「これはかなり重要な情報だ。約束を忘れるなよ?」 一応、所有権の事は言わず、ここはノートに憑いているとしておくべきだろう。 今後こっそり死神に何か指示したい時に役に立つ。 「ノートを持っていた頃は、常に死神と共にあったと?」 「そう。懐かしいな」 Lは僕が見ていた方向に目を遣ったが、生憎リュークは既に移動している。 窓から半身乗り出して外を見ている死神と、あらぬ方向を凝視する探偵。 シュールな光景に、吹き出さないようにするのが精一杯だった。 「……了解しました。明日、デスノートと一緒に男物も届けさせます」 一旦部屋に戻り、さりげなくリュークを手招きする。 Lはまだリビングに居る筈だが、用心に越した事はない。 『なんだ?』 「明日、デスノートがここに来る」 出来るだけ小声で言うと、リュークは気味悪く笑った。 『らしいな。明日からはLにもオレの姿が見えるってわけだ』 「ああ。尋問されると思うが、所有権については言わないで欲しい」 『なんで?』 「おまえとこっそり話したい事もあるだろうし、将来的に 所有権を放棄して記憶を消す可能性もあるから」 『へえ。まあいいけど。っていうか、オレは聞かれた事以外答えないし』 「それで良い。嘘を吐く必要はないから、おまえはノートに憑いていると 思わせておいてくれ」 『なんか分からないけど、了解』
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