人形の家「畏まりました――あなたのお氣に召すやうに」4 「月さんと正常位でするのが私の夢でしたが…… 前を見るとさすがに萎えると思いますので、俯せなって下さい」 「……」 ……まあ、いいけど。 自分で全部脱ぎ、仕方なく四つ這いの形になると Lが後ろで嘆息するのが聞こえた。 「ああ……あなたは背中も美しい」 「……」 ぞわりと、背筋が寒くなる気がしたが、次に冷たい指でそっと肩胛骨に触れられて 本気で総毛立った。 「陳腐な表現ですが、あなたの肌は本当にシルクサテンのようです。 あなたの肩は貝殻のようで、あなたの肋は大理石のようだ」 「……」 気持ちの悪い表現を次々と繰り出していた声が止まった時。 「!」 背中にぺたりと濡れた何かが落ちて来た、と思うと背筋に沿って 冷たい筋を引きながら移動した。 どうやら舌で、舐め上げられたようだ。 蛞蝓のように、ゆっくりと舌を這わせて肩を通り、首筋を軽く食み、 耳朶を囓る。 項をまたしつこく舐めた後、腋や、脇腹をまた舐める。 そこまでしておきながら、舌以外はあくまで触れないのがまた気持ち悪い。 変態……。 手は、その間ゆっくりと太股や尻を撫で回していたが、 やがて狭間に向かった。 いよいよか。 冷たい粘液が垂らされ、指先がずぶりと入り込んで来る。 自分でするのと、他人に入れられるのはやはり、違うな……。 不随意な、やや乱暴な動きで、指は遠慮無く奥に入り込んで来た。 「月、さん……良いですか?」 え、もう? 「リューザキ、その……舐めなくて、良いんですか?」 「はい。もう、我慢できません」 まあ……男の物を口にしなくても良いのはありがたいが。 溜まっているのか、思ったよりも入り込んでいるな。 さすが、自分で自分を騙すのが上手いと言っていただけの事はある。 急に左腰を掴まれたと思うと、尻の穴に熱い物が押しつけられた。 次いで、両方の腰骨を強い力で掴まれて 「くっ……」 呻くような声を上げながら、Lは入り込んできた。 「っつ!」 「痛い、ですか、月さん」 「少し……でも、大丈夫です」 「もっと奥まで、入れて良いですか」 僕の返事を待たず、Lは腰を押しつけてくる。 じりじりと入って来たペニスは、程なく全部治まった。 あとは、大した動きもしていないのに「はぁはぁ」と荒いLの呼気が 静かな部屋の高い天井に響く。 やがて、ぺたりと背中に覆い被さってきた肌は、熱く湿っていた。 「はぁ……やっぱり、気持ちいい、です」 「はい」 「あなたは、どうですか?」 「……よく、分かりません」 気持ちの悪い違和感はあるが。 Lは無言のままじっとしていたが、やがてぶるり、と身じろぎをすると ゆっくりと腰を引いて行った。 「月さん、すみません」 「はい?」 「優しく出来そうにありません」 「……」 ……別に、良いよ。 月(つき)が言いそうな事を言ってみただけだから。 「……仕方ありません。私は、キラなのですから」 「……」 中で、Lがどくんと脈打ったかと思うと背中の熱が離れて行き、 尻を強く掴まれた。 そのまま、何の前触れもなく激しい動きが始まる。 女としてしていた時も、途中からはL任せだったが。 それまで自分のペースで探り探り動いていたので、まだ楽だった。 今は、突然ただ激しく揺すぶられて。 自分が壺になったような気がする。 上の時はまだマシだったが、今は重力を伴って奥の方まで入って来ていた。 「あぁ……ああ、気持ち、良いです、月さんは、どうですか?」 このまま月(つき)の演技を続けて、満足していると言っても良い。 今ライトに戻れば、萎えるだろう。 だが……。 そんなLを見て見たいという、意地悪な欲求が湧くのも抑えられなかった。 「駄目だ……入って来る度に内臓を押されて、気持ち悪い……」 わざと素の声に戻って言うと、Lの動きが一瞬止まった。 「そう言えば、萎えたままですね」 Lも急に醒めた声になって、僕の前に手を伸ばして軽く触れる。 だが、腰はまた動き始めた。 「とは言え、私は気持ちいいので続行します」 ……と言う事は、男だと認めた上で抱く、という事だな? 内心快哉を上げたが、体がきついのは相変わらずだった。 「月さん、月さん、あなたの中、暖かいです」 「……」 「やっぱり、生は良いですね」 「……」 「月さん、私、いきそうです。ああ、いく……、」 Lは月(つき)に語りかけながら、徐々にスピードを上げていく。 それと反比例するように、僕はどんどん冷めていった。 最後は宣言通り中で出されたようだが、正直よく分からなかった。 ただ、精神的に……きつい。 他人の精液が自分の体内にあると想像すると、それだけでえづきそうだった。 「……抜いてくれないかな。重い」 「ああ、すみません……」 Lはゆっくりと離れて行った。 抜けた後、とろりと液体が流れ出すのが感じられる。 慌てて尻の穴を締めると、鈍い痛みが走った。 ティッシュを取って拭いながら、切れていない事を確かめる。 もう一枚取り出し、無意識にLの物を丁寧に拭いてから我に返って唇を噛んだ。 いや、まあ……男でも月(つき)のように役に立つ事を納得して貰うのが 目的なんだから、まあ良いが。 「L、気持ちよかったか?」 「え?……ああ、はい。最高でした」 「なら、おまえの言葉を借りるならおまえもゲイだよ。 僕を手術する意味なんかない」 「別に女性になってもアナルセックスは出来ますし。 後ろから見ると完全に女性みたいでしたから、出来たのかも知れませんし」 「……」 思わず睨み付けてしまったが、Lは目を逸らさなかった。 やがて。 「……前からも出来るかどうか、試してみます?」 そっと囁かれて、また背筋が寒くなって。 「いい。腹も痛いし」 僕はパジャマと下着を掴んで、そのままドアに向かった。 「おまえも早めにシャワー浴びた方が良いぞ。 尿道から細菌が入って感染症が引き起こされるかも知れない」 何かと腹の虫が治まらず、わざと無粋な捨て台詞を吐いてみたが 足の間をまた液体が伝い落ちる感触に、Lの反応を見る間もなく 慌てて自室に戻った。
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