Drive me crazy 2 夜神はシャツのボタンを外しながら私の上に跨がると、ポケットからビニールのパッケージを取り出す。 ピンクの錠剤を掌に出すと、楽しそうに私の唇に押しつけた。 仕方なく舌を出すと、 「中々セクシーだね」 そう嬲って、舌の上に乗せる。 ペットボトルの水のキャップを取って寄越したので、少し身体を起こして飲んだ。 「怖くないのか?」 「ええ、まあ。ヤーマーに身体的依存性はないので」 「試した事あるんだ?」 「大概のドラッグは」 夜神は私からペットボトルを受け取ると、自らも一粒口に入れて水を呷る。 口の端についた水を、袖で乱暴に拭った。 「……もしかして、今も?」 「私が定期的にドラッグを摂取しているように見えますか?」 「いや、これだけ長い間一緒に暮らしていて、そんな動きは見えなかったけれど。 見た目はとてもヤク中っぽい」 「はぁ……まあそうですね。自分でも思います」 枕に頭を落として手を持ち上げ、青白く節くれ立った指を見つめる。 彼と比べれば、ずっと病的な外見だろう。 夜神は目の前の身体の処置に困ったように、私の乳首を弄んだり私の口に自分の指を突っ込んだりしていた。 やがて、身体が熱くなって来る。 二人で同じタイミングでベッドサイドの温度計に目をやったが、気温に変化はなかった。 「エアコン、切れてない、よな?」 夜神はネックレスの下に指を入れて暑そうにしている。 一旦立って冷房を最大に入れると、漸く落ち着いてきた。 「ヤーマーの効果ですね」 久しぶりだ、頭の中が、沸騰しているように熱い。 それなのにいつも以上にクリアな視界。 頭蓋骨の中や眼窩を、熱湯で洗浄したかのようだ。 「何か……凄い。力が」 夜神も気味悪そうに、自分の掌を見つめている。 私達はしばらく目を合わせると、同時に弾かれたように、ベッドから飛び降りた。 彼の耳を狙って足を蹴り上げると、夜神はそれをかいくぐって私の軸足にタックルしようとする。 横に飛んで避けたが、結局バランスを崩して飛びかかって来た夜神に殴られた。 勿論私も思いきり腹を膝蹴りしてやったが。 「痛っ!」 包帯に、新しい血が滲んでいく。 身体を丸め、上気した頬で「はぁはぁ」と荒い息を吐いている夜神には、セックスの時とは違う色気があった。 「おまえ、さ……客商売、失格だな……」 「すみませんお客様が突然殴りかかって来たので」 「大人しく、ベッドに行け。そして自分で服を脱げ」 「はい」 夜神に出来た事が私に出来ない筈はない。 私は恭しく腰を折って、彼の言に忠実に従った。 包帯だらけの身体が、素肌に覆い被さって来る。 「何だか、力が有り余っている」 「お互い様です」 「おまえを、滅茶苦茶にしたい。もしくは、」 夜神はそこで言葉を切って、切なげに目を細めた。 「……滅茶苦茶にされたい」 ニッと笑ってその顎に手を触れたが、その瞬間。 夜神がワイズに深くキスをされている場面がフラッシュバックした。 そうだあの時私は。 夜神を滅茶苦茶にしたいと思った。 これまでになく。 私は、夜神の顔を両手でしっかりと掴んだ。 「なっ、」 「キスして良いですか?」 「え……ええっ?何故だ?」 「さあ……ただ、昨日ワイズにされているのを見せつけられたので」 「……」 夜神は戸惑うように眉を顰めた後、ニヤリと笑う。 「ああ、それ、嫉妬してるんだよ。ワイズに」 「どうですかね。で?良いんですか?どうなんですか?」 「No」 はっきりと拒否されて、苛立ちが爆発しそうになる。 いや……駄目だ。 今の私は夜神に買われた身。 という設定を使って揶揄われているだけだ。 「僕達の関係に、そんな物は持ち込まない方が良い」 「ワイズとは平気でしたのに?あなた、ちょっと私の事を意識しすぎですよ」 「……」 私も夜神を揶揄っただけのつもりだったが。 夜神は突然私の髪を掴み、噛み付くように唇を押しつけてきた。
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