CAN’T HELP FALLING IN LOVE 7
CAN’T HELP FALLING IN LOVE 7








見開かれた目は、すぐに戸惑ったように視線を泳がせ始める。


「え……今?今日?」

「はい。あなたも望んでいたでしょう?」

「え、いやそんな、今日だとは思って無くて、心構えが……」


首にこそキスマークは残っていないが、身体のどこかにはあるかも知れない。
もしかしたら今この腹の中には魅上の精液が入っているかも知れない。

そう思うだけで、何故か勃起した。

乱暴にパジャマを脱がせ、首に、顎に、噛み付くように舌を這わせる。
夜神の抵抗は頑なな、だが全力ではない、中途半端な物だった。
少しづつ組み伏せ、服を剥ぎ取る事に成功していく。
微かに石鹸の匂いが残っていた。


「ちょ、L、どうしたんだ?」

「さあ?夜神くんこそどうしたんですか?
 私とセックスしたかったんじゃないんですか?」

「……」


苦しげに顔を歪めるのを見つめながら、手早くズボンごと下着を脱がせる。
夜神の肌は、滑らかだった。


「L、やめろ。優しくしてくれって言っただろう?」

「は?今更何を言っているんですか?」


自らの前をはだけ、夜神がベッドヘッドに置いてあるローションを手に取る。
自分のペニスを濡らしていると、夜神が撓めた足を振り上げた。


「私を蹴るんですか?夜神くん」

「……」

「良いですよ、抵抗しても。喧嘩をしましょうか。
 私が一生あなたを抱きたくなくなるくらい、激しいのを」

「……」


夜神は私を睨みつけながら、ゆっくりと足を下ろし、身体の力を抜く。

彼の中では、私とセックスをする事は生きていく上で最重要事項なのだろう。
その貞節が破られた以上、もう意味も無い事なのに。

今更抱いても、私は夜神を縛らない。縛られない。
魅上との事を私が知らないと思っている様子なのは、哀れですらある。

そんな事を思いながら両足を上げさせ、穴を曝して押しつけ一気に突き入れた。


「……ぐぁっ!」


夜神は、何とも表現出来ない、悲鳴のような呻きのような声を上げた。


「?」


その体は硬く……痙攣して、いる?


「……夜神くん?」

「お、まえ、最……低だ」


呻き声と共に何とか言葉を絞り出し、数秒息を止めた後、
夜神は大きく呼吸を繰り返した。
……まるで、死にかけているように。


「下手くそ……!」


私は青ざめ、少し腰を引く。
夜神はまた呻いた。
鮮血が、結合部からぼとぼとと垂れ落ちた。


……とても、他の男を受け入れた直後とは思えない。


というか。
アナルセックスをした事があるように、見えない……。


「えっと……大丈夫、ですか?」


戸惑いながらも取り敢えず尋ねてみると、険しく顔を顰めていた夜神は、
やがて少し眉を開いた。


「……ああ。少し、マシになって来た。慣れたのかな」

「……」


いや、それは。
私が……萎えたから。


「L。もう行ける。動いて良いよ」

「……」


……などと言われても。

動けない。
動けば抜ける。
夜神は、手を伸ばして黙ったままの私の首を引き寄せた。


「あぁ……やっと、……初夜だな」

「……」

「何だか不思議だ」

「……不思議、と……いうよりは、奇妙ですね」


私も何とか言葉を絞り出したが、頭の中は混乱したままだった。

……夜神はどういう訳か、魅上と寝ていない。ようだ。

私に監禁されているよりは、傅いてくれ、利用も出来る魅上と自由に生きた方が
人生を有意義に使えると思うのだが。


「そうだな。キラとLが、こんな……あり得ないよな」

「はぁ」

「でも、言い出したのはお前だ」

「はい……」


何故か私と生きる事を選んだ、という事か。
私が追うと思い込んでいて、逃げ切る自信がないのか。
それとも何か、策略が。

……コイツは何度も私を欺き、二度も殺した男だ。
油断出来ない。

私は不意に、初めてキラの犯罪を確信した時の興奮を思い出す。

容疑者として夜神を見た日を思い出す。
手錠で繋がれ、共に生活していた日々を、
ベッドの上での他愛ない語らいを思い出す。


「夜神くん」

「……え?」


私の目の前で、堂々とキラの殺人を犯した後の白々しい演技。
私を殺し、勝利に酔い痴れた歪んだ笑顔を思い出す。


「なんだか……ま、また、痛くなって来たんだけど」


魅上との会話を盗聴していた時の、淫らな声を思い出す。
私を高層ビルから突き落とした時の、殺意と悦楽の入り交じった表情を思い出す。


「そうですか。でも動いて良いんですよね?」

「いや、ちょっと待っ、」


私は張り詰め、腰を思い切り突き入れた。


「L!」


目の前の夜神が歯を食いしばり、私の肩を鷲掴みにする。
爪を立てられたのか、ちりりと鋭い痛みが走る。
シーツに夜神の血が、飛び散る。


「痛い!痛い、止めてくれ!」

「膝を折って懇願しますか?」

「ふざけるな!本当に、駄目だ、切れてる」

「そうですか」


何と言われても、動き続ける腰は止められない。

後は夜神の繰り言に耳を貸さず、野性に身を任せて彼を貪り続けた。
夜神はやがて口を閉じ、全ての抵抗を止め、体中の力を抜く。

まるで死にゆくガゼルのようだった。


私は、生きるために彼の血を啜る、ジャッカルのようだった。






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