CAN’T HELP FALLING IN LOVE 4 L?一体誰だ? そうか……Lを継いだとされる、「N」か! 「神」 「その呼び方は、やめてくれ。僕はもうキラじゃない」 「それでも」 「もうこの世にはデスノートはない。僕は……ただの人間だ」 「……」 神はさすがに、私よりもずっと状況を把握している。 彼がそう言うのなら、この世にはもうデスノートはなく、死神も居ないのだろう。 ……人類史上最高の理想を持ち、それを実現する力を持っていた神。 そんな彼が、翼をもがれ、地に落ちるのはどれほどの屈辱だった事か。 鼻の奥がつんと熱くなり、涙が零れた。 だが……我ながら呆れる事に、どこか安堵している自分もいた。 ……そうか。 我々は、もう神とその僕(しもべ)ではない。 我々は。 「ただ、ライトで良いよ」 「ライト?」 「僕の本名だ。ああ、日本人だけどね。 moonの月と書いて、ライトと読む」 “ライト”か……美しい名だ。 あれ程焦がれた、神の本名をあっさりと教えて下さった。 これは夢なのではないか?とさえ思う。 「……ありがとうございます。私はこれから一生、月を見る度にあなたを思い出す」 「いや、そんな」 「月様。どうか、私と一緒に来て下さい」 「え、おまえと?」 月様が、見開いた目の睫の先がきらりと光ったのが印象的だった。 「はい、ここから逃げましょう。 私に情報を教えてくれた人物は、恐らく内部の者です。 捕まる可能性は低いと思います」 「待ってくれ」 「私が、このセキュリティの厳しい場所にこうして侵入出来ているのがその証拠です」 「待てって!魅上」 神は片手を上げて、私の言葉を遮った。 「さっきも言ったが、無理なんだ。僕は、」 私は構わず、布団を捲る。 彼に着けられた、戒めを外すために。 だが、そこにあったのは。 神の……一糸まとわぬ、ただ輝かしい裸身だった。 手にも足にも、何の枷もない。 「……Lの、物だから」 「……」 自分以外の男の裸をこんなにまじまじと見たのは初めてだが、 美しいと思った。 勿論、鍛え上げているつもりの自分の身体も好ましく思っているが 私より筋肉も少なく、肌も白い青年の裸が……不思議と喩えようも無く魅力的だ。 「あなたは……」 「隠すつもりもない。僕は、Lと寝ているよ」 「Lとは……Nの事ですか?」 「いや。オリジナルのLだ。 ああ、お前は知らなかったか、彼は死んでいなかったんだ。 ただ姿を隠していただけだ」 「まさか!」 話を聞いた限りでは、Lは完全に死んでいたように思えたし、 また、途中で仕事を投げ出したり、負けを認めたりするような 人物でもなかったと思う。 ……だが直接会った月様が、本人だと言うのなら、間違いないのだろう。 「しかし、だとしても一体何故……」 「僕がLと寝るか、か?」 「……」 「約束、したんだ」 「何を……でしょうか」 聞きたくないような気がした。 だが、聞かなければ前へ進めないとも思う。 「僕はLに一度、命を助けられた。その代わりにセックスを受け入れるように言われた。 だから僕は、彼から離れる事は出来ない」 「そんな物、口約束でしょう?何の拘束力もない! この状況は、体の良い監禁ですよ!」 「そうでもない。僕は自分の意志でここに居るんだ」 「か……、月様」 無茶苦茶だ。 大航海時代の奴隷でもあるまいし。 一度命を助けられたから、生涯性奴隷なんて、時代錯誤も甚だしい。 だがそれは、彼の……潔癖さ、正義でもあるのだろう。 世界を己の正義で統べようとしていた人だ。 その定義はあくまでも公正で、自らを例外とするのはその矜恃が許さないに違いない。 それでも私は。 いや、彼が自らを救う事を己に許せないのなら、尚更。 「……あなたが何と言おうと、これは監禁です」 「……」 「私は、あなたを助け出したい。自由にしたい」 「監禁じゃ無い」 「ならば、自らの意志で監視なしにここから出られますか?」 「出られる、と思う」 ああ。 そんな顔をしないで下さい。 私は、あなたを苛めたい訳じゃ無い。 私は、ただ。 思わずベッドに座り、その細い裸体を抱きしめる。 月様は驚いた様子だったが、拒絶はされなかった。
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