CAN’T HELP FALLING IN LOVE 3
CAN’T HELP FALLING IN LOVE 3








……これは、暗証番号を二度以上間違えるとシャッターが閉まって
捕捉されてしまうタイプのセキュリティシステムだな。

私は天井のスリットと、目の前のテンキーを交互に見比べる。

メインエントランスは、教えられたパスワードで普通に通れたが
今度こそ罠かも知れない。
いや、罠がないとは思えない。

それでも、愚かしくも私はボタンに指を伸ばした。

押さなければイギリスくんだりまで来た意味が無い。
そして、あのメールが届いた以上、それがどんなに怪しくとも、
イギリスに来ない、という選択肢は私にはなかった。

だから。
もし私がここで捕縛されてしまうのなら、それは避けようがない運命なのだろう。
ポケットの中で、左手が握りしめた青酸カリのカプセルが熱を発したような気がした。

……2……8……0……1……

慎重に、聞いていた暗証番号を一つづつ押していく。
開くとは思わなかったし、開かなくても何度でも入力するつもりだったが。


「!」


驚くべき事に、目の前の扉は殆ど音もなくスライドした。


暗闇の中、広い部屋の真ん中にはベッドがあるようだ。
細いシルエットが衣擦れと共に起き上がる。
少し近付くと、白い……Tシャツを着ているのか?

いや、それは、素肌……だった。

突然現れた私は明らかに不審者であろうに、シルエットは慌て騒ぐ様子を見せず、
低い声を出す。


「……L?」


L……?
死んだLの事か?

いや、そんな事より。
あまりにも懐かしく……慕わしい、その声。

私は彼を驚かせないように膝を突き、ベッドににじり寄った。


「神」

「その声……魅上、か?」

「はい」

「……」


神はひゅっと小さく息を吸って少し呼吸を止めた後、長々と気を吐いた。


「一体、どうやって来たんだ?」

「……」


私は、数日前突然届いた差出人不明のメールを思い出す。



  夜神月はデスノートを失ったが監禁され生きている。
  場所はロンドン、○○、◇◇、△△△
                                      」


何の前置きも挨拶もなく始まった、見知らぬ相手からのメール。
タイトルに「デスノート」の単語がなければ即破棄していた所だ。

だが。

調べた所、「夜神月」という人は実在しており、私の知る神と相似する情報まであり。
状況の正確さが……私の心を、動かした。


その頃私は、絶望の淵にいた。
……死神にデスノートを持ち逃げされ、死んでお詫びしようかと
悩んでいた時に、その神も行方不明になってしまって。

半分死にかけた状態で何とか数ヶ月を生きていたのだが。
そんな時にこのメールを見て生きる希望が漲って来たのだ。

神が本当に生きているかどうか分からない。
生きていたとしても、合わせる顔などない。

それでも私は、行動せずにいられなかった。
そして。


「……有る筋から、ここの情報を掴みました」

「そうか」


今、目の前に、現実に、神が。


「神……私は」


何と伝えたら良い物かと言葉に詰まっていると、
細い首を傾げて凝っと私を見つめる。
目が暗闇に慣れ、その目鼻立ちがはっきりと見えた。

あの頃のまま。
何も変わらない、
美しい……私の、天使。

気が、遠くなりそうだ。

思わず一歩近づき、その手を取ると、一瞬迷った後額を押しつけた。


「神……最初にお詫びしなければならない事が……。
 申し訳ございません……私は、デスノートを」

「魅上」

「死神も……」


いつ手を振り払われても良いように、少し力を抜いていたが
神は私の手を振り払わず、それどころか。


「……神」


もう片方の手も添えて下さった。


「魅上。それはもう、良いんだ」

「神!しかし、私のせいであなたはこんな所に監禁を、
 そうだ……一体、誰があなたを閉じ込めているのですか?
 せめて私があなたを、」

「……悪いが、それは、無理なんだ」

「何故ですか!」

「僕は、Lから離れる事が出来ない。……死ぬまで」

「え!」






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