釣月記 6
釣月記 6








実際問題、夜神に本気で抵抗されたら無理矢理抱く事など不可能だ。
無駄にプライドの高い彼の事だ、そんな事になる位ならと
キラである事を認め、死刑を待つと言う可能性も十分にあった。
だが、もう。


「こんな屈辱は、生まれて初めてだ」

「ほう」

「と、大学の入学式の後も思ったけれど、今はその時以上だよ」

「そうですか」


淡泊に答えながら、私はほくそ笑まずにはいられなかった。
屈辱に歪む夜神の顔に、思わず見惚れる。

足を開かせてその間に腰を入れ、夜神の性器を突いてみる。
夜神は、思わず、と言った様子で目を閉じ、唇を震わせた。
怖い物でも見た女性のような反応だ。
それでも逃げようとはしないので、もう大丈夫だろう。

私は自分のペニスに、唾液を塗り込む。


「さてここで質問です」


芝居がかって言うと、夜神は目を閉じたまま一層顔を顰めた。


「……何」

「痛いのが良いですか?気持ち悦いのが良いですか?」

「痛い方」

「でしょうね」


食い気味の即答に即答で答え、素早く尻を割り開き、拗じ込む。
ぷつ、と皮膚が裂けた気配があった。
思わず、ほう、と溜め息を吐いてしまう。

おまえはこの瞬間から、私の物だ。


「あっ……!」

「痛いですか?痛いでしょうね」

「りゅ、……待っ……」


予想以上の痛みだったのだろう、夜神は全身を硬直させて
喉を仰け反らせた。
見開いた目尻から、涙が髪の中に向かって流れていく。


「まだ先しか入れてません」

「う、動かすな……っつ!」


私の腕を掴もうとして、今度は肩が痛んだようだ。
全く、ぞくぞくさせてくれる……。
ずきん、と更に血がペニスに集まり、夜神の尻の穴を更に広げた。

それでも二、三分じっとして眺めていると、その内夜神の表情から
少し力が抜ける。


「慣れて、来た……竜崎」

「はい?」

「早く、早く終わらせてくれ……」

「そうは行きません。たっぷり楽しませて貰いますよ」

「L!」


私が動いている間、夜神はただ左腕を押さえながら目を閉じて耐えていたが
少し止まって一息吐いた時に、ゆっくりと瞼を開けた。


「どうですか?気持ちよくなって来ましたか?」

「……まさか。痛みは減った、けれど……やっぱり痛い」

「結構血が出てますからね。必要があれば後で縫合します」

「最悪」


夜神は不快げにもう一度目を閉じたが、またすぐに開けて
今度はニッと笑った。


「何ですか」

「いや。最悪ばかりでもないなって思いついて。
 監視カメラ……本当は撮ってないんだろ?」

「はい。撮っていたらこんな事出来ません」

「だろうな。それが朗報だよ。
 おまえさえ何とかすれば、僕の自白は無かった事になるという事なんだから」

「何とか、ね」


私は夜神の顔を観察しながら、動きを再開する。
乾きかけていた血が、引き攣れた感触を残す。
夜神は痛みに一瞬首を竦めた後、諦めたように静かに目を閉じた。


「こんな状態で、どうやって何とかするんですか?」

「それを今考えてる」


超能力で殺人を犯すキラは、世界の脅威だった。
私にとっても、最大に敵になると思った。

いや実際、恐らく生涯で一番の強敵だった。

それが今、私の腹の下でこんなに無力だ。
勿論油断は出来ないが。


「夜神くん。念の為に言っておきますと、日本警察ではないですが
 他の者に事情を伝え、殺人ノートも預けてあります」

「……」

「ですから、この場で私を殺すという案は却下でお願いします」


上下する夜神の胸の動きに合わせて腰を動かすと、
少し表情が和らぐように見える。


「なら。どうすれば良いんだ。他に選択肢があるって言うのか」

「そうですね。私を惚れさせてみては?」

「……はぁ?」


夜神は突然頭の悪そうな大きな声を上げ、眉を顰めて目を開けた。


「男は愚かな生き物です」

「……」

「惚れた人間の為に馬鹿な事をしでかしたりするものですよ」

「……なるほど、ね」


夜神は突然、弾かれたように笑い出した。
私はその動く腹筋に合わせて腰を振り、やがて射精した。






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