釣月記 5
釣月記 5









「!」


火事場の馬鹿力と言うのか。
夜神の体が突然屈んだと思うと、私の体は持ち上げられて回転し
鉄格子に叩き付けられていた。
どうやら一本背負いを食らわされたらしい。

一瞬意識が飛んだ後、慌てて体勢を立て直したが、当の夜神は
肩を押さえてへたり込んでいた。


「どうしました?」

「……肩、外れた」


ホッ、と、息を吐いて緊張した全身の力を抜く。

それはそうだろうな。
私の体重分、予想外の力が肩関節に集中したのだろうから。
だが、そのお陰で完全に勝負あり、だ。


「折れなくて良かったですね」


私は思わず笑いながら、その二の腕を掴んだ。


「痛っ!」

「子どもみたいです」

「子どもの頃に外れた事あったけど」

「……」


先程のキラの笑顔にしても、今の困った顔にしても。
彼は、幼い。
あまりにも幼く、あまりにも肥大した自意識。

しかし彼は、普通の人間には耐え得ないその重みを支えるだけの
精神力と頭脳を持ち合わせていた。



……だから私は、彼を欲するのだ。



つい今し方殺されそうになったばかりだと言うのに。
キラ候補であった時よりも、キラ確定した今の方が、ずっと。


「夜神くん。填めて欲しいですか?」

「ああ」

「……」

「頼む、竜崎。填めてくれ」


苦痛と屈辱に耐えながら私に物を頼む夜神の表情に。
私は。


「いいですよ……ハメてあげます」


そう言ってパンツの腰に手を伸ばすと、夜神は這って逃げた。


「何、するんだ?」

「ですから」

「腕を!肩胛骨に填めてくれって言ってるんだ!」

「分かりました。終わった後でちゃんと填めます」

「お……」


何か言いかけて夜神は私の股間の膨らみに気づき、
青ざめた。


「やっぱり……ゲイなんじゃないか」

「そのようですね」

「そのようですねって……突然何なんだ!」


混乱した様子で左の二の腕を右手で支えながら後ずさる夜神に、
私は噛んで含めるように説明した。


「抵抗しても無駄なので、しない方が良いですよ。
 抵抗した場合、あなたにデメリットが三つあります」

「……」

「一つは肩が痛みます。最悪靱帯が切れます。
 二つ目は、行為の最中もお尻が無駄に痛んだり怪我をしたりする
 可能性がある事です」

「……」

「三つ目は、私の心証が悪くなります。助かりたいんですよね?」

「!」


夜神は目を見開いて身を竦ませた後、肩が痛んだのか顔を顰めた。
額に汗が滲んでいる。


「……黙って言う事を聞いたら、助けてくれるのか」

「その可能性はゼロではありません」

「ゼロではない、という程度か」

「そうですね。でも私に逆らえば、ゼロです」

「……」

「どうしますか?」


夜神は私の顔を見つめながら、荒い息で一心に考えていた。
食いつけ。食いつくだろう?
おまえは。
この小さな餌に。

やがて、小さく息を吐いて静かに横たわって。


「分かった。好きにして良い。
 但し、先に肩を治してくれ」


……来た!
興奮を抑え、静かに糸を手繰り寄せる。


「嫌です。そんな事をしたらまたペンで刺されそうですし」

「さっきはどうかしていたんだ。
 確かに、僕が単独で逃げても逃げ切れる可能性はないし
 おまえを無理矢理引きずっていく事も出来ない」

「はい。あなたに打つ手はありません。
 なので、大人しく痛みに耐えて言う事を聞くのがベストな選択です」


私を睨む夜神を無視して、気が変わらない内にそのパンツと下着を引き下ろす。
黒々とした陰毛に埋まったそれは、当たり前だが萎えていた。






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