クリスマス・ファンタジー 4 よし、動きが止まった。 竜崎は指を入れたままだが、少し真顔に戻った。 「大丈夫です。ワタリが私を裏切るなら今まで沢山機会はありました。 でも裏切っていないという事は、今後も裏切りません」 「そんな物かな」 「また、ワタリが人質に取られたとしても、私は躊躇いなくワタリを切れますし、それはワタリの望みでもります」 「マジで?」 竜崎のペニスが少し萎える。 それに気付いたのか無意識なのか、竜崎の右手がゆるゆると動きを再開する。 「じゃあ、ワタリさんは絶対にサンタではないと?」 「はい。疑った事もありません。 それ以前に、ワタリには不可能な状況で……つまり密室にプレゼントが置かれていた事もありますし」 まあそれも……おまえの生活の全てを管理しているワタリなら、合い鍵くらい持ってるだろ。 「万が一、億が一、ワタリが今までずっと私を騙していて。 サンタクローズの振りをしてプレゼントを置いていたとしたら、」 「したら?」 「私の存在自体根底から覆ります。 自分がこの世に生きているという事からして信じられなくなりそうです」 「……」 それはまずい……んじゃないのか? 純粋もここまで拗らせるとこんな事になるのか……。 「というのは冗談で、ここまで私を騙し通した事に素直に感心しますけれどね。 世界一の探偵の座をワタリに譲る程度ですよ」 「それはそれで、ワタリさんも困りそうだけど」 竜崎は少し頬を緩めて、手の動きを再開した。 尻に入った指を動かすと、すぐにまた頬に血の気が戻る。 「証拠……色々ありますよ。その、密室にプレゼントが置いてあったのもそうですし。 一般人には入手不可能な物を貰った事もあります」 いや、「Lの権力」を以てすれば、大概の物は手に入るだろ! 「今夜中に、あなたにも……あっ、分かり、ますよ……」 伏せた瞼に、目の下の隈が色濃くなる。 またローションを足すと、椅子にびちゃびちゃと染みが出来た。 その様子がなんだか……やけに卑猥だ。 「前立腺というのは、恐らくこの辺り……」 「……もっと奥に欲しいとか、思わない?」 竜崎はまた動きを緩めると、不機嫌そうに僕を見た。 「というと?」 「クリスマスプレゼントを遣ってもいいかな、という気になってきた」 「要りませんよ今更。それでは実験になりません」 「実験って……本気だったんだ?」 「勿論。何だかんだ言って私、自力だけで射精した事ないんで」 そう言うと竜崎は、動きを再開して小さく喘ぎ始める。 もう少しでイきそうだというのは本当のようだ。 ……よく見ろ、僕。 なんだかんだ言ってもむさ苦しい男だろ。 柔らかい腕も胸もない、良い匂いもしない。 毛脛を曝して、快感に間抜け面を見せる、年上の、男。 だけれど。 僕は、知ってしまっている……。 竜崎の、肉の感触。 うねりながら僕を締め付ける、ぬるぬるとした内側。 「竜崎」 「ちょっと……待って下さいね……」 もう目を閉じて、自慰に没頭している竜崎を見ていると、 「まるで自分が竜崎を抱いているような気分になって来るよ……」 「はぁ、……え?」 「クリスマスプレゼント、要らないというなら僕に、くれ」 「……え……え?」 切なげに目を上げた竜崎の腕を掴むと、指が抜けたせいか小さく顔を顰めた。 「何、」 有無を言わせず立たせて体を半回転させ、テーブルに手を突かせる。 慌ただしく自分のベルトを外して性器を露出させる。 「あ、月く」 尻の肉を押し開いて当てると、身を捩った。 「止めて下さい!」 「どうして」 「しないと言ったのは、あなたでしょう」 「そうだけど」 こんな風に、一人で気持ちよくなっていく様を見せつけられるだなんて思わないじゃないか。 「止めて下さいマジで」 「欲しいくせに」 「は?」 「本当は、欲しいんだろ?僕が」 「……」 瞬間、空気が冷える。 竜崎は動きを止めて、ゆっくりと顔だけで振り向いた。 無表情だが、内心怒り狂っているのが分かる。 その程度には、長い付き合いになった。 「……実験中だと言ったでしょう。 あなたがしたいなら後でさせてあげても良いです。 でも今は、離して下さい」 「実験って……本気じゃないだろ?」 「本気です。大マジです」 「サンタクロースと同じくらいに、か」 言い様に、竜崎の返事を待たずに腰を突き出す。 「ひぁっ!」 既にローションでべたべたしたそこは、女性器のようにあっさりと僕を受け入れた。 少し慣らした後、一気に奥まで突き入れると、竜崎は前を向き直り、ぶるぶると震える。 「ご、強引に、事を進めたら、私はあなたを許しません」 「何意地になってんの。ほら。監視しなくていいのか?」 モニタ群を指差すと、竜崎はゆっくり頭を上げた。 その隙に、竜崎の前に手を回してペニスを掴む。 それはまだ充分に堅かった。 「っつ!……それ以上動いたら、レイプと見なします。局長に言いますよ」 「まだ、レイプじゃないんだ」 「……」 「入れる所まで合意したなら、それは合意だよ」 そう言いながら片手で竜崎の腰を掴み、片手でデスクの縁を掴む。 「だから、動くな!夜神月!」 「どうして」 「す……」 目の前の背中が、大きく撓む。 真っ直ぐに並んだ背骨一つ一つが、モニタの明かりを受けてコンピュータグラフィックのように滑らかに浮き上がる。 「……すぐに、イってしまいそうだからですよ……」 僕はその背骨の中で一番気に入った一つを、舌先で舐めた。 「同じだ」 そして動きを激しくすると、竜崎はそれ以上抵抗せず「あ、あ、」と高い声で喘ぎ 言葉に違わずすぐにぶるりと震えて射精した。
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