Blind game 2
Blind game 2








「入れさせてくれるの?」

「No」

「じゃあ無理だ。6の四」


長い指で、下着の上から私のペニスをなぞる。
わざと焦らすように、ゆっくりと掻くような動きで。
先日までの嫌がり具合が嘘のようだ。


「焦らさないで下さいよ。7の四」

「まあ慌てるなよ。……6の五」


奥まで手を入れて、柔らかく私の睾丸を揉みながら、思い出したように


「夜は長い」


と付け加えた。


「4の三……固くなって来ました」

「言わなくても分かるよ。3の三」


……本来なら、私が焦らされるような立場ではない。
別にこのまま起き上がっても、何なら夜神の足を割ってまだ治りきっていないそこに拗込んでも文句も言わないだろう。

だが、そちらがその気なら私も意地だ。
こちらからは一切動かず、楽しませて貰おうか。





基本的に、夜神は序盤は相手の様子を見ながら自分の手を作るタイプだが。
今日は最初からよく絡んで来る。
私も絡むので、いつもより細かい盤面だ。


「ん……ん、11の、十」


夜神は、眉を寄せて私の物を頬張っていた。


「いい、顔ですね……12の、九」

「はっ……ぁ……8の、十二……」

「8の、十一。辛いでしょう?こちらに、足を」


何度も私も夜神の物を刺激してやろうとしていたが、頑なに拒否する。


「いら、ない……僕は……」


夜神は、私の物を丹念に舐めながら、自身も勃起していた。


「9の、十一……」


いつまでこんな事を続けるのか。
そろそろセックスに集中したいし出したいのだが。


「9の、十二」

「9の……ん……十三」


夜神もそうなのではないか。

頭の中の盤面では、黒石が延々と追いすがってくる。
しつこいな……。


「……10の、十二」


私がその手を呟いた時。
夜神の動きが一瞬止まった。
舌で亀頭の縁をぺろりとなぞりながら、上目遣いにニヤリと笑う。
何だ?


「7の十一」


……!
こいつ……!


「油断したな、L」


……夜神は、セックスに夢中になると私を「竜崎」と呼ぶ。
それは前に本人に指摘した所だが、今敢えて「L」と呼ぶという事は、自分は夢中になっていないと示威したいのだろう。

確かに少し気が緩んでいた…。滅多にないミスをした。
今から挽回出来るか?

頭をフル回転させていると、突然。
夜神の舌がざらりと絡みつき、きゅうきゅうと締め上げ吸い始めた。


「あっ……月、くん……」


不意打ちに、全く抵抗出来ない自分が苛立たしい。
だが同時に可笑しくもなってきた。

塔矢に負けた鬱憤を私で晴らす為、私を負かす為、手段を選ばない夜神。

その手段がこんなに私を悦ばせる事になると言う事実に。


「月くん……」

「ん……」

「投了です」

「……早いね」

「ありません。だから、」


夜神はわざわざ一旦顔を上げて私を見下ろすと、すぐに戻って顔を上下にピストンさせ始めた。
元々追い詰められていた私は、一溜まりもなかった。




洗面所で私の精液を吐き出し、顔を洗って戻って来た夜神は無表情に見えた。
だが私には分かる。
彼の心は勝利に輝いていて、それが顔にも滲み出ている。


「……全く。子どもですか。こんな手段でボードゲームに勝とうなんて」

「子どもには使えない手段だよ」

「まあそうですね。初勝利おめでとうございます」

「塔矢プロとの対局の時は、自分でも知らず知らず動揺してたのかな」


嬉しそうに。
珍しく調子に乗っていて思わずこちらも笑ってしまった。


「かも知れませんね。
 何ならもう一度彼と対局しますか?Lとして」


夜神は慌てて顔の前で手を振る。


「冗談じゃない。素面で打ったらまだおまえの方が強いのは認めるよ。
 それに、僕は三度も名人と対局している。多分バレる」

「ですね」


私が夜神の腕を引き、ベッドに押し倒すと露骨に顔を顰めた。


「うわっ、触るなよ、汚れるだろう?」

「汚したのは誰ですか」

「シャワー浴びて来いよ」

「いえ。私に勝ったご褒美と、私の方が強い事を認めた聡明さに免じて」


シャツのボタンを外していくと、身体を硬直させる。


「あなたを気持ちよくしてあげます。
 まだ出してませんよね?」






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