Burning 2
Burning 2








モギから連絡のないまま、正午になった。
一応いくつかプロキシを通して指定されたチャットルームに入ると、
意外にも既に入室している人物がある。


A “Hi”


「A」、か。


「『L』に対抗しているつもりですかね」


全ての始まりを表す、左右対称のアルファベット。
金髪だろうか……。
それ以外に考えられないが、モギはまだ突入していないのか?
一体現場はどうなっているんだ?


「L、やはり私がタイプします。
 少しでも違和感に気付かれて、万が一バレては不味い」

「分かりました。お願いします」


L “Hello”

A “遅かったな”

L “0:00ジャストだろう”

A “デスノートは用意してあるか?”


……モギは金髪を確保出来なかったのか?
それともまさか、あれは教授でも金髪でもない、他人の空似だったのだろうか。


L “デスノートはない。本当にない。どこにあるのかも分からない”

A “そんな筈ないだろう。ならどうしてこのチャットに居る?こちらの要求に応えた?”

L “デスノートの存在は認める。
  おまえがどこで、デスノートの事を聞きつけたか知りたい”

A “僕達がどこに居るか分かるか?”


唐突な質問に、思わず指が止まる。
隣では夜神が雨だれどころか豪雨の勢いでタイピングしていた。
監視カメラ映像が見間違いだった時に備えて一応逆探知を試みるつもりらしい。


L “分かる筈が無い”

A “嘘を吐け”


やはり恐ろしく勘が良い男らしい。
誤魔化して逃げられても困るので、


L “現在逆探知中だ”


と、ある意味正直に答えると納得したようだった。


A “おまえには僕は捕まえられない”

L “どうかな?”

A “デスノートの情報を教えてくれたのは、教授だ”

L “教授はどこからその情報を?そして何を企んでいる?”

A “意味が分からない。キラを渡せ”

L “意味が分からない”


「ニア……もう少し穏やかに、引き延ばして下さい」


Lが溜め息混じりに言った。
わざとではないが、どうしても相手を怒らせる返信になってしまう。


A “キラを渡さなければ、大勢の人間が死ぬ事になる”

L “どういう意味だ?”


唐突に、話が飛んだので反射的にタイピングしたが
何故か間が開いた。
引き延ばせなかったか、もうPCの前に金髪は居ないのか、と焦りそうになった時。


A “こんなに早くこちらの居場所を突き止められたのは予定外だった。
  どうやったんだ?”


しまった……。
モギは既に金髪達を包囲していて、それを悟られたらしい。
いや、「逆探知中」発言から今までの数分の間に踏み込める準備が整ったのか。


L “大勢の人間が死ぬというのは?”


そう言えば……金髪は、完全犯罪マニアであると共に、


A “こちらも時間がない。返答を急げ”


……爆弾魔でもあった、か。


L “意味が分からなければ、返答できない”

A “問答に時間を掛けるつもりはない。ラストチャンスだ”

L “No”

A “The end”


「A」は本当にこちらの返答も待たず、そのままあっさりと退室する。
掌がじわりと湿った。


「……」

「……」

「模木さんに連絡します」


Lが素早く私の携帯を取り、モギにリダイアルした。
変声器をセットしてスピーカにし、コールを待つ。


『はい』

「Lです。今どうなってますか?」


モギが答える前に、後ろで怒声が飛び交っていた。


『爆破がありました。今建物内の客を避難誘導している所です』

「例の男は?」

『部屋の外を張っていましたが……内側からロックされていて
 突入に手間取っている間に』

「ストレッチャーの人物は、」

『未確認です』

「分かりました。何もかも放っぽってすぐに避難して下さい」

『了か……は?』

「大規模な第二波が来る可能性が非常に高いです」


電話の向こうから、戸惑っている気配が伝わってくる。
だがLの対応に、私も夜神も知らず大きく頷いていた。


「あいつは、大勢が死ぬと言っていた」

「ですね」


避難誘導出来る程建物が無事で、しかも大多数が生きている、といった状態で
済むとは思えない。


「聞こえましたか?」


Lの呼び掛けに、若干の間の後モギが答える。


『聞こえましたが不承知です』

「……は?」

『あなたの言うことですからきっと正しいのでしょう。
 しかし自分は公僕なので、一人でも多くの市民の命を守る為に尽くします』


私はモギが、これ程多くのセンテンスを口にしたのを初めて聞いた。






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