バトル・ロワイヤル 1

バトル・ロワイヤル 1










どこかで銃声が響く。
耳を澄ませるが、二発目は聞こえなかった。


考えられるパターンは。

1.狙撃手は敵を、一発で仕留めた。
2.一発撃った所で見失った。
3.ただの脅し。
4.何かの陽動で、二発目は撃つ必要がない。あるいは撃てない仕掛けを使った。
5.今の一発が最後の弾だった(狙撃手は丸腰で逃げているか、もう殺されている)


目を閉じる。
五感を研ぎ澄ませる。


遠い……相当遠い所で、藪の葉の揺れる音。
人の移動する音?
いや風、か。
獣?


……チャリ。

自分の右手が、動かしたつもりもないのに金属音を立てる。

音を立てないように気を付けながら、傍に垂れ下がった蔓をサバイバルナイフで出来るだけ長く切った。
真っ直ぐな杉に似た木を巻いて自分の両手に巻き付け、反動を使って上る。
一番下の枝に到着すれば、後は楽に上の枝に登ることが出来た。

……全く。
一体、どうなっているんだ?
この世界は。





夜神をキラ容疑者として拘束してから二ヶ月半。
手錠で繋がって二十四時間監視を続けたが、奴は全くボロを出さなかった。

それどころか、まるでキラである事を忘れているかのような……。
意欲的にキラ捜査をする様子を見せていた。

私は、騙されない。
そう思っていても自信がなくなる程、真摯な目で。

そして遂に、ヨツバグループの株の動きに不自然な点が見つかり、応援を呼んでいよいよヨツバに潜入捜査……。
と思っていた、そんな矢先。


「L!」


ワタリが、突然捜査本部に駆け込んできた。
何事かと思っている内に、その直ぐ後からガスマスクをし、完全武装した迷彩服の集団が現れる。
よく見るとワタリの背中にはライフルが突き付けられていた。


「なっ、」


夜神が何か叫びかけた時だと思う。
足下にカラ……と金属の筒が転がり、シュウウウウとガスが抜けるような音がしたかと思うと……。
私は、不覚にも意識を失った。




次に目が覚めたのは、木で出来た大きな部屋の中だった。
日本の昔の映画で見た、古い木造校舎の教室のように見える。
実際、部屋の前面には大きな黒板……改め、そこだけ妙に近代的な巨大モニタがあった。
木枠の窓の外は、深夜のように暗い。

自分はと言えば、元々丸腰だがポケットの携帯電話も抜き取られているようだ。
代わりに、首の周りに違和感が。

辺りを見回すと、ワタリ、アイバー、ウエディ、夜神総一郎、相沢、模木、松田、弥……捜査本部に居た者達が、気を失って転がっている。
夜神は?と身を起こして見回すと、すぐ背後で既に目を開けて私を凝視していた。
気味の悪い男だ……。


「何でしょうか、ここは」

「というより……何なんだ、この状況。
 あいつらはおまえの仲間じゃないのか?」

「違います」


私達の会話のせいか、丁度薬が切れたのか、他の面々も呻きながら起き上がる。
と同時に、ガラガラと音がして扉が開き、またライフルを構えた完全武装の迷彩が五人入って来た。


“おはようございます皆さん”


彼等が部屋の前面のモニタの両脇に並んだ途端、モニタが光って声が聞こえる。
加工された、年齢不詳、ユニセックスな声だ。


「な、」

「誰なんだおまえは!」

「ここはどこだ?」

「一体、なんなのよー!」


アイバー、ウエディ、ワタリと夜神以外が、思い思いに寝覚めの混乱のままにモニタに向かって喋りかける。


“まあ慌てずに。順を追って説明します”


どうやら相手にこちらの音声は届いているようだ。
声は憎らしい程に落ち着いた調子で言うと、全面に航空写真と合成された地図が映し出された。


“ここは日本国内某所の、某島です”


北海道を小さくしたような、海に囲まれた菱形の島だ。
見た所建物は少ない。
一部の浜と桟橋以外全て緑で覆われた、リゾート地のような孤島。


“本当の名前はありますが、聞いても無意味です。
 十年ほど前までは辛うじて人が住んでいたのですが、今は無人島です”


このしゃべり方……覚えがあるような気がする。
丁寧な語り口の日本語教師……。

の、生徒?
まさか私と同じ教師から習った……ワイミーズハウスの関係者?


「なんで、俺達をこんな所に連れて来たんだ!」

“ああ、それは……”


声は少し笑いを堪えるように止まった後、


“ちょっと、皆さんに殺し合いをして貰います”





私はその後の混乱を思い出しながら、木の幹に自分の身体を括り付ける。
配給されたリュックサックに手を通して落とさないようにした。

普段なら、三日くらいなら睡眠なしでも問題ない。
ただしそれは、思うように糖質が摂取出来、寝ようと思えば寝られる環境なら、だ。

現在の過酷な状況を鑑みれば、夜中に無駄に動き回るのは得策ではない。
熟睡はせずとも、少なくとも目を閉じて身体と精神を休めて体力を温存しなくては。





「冗談やあらへんわ!」


最初に金切り声を上げたのは、弥だった。
動揺のあまり、方言が出ている。


「どこの誰か知らないけど、ミサはあなたの暇潰しに付き合うほど暇じゃないの!
 そこどいて!プロダクションに電話、」


突然の耳をつんざく破裂音の後。
果敢に飛び出した弥の、動きが止まる。


「?」

「ミサミサ?」


まるで映画のワンシーンのように。
弥は長い髪を靡かせながらゆっくりと後ろに崩れた。


「ミサ!」


思いがけず一番最初に駆け寄ったのは、夜神だ。
だが、抱き止めるには間に合わない。


「弥さん!」

「嘘だろ?」


目を見開いた弥の、眉間より少し上に赤い丸が出現していて一瞬置いてから血が溢れ出して来た。


“ああ。今殺してしまっては反則ですね”

「ひぃぃっ!」

「いやいや、何の冗談、」


そう。
まるで冗談のようだった。
選りに選って日本警察と、このLの前で堂々と殺人が行われるなんて。

だが。
演技で、後頭部を全く庇わずに後ろに倒れる事など出来るはずが無い。
どんな名役者であろうが、どんなに自制心が強い人間であろうが。
本能には勝てない。


“しかし彼女は一番オッズが高かったので問題ないでしょう”

「ど、どういう事だ!」

“普通に考えれば彼女はこのメンバーの中で一番弱い存在だという事です。
 しかしそれだけに、皆さんが中々手出し出来ないのではとも思いましたが”

「そんな事を聞いているんじゃない!誰がこんな事を、」

“これ以上の質問は許しません。
 我々が本気である事は分かって頂けたと思います。
 今後、私が許していないのに発言した場合は、ミサさんと同じ運命を辿って頂きます”


皆が慌てたように口を噤む。
夜神局長と相沢などは、顔が土気色を通り越して紙のように白くなっていた。

声の主は、明らかに気が狂っている。
が、本気なのも、これが現実なのも確かな事だ。






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