Arabian Nights 4
Arabian Nights 4








「月くん、起きてください。覚悟は出来てますよね?」

「L……悪いけど、丸二日……ほとんど三日寝てないんだ……。
 一昨日は時差ぼけで寝られなかったし」

「なら、『お願いします、許して下さい』と言って下さい」

「…………」


夜神は目を閉じそうに伏せたまま、眉を寄せた。
やはり、彼にシェハラザードは勤まらないらしい。
千一夜話し続ける事は出来ないようだ。
私を「王」と認める事も。


「……分かった。好きにすると良い」


夜神は靴を脱いでベッドの上に横たわり、シャツのボタンを二つ外した所で
止まった。
眠った、か?
まあ関係ない。

上に乗って服を剥ぐと、抵抗もせず億劫そうに袖を抜いた。


「流石のあなたも、眠気には判断力が鈍るようですね……
 覚えておきます」

「早く……済ませろ……」

「それともそれも、演技でしょうか?昨夜寝ていないのは確かですが
 一昨日寝られていないかどうかは証人もいませんし」


そこで夜神は、漸く目を開いて凶悪に私を睨んだ。


「あのね、そういうの、もう良いから」

「……はい?」

「今日は、僕の負けだ。おまえに、委ねる。この体も」

「……心も?」

「ああ……山本の事を言わなかったのは、悪かった。
 正直、あいつに連絡を取りたかった気持ちもある」

「でしょうね」

「あいつが、元キラ捜査班の一員になっているのは、偶然なのか、
 それとも誰かの意思が働いているのか、
 僕がキラであったことは、知らされているのかいないのか、」

「確認したいのですね?」

「……ああ」

「それで、今日は暇を見ては警察庁のコンピュータにハッキング掛けてたんですか」

「バレてたか」

「当たり前です」


夜神は薄く微笑んで、目を閉じた。
それを始まりの合図に、覆いかぶさって夜神の局所を握る。
首に、胸に、肩と腹の銃創に、唇でそっと触れてみる。


「……珍しい事、するね」

「何がですか?」

「……」


そう言えば、今まで夜神の体を舐めた事はあっても、唇だけで触れた事は
最初の冗談のようなキス以外ないかも知れない。
ニアに「愛の行為」と言われて、夜神の反応が見てみたくなったのか。


「ああ……、真似事をしてみたくなりました」

「何の」

「『愛のあるセックス』」

「下らない」

「……」


夜神なら、私よりは「愛」に対して見識があると思ったが言下に切り捨てられた。
やはり私と同じ人種らしい。


「愛なんて暇つぶしだよ」

「ほう」

「確たる目的意識も使命感もない人間にとっては、重要な玩具だが」

「絶好調ですね、月くん」

「……ああ、そうだよ。僕はデスノートを拾った時にそれを悟った」


幼く、傲慢な物言いだった。
だが無駄に挑発的過ぎる。
恐らく私が否定するのを待っているのだろう。
乗らないが。


「では、あなたの家族に対する気持ちはなんですか?」

「情」

「なるほど」


即答されて驚いたが、確かに愛と表現される感情は、
殆ど「情」と言い換えられるかも知れない。
日本語には便利な言葉があるものだ。

共に在る事に慣れすぎて切り捨てられない相手……。
そこに少しの尊敬と多大な依存を加えれば、ワタリへの感情に
近くなるかも知れない。

……私に対しても。
長く一緒に暮らせば、夜神の中にいつか「情」と似た感情が生まれるだろうか?

そういえば肉体関係を持つ事を「情事」、「情を交わす」とも表現する。
つまり、お互いを情で縛っていく作業という意味だ。
「愛の行為」と言うよりは、余程正鵠を射ている気がする。


「L……ローション、ある?」


現実的な声に、思考を止めて目の前の肉体に意識を向けた。


「ありますよ」

「眠いのも本当だから、早く済ませてくれ。僕の事は良いから」

「そうですか……」


今回は私の性器を咥えさせる事もせず、言われた通りにローションで
後ろの穴を解す。
中で指を動かしていると、嫌そうに身を捩っていたが、
やがて小さく喘ぎ始めた。


「竜崎……竜崎……」

「気持ち良いですか?月くん」

「……っ」

「身も心も、私に委ねるのではなかったのですか?」

「……」


夜神は一瞬顔を顰めて見せた後、私の背に腕を回した。


「可愛い事をしますね」

「早く……早く、終わらせてくれ」

「そういう時は早く入れてくれ、です」

「竜崎!」


訂正をしながら前立腺を何度もこすると、夜神が堪らないように腰を動かしながら
怒ったように私の背に爪を立てた。

私は思わず頬を緩めてしまう。
感度が、良くなっている。
いくら夜神が拒んでも、夜神の体は律儀に「学習」しているのだ。
私から与えられる快感を。

……だが……。


私は、どことなく憂鬱な気分を蹴散らすように、乱暴に夜神の中に押し入った。
演技なのか、それとも本当に私に心を委ねたのか、
夜神は全身で感じながら、私にすがり付いて達した。 






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