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029:デルタ 進藤が、緒方さんの上で腰を揺らしながら、喘いでいる。 その様子を下から眉間にしわを寄せて見つめていた緒方さんが やがて痺れを切らしたように腰を掴んで自ら突き上げ始める。 二人の動きが激しくなると共に、進藤の掠れた声も高まり 彼が硬直したすぐ後に、緒方さんの動きも止まった。 「ああ・・・。」 進藤が緒方さんとボクの間にどさりと横たわり、余韻の息を吐く。 そしてちらりと横目でボクを見たが、それは勝ち誇った色のように見えた。 彼が緒方さんのワイシャツを羽織ってバスルームに行った後、 緒方さんに寄り添うと腕枕をしてくれた。 「・・・アキラくんはさっきしただろう?」 「ええ。」 だからまた抱いてくれなんて言いません。 ボクの中には出していなくても。 ボクはずっと緒方さんに憧れていた。 これが恋情だとは気付かずにいたが、兄弟弟子である事に、彼がボクを可愛がってくれることに 無上の幸せを感じていた。 そこへ進藤が現れたのだ。 緒方さんが彼に関心を示す度にボクは苛立ち、それは彼が碁が強いからだと思って 何とか追い落とそうとした。 彼が驚くほどの弱さを見せた時には逆に腹が立ったが、 そのギャップがまた恐ろしく、それが緒方さんを引き付けているような気がして。 追いつかせない。 絶対に。 貴方に一番近づくのは、ボクだ。 そう思っていたが。 進藤は短期間でどんどんボクに近づいてきた。 彼が嫌いな訳じゃない。 碁は好きだし、同じ年で切磋琢磨出来る相手がいるというのは、嬉しい。 負けない。という自信があるし、彼のお陰でボクも強くなれる。 それに彼の碁は追わずにいられない程魅力的だとも思う。 許せないのは。 何気ない振りをして、『緒方さんと寝た』と。 恐らくボクが緒方さんに思いを寄せているのを知っていて、自慢げに。 その時、ボクは自分が緒方さんに情欲を持っている事を、認めた。 翌晩緒方さんのマンションを訪れた。 抱いて下さいと言ったら、驚いていたが 「進藤から何か聞いたのか。」 と言って、頷くと抱いてくれた。 初めは優しく。そしてだんだん荒々しく。 何かを失ったような気がしたが、得た物の方が大きいと思った。 それからしばらくして、彼のマンションに泊まっている時に進藤が乗り込んできたのだ。 緒方さんは困った風でもなく、面白そうにボクらを見ていた。 どちらかの肩を持つという事をしなかった。 ボク達は、どちらかを選んでくれなんて言えなかった。 緒方さんは基本的に淡泊な人だから。 選んでくれと言ったら、言ったのと違う方を選びそうだ。 そうでなければ、二人とも切る。 そんな人だ。 それから、こんな関係が続いている。 バスルームから戻ってきた進藤は、ボクが緒方さんに寄り添っているのを見てムッとしたが すぐに緒方さんに覆い被さった。 「ねー緒方さん。オレ、足りないよ。ねえ。」 「進藤。やめろよ。寝てるんだから。」 「本当に寝てるのか?足くすぐったら分かるんだぜ。」 進藤がくすくすと笑いながら足元に降りると、 「・・・うるさい。オレは疲れてるんだ。オマエら二人で勝手に遊んでろ。」 と、毛布を被って背を向けてしまった。 「やだよー。緒方さんじゃなきゃやだよ。だって、」 「進藤。いい加減にしないか!」 進藤は恥知らずだ。 相手の都合を考えない。臆面もなく求める。 まるで子ども。 だからいつもボクが何となく面倒を見るような形になってしまって。 手早く緒方さんのバスロープを羽織り、進藤を引っ張ってリビングに行った。 「離せよ!」 「ボクらはここで寝よう。ゆっくりさせて上げよう。」 「やだよ。」 「少しは緒方さんの都合も考えろ!明日仕事なんだぞ。」 「あ・・・、そっか。」 明日緒方さんは早い。 進藤もボクも取材があるが午後からだ。 「ちぇ。・・・どっちがソファで寝る?」 「キミ寝ていいよ。ボクは床で寝る。」 「んな事言って、オレが寝てる隙にベッドに潜り込んだりしないだろうな。」 「キミじゃあるまいし!」 進藤が碁においてライバルなのは認める。 それは認めるが、こんな事でまで。 こんな男と一緒にされたくないと思うが、 この奔放さが緒方さんに受けているのだろう。 ボクも偶には思いっきり我が儘を言ってみようか。 寝室から持ってきた毛布を渡すと、進藤はすぐにソファに丸まった。 ボクも毛布にくるまって一人掛けの方のソファに凭れる。 「おやすみ。」 「ああ・・・おやすみ。」 「の前に電気消して。」 ・・・ったく。 それからどれ程うとうとしたか、何か気配を感じて目が覚めた。 長ソファの方で、ごそごそと動くものがある。 まだ半分寝たまま 「進藤・・・?」 と声を掛けてから、しまった、と思った。 彼は、一人でしているのだろう。 あれだけ騒いでおいて、足りないとか言っていた。 しかしこんな時に声など掛けて欲しくないのは、よく分かる。 進藤はぴたりと動きを止めた。 ああ悪かったな、と思いながら、寝ぼけた振りをしてこのまま寝てしまおうと思った。 だが。 気配は暗がりの中、みしりみしりと近づいてきて。 ボクの毛布の中にその手を侵入させてきた。 「・・・何のつもりだ?」 「塔矢・・・。」 手はバスローブの裾を割り、内股を撫でながら這い上がってくる。 「オレ、ホントに足りない。塔矢、して。」 「いやだ。」 ゴメンだ、そんな、気持ち悪い。好きでもない男と。 だが進藤は聞いているのかいないのか、毛布と一緒にワイシャツをするりと脱ぐ。 顔は見えないが、外からの街灯りに髪の輪郭と肩先が光った。 緒方さんより細い、肩。 「ねえ・・・。」 ボクにのしかかり、萎えたままのモノを口に含んだ。 まだどこか寝ていて、勃起しそうにないと思ったが 身体はボクを裏切って熱くなって来た。 「ほら、オマエも、出し足りないだろ・・・?」 「・・・・・・。」 「いいじゃん。緒方さんだって『オマエら二人で遊んでろ』って言ってたじゃん。」 「・・・ボクはキミと遊ぶつもりはない。」 言っているのに話を聞かず覆い被さって来る。 「入れて。」 「いやだ。」 嫌だと言っているのに。 進藤は笑いを含んだ声で。 「緒方さんのが残ってるかも知んないけど、いいだろ・・・?」 ・・・その時、瞬間的に理性が、飛んだ。 緒方さんの精液が。 いいだろ?その方が、嬉しいだろ? ボクは腕に力を込めて身体を起こし、進藤に覆い被さった。 足をかかえて前戯もなく押し込もうとして、ふと我に返る。 入れるのは初めてだけれど、 「・・・進藤。その、準備はいいのか?」 身体を離すと座り直してきょとんとした顔をしたらしく、目が光った。 やがて手を後ろに持っていき、少し震えた後、くちゃ、と嫌らしい音がした。 「うん。さっきしたばっかだし。・・・でも、後ろからして。」 ソファの前に四つ這いになる。 自分が男を抱く日が来るなんて思いもしなかった。 いつか女性とするかも知れないとは思っていたが、それは遠い未来で 今はただ緒方さんに抱かれていれば幸せだと。 男であれ女であれ、他の人の事など考えられないと。 思いながら無器用にねじ込んだが、進藤はすんなり受け入れた。 初めての経験だが、それは・・・思ったより抵抗がなくて、きつくて、 他人の、こんな所に気色悪いと思わずにいられないのに・・・気持ちよくて。 どうすればいいのか分からないなどと思っていたが、根元の締め付けに頭が痺れて 気が付いたら勝手に腰が動いていた。 さっきまで、ここに緒方さんの。 この、ぬめりはきっと緒方さんの。 もっと。 もっともっと。 「・・・緒方さん。」 一瞬自分が声を出してしまったかと思った。 だがそれはソファの肘掛けに縋って嗚咽のような声を漏らしていた進藤だった。 「緒方さん・・・ああ・・・。」 思わず動きが止まる。 「・・・進藤。いつも思っていたが、キミ少しうるさいぞ。」 進藤はねだるように自分から腰を振り、その動きはやけに卑猥だ。 「んだよ。オマエが静か過ぎんだよ。マグロ抱いてて楽しいかっての・・・ん・・・。」 当てつけのように高い声で緒方さん緒方さんと。 「うるさい。うるさい。」 腹立たしくて後ろから手を伸ばし、進藤の口を覆い、激しく突き上げた。 だが、半端な場所だったらしく、進藤が大口を開けたときに中指が吸い込まれる。 「〜〜〜〜!」 ボクが入れる度に進藤の口から意味を為さない音が漏れ、 その前歯が指を喰い切りそうに強く噛む。 痛みに興奮して、一層強く。 でも限度が。 「進藤。痛い。」 今度は聞こえたのか、歯を弛めて代わりに舌で中指を舐め始めた。 進藤の唾液が溢れ、指の間を伝って行く。 汚い。 けれどもう。 ボクの下半身はどろどろに溶け。 進藤の中は、熱く、熱く。 中指を深く曲げて口の奥の方まで犯し、 「もう、イっていいか?」 と耳に囁いた途端に進藤の背が仰け反り、がくがくと震えた。 ボクも逃げようとする腰を捕まえ、思う存分突き入れて、進藤の中に、出した。 部分や床を拭いた後、何故か二人でバスルームに向かった。 「さっき溜めた湯、まだ暖かいかな・・・。」 ちゃぽりと手を入れた後、進藤はそのまま浴槽に浸かってボクがシャワーを浴びるのを、 ぼうっと見つめていた。 何となく、いつもより更に幼い表情に見える。 「何。」 「ん〜、いやぁ、オマエ緒方さんと血の繋がりないよな?」 「あるわけないだろう。」 「そうなんだけどさぁ・・・。」 無造作にボクの股間に手を伸ばしてくるのをはたき落とす。 「何なんだ。本当に。」 「・・・・・・ちょっと、似てた。」 何が、と反射的に聞き返しそうになって慌てて飲み込む。 「キモチ良かったよ。悔しいけど。」 「ああそう。キミもね。・・・悔しいけれど。」 進藤はニヤリと笑った後、急に顔を歪めてぴしゃっと湯を撥ねさせ、 「なおさら気に食わねえ。」と呟いた。 「・・・何でオマエは『アキラくん』なんだよ。」 「は?」 「オレはいつまで経っても『進藤』だ。」 「それは仕方ないだろう。小さい頃から知っているんだから。」 「それが気に食わねえんだよ。」 「・・・・・・。」 「オレも『ヒカルって呼んで欲しい』って頼んだことあるんだけど断られた。 『進藤は進藤だろう』って。」 呼び方など気にしたこともないが。 いつもなりふり構わず、何も気にせず甘えたい放題に見える進藤が そんな細かい事を気にしていたとは。 小さな優越感に、浸りながら、 無言で体を洗い流した。 その後体を温めたくて、湯船の進藤に目でどけ、と言う。 知らない顔をしているので、仕方なくその足元に踏み入って無理矢理割り込んだ。 進藤が湯の中で足を伸ばして自分の太股を叩き、「ここに座る?」と巫山戯るのに、 無言でばしゃっと湯をかける。 笑いながら顔を拭った手が離れると、進藤は真顔だった。 「なあ。」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 「何?」 無表情に、じっと見つめる。 茶色く濡れた、犬のような瞳。 「・・・・・・譲れよ。」 「嫌だ。」 「今日は、オレの誕生日なんだぜ?」 そうだったのか・・・。 浴室の時計を見ると、とっくに0時を回っていた。 「9月20日生まれなのか。」 「そ。だから。」 オレに、緒方さんを、くれ。 そんなこと出来るはずがない。 だが・・・。 どんな仏心か、ボクは頭の中で緒方さんのスケジュール帳を繰った。 「・・・今日一日だけ、な。」 彼は今日夜まで仕事だ。 既に進藤に残された時間は少ない。 「ちぇ。」 「ボクとしては最大のプレゼントだよ。・・・おめでとう。」 翌日、進藤はソファの上で、ボクはそこにもたれ掛かって目を覚ました。 既にシャワーを浴びたらしい緒方さんがボク達に背を向けてワイシャツに袖を通している。 ボク達はほとんど裸で寄り添うように寝ていた。 もしや、昨夜の事が分かったら・・・疑われていたらどうしよう・・・。 「おはよう。緒方さん。」 何食わない顔で進藤が声を掛ける。 リビングの鏡に向かってくわえ煙草でネクタイを結び始めた緒方さんは、 振り向きもせずに「ああ。」と答えた。 気が付いていないようだ。いや、気にもしていないのか。 平気な顔で挨拶できる進藤も進藤だが。 「よく寝られた?」 「ああ。」 「今日、オレの誕生日なんだ。」 緒方さんは、短くなった煙草を最後にもう一度だけ吸い、面倒くさそうに灰皿にねじ込んだ。 「そう。」 「それだけ?」 「何と言えばいいんだ。」 おめでとうだと言えば、きっと感情のこもらない平坦な声で「おめでとう」と言うに違いない。 だが、進藤はそうは返さなかった。 「・・・オレたち、昨夜仲良く遊んだぜ。」 !! ・・・・・・進藤!! 自分の顔から、血の気が引くのが分かる。 キミはどうしてそういう、墓穴を掘るような事を、 嘘を吐いてまで隠すことはないが、わざわざ言わなくても、 ・・・だが、緒方さんは鏡の中からちらっとボク達を見て、 「そうか。」 と事も無げに言っただけだった。 ネクタイを結ぶ手に、淀みはなかった。 やはり、緒方さんは素敵だ。 ボクの誕生日には、彼のスケジュールが丸一日空いていればいいと思った。 −了− ※「今こそアキヒカ」。昔の人はいい事言った。 これでも一応ピカお誕生日企画なんですよ。 でもイッツ緒方パラダイス☆・・・? ※追記 カザミンにこの続きをいただきました!エロい!是非ご一読→☆ |
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