086:肩越し








眩しい朝の光に、目を開ける。
素肌にどこかむっと籠もった空気が纏わり付くのが気持ち悪くて、
窓に手を伸ばしてガラス戸を開けた。
早朝の、清涼な空気が流れ込んでくる。


安心してごろりと転がり、隣で裸で寝ている幼なじみの髪を軽く指先で弄んだ。

・・・ごめんな、こんな事して。

でもオレと違って普通に共学の高校に行き、大学に進んだあかりは、
思っていたような子どもじゃなかった。

多少は躊躇っていたけど、驚く程あっさりとオッケーした。

オレはこんな事初めてだったけど、あかりは違ったとか・・・?
まさか、な。






ごろりと反対側を向いて、これも胸をはだけたまま眠っている女の指先に触れる。
塔矢の彼女は、ピアニストだ。

白くて、決して美しくはない指。
それでも碁打ちの指に少し似てるかも知んない。
いや、碁の一局の方ががピアノで奏でる一曲に似てるのかもな。
白と黒、碁盤と鍵盤、思いを込めて叩く。・・・二人。

だから惹かれ合う。のも分かるけど。
それはオレも同じで・・・。

カオも美人だ。
いかにも塔矢の彼女、って感じ。
和風で品があって、いい所のお嬢さんってのが滲み出てて。

そんな訳で、初めて紹介された時から欲しいな〜、なんて思っちゃってた。
だからって盗るつもりなんてなかったけど。

この娘が塔矢に抱かれてる時ってどんな風になんのかなって。
気になってさ。
凄く色っぽかった。
昼間清楚な感じだから余計に。

揺れる白い腰を思い出すと、ああ、あんだけヤりまくったのにまた元気になっちまうオレの息子。






次に・・・その肩越しに、向こうで仰向けに寝ている塔矢の頬に、そっと触れた。

昨夜酔ってたからな〜、じゃなかったらこんな事しないんじゃないかな。
目が覚めたら、すっごい自己嫌悪にまみれた顔してくれそうで楽しみ。

塔矢がしてるの見んのは、堪んなかった。
びっくりした。
真面目なヤツの事だからもっと真顔でするかと思ってたら、笑いながらしてたから。
でも途中から獣じみた顔になって、馬鹿みたいに腰カクカク動かして。

コイツも昼は上品そうだからな〜、余計にエロいのかも。
塔矢はどうだったかな?
オレがあかりとヤッてんの見て、興奮しただろうか。




キレイな寝顔。
三人とも、キレイ。
けど、その中でも男の塔矢の寝顔に一番惹かれるなんて言ったら。
二人でこんな朝を迎えたいだなんてふざけた事思ってるなんて言ったら。

酒に紛らわせてこんな事持ちかけたのは、自分達がヤッてんの見せたいとか、
おまえの彼女がヤられてんの見たいとか、
そんなんじゃなくて。

ただ、おまえの裸と、セックスが、見たかったからだなんて。

言ったらどんな顔するだろ。


言わないけどね。
彼女の肩越しのこの距離が、オレ達には丁度いい。

これからもずっと指一本触れないだろう。
って、あ、もう触っちゃったか。





その時、寝ていたと思った塔矢がぱちりと目を開けた。

まず頬に触れた手に目を向け、その腕を滑り上がった視線は彼女の肩をあっさり越えて、
オレの目に辿り着く。


その横目が、

  わかってるよ。

と言ったような気がした。







−了−








※4P。と言っても、塔矢とあかり、進藤と塔矢の彼女、はしてないと思います。






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