敦煌【前編】








黄色味がかった砂塵の膜が地表を舐め、足元に近づいてくる。
趙光は、どこまでも続く白い地平を眺めていた目を細めて襟巻きを鼻の上までたくし上げた。




趙光の父、趙行徳は湖南の田舎の出身であるという優秀な文官であった。
真宗の天禧元年(西紀1017年)三十五の年に開封で進士試験を受け、殿中の試験に於いて
榜眼(二位)の成績を得て以来高級官吏として何不自由なく多忙な生活を送っている。

しかしその息子の趙光が何も苦労をしなかったかと言えばそうではない。
彼は、妾腹の子であった。
しかも光を産んですぐに他界したその母というのも、並の人ではなかった。

趙行徳は、実は三十二の年にも進士試験を受けている。
三年後のその次の試験で優秀な成績を収めた者が何故その時落第したかと言えば
その父にしては馬鹿馬鹿しい話なのだが、最終試験の面接の待ち時間に控えていた
尚書省の中庭で、居眠りをしてしまったというのだ。

趙光はその時見た夢の話を父から何度も聞いたが、特に感慨を起こさせる内容ではなかった。
直接趙光に関わってくるのはその後の話だ。

趙行徳は絶対の自信を持て臨んだ進士試験で思いがけず落伍者となった絶望の中、
市中をふらふらと彷徨う内に城外の市場に足を踏み入れてしまったのだという。
汚い服装の老若男女がごったがえし、家鴨の足だの焼いた豚の頭だのがぶら下げられた
活気溢れる狭苦しい路地をしばらく行った所で黒山の人だかりに出会った。

「さ、どの部分でもいい!買ったり買ったり!」

牛や羊がその場で捌かれて売られる、というのは見たことがあったが、「人」のそれは初めてであった。
人集りの真ん中では大きな男が剛腕に相応しく巨大な包丁を振り回している。
その前に置かれた木の台の上に裸で横たえられていたのは一目で漢人ではないと知れる女で、
白くはないが滑らかな肌と彫りの深い顔立ち、黄銅色の髪を持っていた。
目は開けていたが、自分の置かれた状況が分かっているのかいないのか、不敵とも言える仏頂面で
天を睨んでいたという。

聞けばそれは西夏の女で、他人の夫を盗むという罪を犯したので肉を切り売りされると言う。
場所は早い者勝ち、値段は豚の肉と同じとの事だった。

「女は承知なのか。」

趙行徳は思わず物売りの男に聞いたが、思いがけずその答えは女の口から飛び出した。

「承知だ。」

言葉が分からないのか正気でないのか、と思われた女が突然漢語を話した事により
見物人の間にざわめきが広がる。物売りの男は「ち、」と舌打ちをして、

「情けない奴らばかりだ。買えないようなら買えるようにしてやる。」

包丁を閃かせると、板を打つ音を響きわたらせ、女が呻き声を上げた。

「指はどうだ、指は。」

左手の指二本の先端が、台の上に転がった。


趙行徳は思わず、「よし、買う」と叫んでいた。

「全部買う。」
「買うか。」

念を押して交渉に入ろうとした時、血の流れる指を板について身を起こした女が、趙行徳を睨め付けた。

「西夏の女を見損なうな。買うならばらばらにして買って行け。」

その時まで趙行徳に、女をどうこうしようという気持ちは全くなかった。
ただ、どういった訳か目の前で殺されるのを見るのが無性に嫌で、大した金額ではないから、
自由にしてやろうと思っていただけだった。

だが、その誇り高い瞳と視線を合わせた瞬間、そんな茫洋とした思いも
進士試験に落ちた憂いすら吹き飛んで、ただ「生きている」という異様に強い感動に捉えられた。
自分も彼女も生きていると、今まで学んできた膨大な書でも表せない烈しい感情の激流に
居ても立ってもおられずどうしても彼女を自分の物にしたくなったのだ。


それが趙光の母であった。
母は最後まで趙行徳を憎んでいたという。
父は父で、そんな母を愛していたのかと言えば心底訝しげに首を傾げ、ただ「命運」とだけ言った。
あの年試験を受けていなければ、いや最終試験の中庭で居眠りをしなければ、あんなに涼やかな
槐樹の木の下に座らなければ金輪際彼女と出会う事はなかった。

趙光は自分が嫌いであった。
正確には自分の見た目が気に入らなかった。
顔立ちは父に似た完全に漢人のものであったが、その明るい色の髪は明らかに彼が混血である事を
物語っていた。
もし父がその時居眠りをしなければ自分の母は西夏の女などではなく、妾腹ではあっても
漢の女であろうし、そうであればもっと自由に生きられたであろうし、進士試験をも受けることが
出来たのではないかと思うにつけ、槐樹の木を恨めしく思って育った。


しかし、そのような幼い感傷も十四の歳までであった。
趙行徳が十四になった趙光に母の形見だと言ってある布片を渡したのだ。
そこには漢字に似て非なる文字がいくつも綴られていた。

「それは西夏の文字で、恐らく母の出生を現すものだろう。」
「西夏に文字があるのですか?!」

それまでは漠然と遥か西にある国、という認識しかなく、母もいない以上夢の中のような場所であったが
そこで作られ、書かれたという文字を目の当たりにして、突然現実味を帯びて迫ってきたのだ。

西夏にもやはり人はいて、そして宋とは違う文化を持っている。
そして、自分はその血を引いている。

趙光は、その布を眺めて一年を過ごした。
文字の意味はさっぱり分からなかった。

十五になった時、趙光は旅支度を調えて父を訪ねた。
西夏に行くつもりだと言った。
絶対に止められると思っていたし、それでもそれを振り切って行くと決心していたのだが
意外にも父は長い長い間考え込んだ後、きっと無事に帰ってこいと言って、
少なからぬ金子と、売れば金になるであろう金細工の首輪や腕輪を与えた。

最後に出口で振り返った時、父が小さく呟いたのはやはり「命運」の一言で、
後に趙光は、父が件の試験に落第した時に見た夢の話を感慨深く思い出した。

それは、天子に安辺策(西夏に接した国境など、辺境問題の対策)を問われる夢だった。




趙光の旅は楽なものではなかった。
色々な隊商に入れて貰って砂漠や山を渡り、馬を引く過酷な旅路であったという以上に、
髪の色で西夏人と間違われて迫害されそうになったのだ。
この頃、西夏は強大な力を身に付けて宋を脅かし始めていたため都近くでは
西夏人というだけで快くは思われなかった。
しかもまだ一人前の男というには幼い体格であったのも不幸であった。

「小光」

それは長安から環州に向かう道中の川縁で過ごした夜の事だった。
その時一緒に旅をしていたのは二十人余りの旅隊で、五人ほど回鶻(ウイグル)人も混ざった
寄せ集めの集団である。
趙光は用心のため、皆から少し離れた木の下で荷を解いて横になったのだが
それが却って良くなかった。

「小光。起きろ。」
「・・・ん?」
「おまえ、女というのは本当か。」

趙光は驚いて身を起こそうとしたが、上からは黒い影がのし掛かっている。
身を守る為に男装をして旅をしている女と間違われているらしい。
月光は明るかったが、それで逆に男の顔は全く見えなかった。

「違う。オレは男だ。」
「女には一つしか使い道がない。」

男は趙光の言う事を聞かず、抱きしめて首に唇をつけ、衣をたくし上げた。
金ではなくそれが目的なのなら、男と分かった時点で離してくれるであろうと力を抜いたが
「肌触りがいい」と耳元で囁かれた時、ぞっとして身を捩った。
女気のない集団、もしそれでもいいと、女「みたい」なら何でもいいと思っているのなら、
と恐怖したのだ。

しかし次の瞬間、男の動きが止まった。
趙光が驚いて見つめると手を上げ、ゆっくりと立ち上がる。

「うせろ。」

思いがけず趙光の頭上で鋭い声がしたかと思うと、前にいた男は「ひっ、」と声を上げて
隊商の方にまろびながら駆けていった。

趙光が振り向くと、そこには見たことのない服を纏った漢人が立っていた。
剣をすらりと鞘に収めた所を見ると、先程までの男の喉元にでも突きつけられていたのであろう。

「・・・驚いたな。近づいてきたのに全然気付かなかった。」

趙光が言うと男は微笑みながら趙光の胸元を指さした。
女人でもないのだから恥じ入る必要もないと思ったが、何となくこの相手の前ではだらしない格好で
いてはいけないような気がして慌てて乱れた服を掻き合わせる。

「アンタ誰?どっから来た?あ、そだ、助けてくれてありがとな。」
「私は、あなたのお父上に御恩のある者です。」

優しく、低いが透明度の高い声だった。今宵は一緒に寝ましょうと言われて、趙光はこの男の目的も
さっきの男と同じかと思ったが不思議と嫌悪感は湧かなかった。

趙光と、不思議な漢人佐為との出会いであった。


趙行徳から頼まれたのか事情を聞いて自分から買って出たのかは分からないが、
佐為はそれからもさり気なく趙光と同道し、陰に日向に守り続けてくれた。
元々武人でもあるのか常に刀を手放さず、その腕は確かに思える。
しかし昼間一緒に旅をする事もなければ、夜もあまり話すことはなかった。

数週間後、遂に彼等は涼州に到着した。
元々語学に長けていた趙光は、既に西夏語も回鶻語もカタコトながら身に付けていた。
このまま黄河を渡ればそこは西夏の都興慶である。

趙光は、感慨深く母の形見の布片を取り出した。
町で聞き回った所、西夏の文字はまだ出来たばかりで読み書きできる者は少ないが
その布片があれば、西夏の都に入れる手形のような物であるというのが分かった。
それがなければここまで来て足止めを喫す所だった。

その他にも西夏がいかに文化的、戦力的に発展して来ているかという噂は入って来る。
涼州は宋の国土ではあるが、漢人だけでなく西夏人、回鶻人、沢山の異民族が住み
案外自由に国境を行き来しているらしい。

「しかし、今は徐々に国境に兵が集まってきています。早い方がいい。」
「うん・・・。」
「どうしました、明日の朝早くに回鶻の商人に紛れ込ませて貰うのでしょう。」
「そうだけど。オレはこの髪だし手形があるから入れるけれど・・・。」
「・・・・・・。」
「オレ、佐為と離れたくないんだ。でも、佐為は・・・。」
「心配しないでお休みなさい・・・。」

優しい声に包まれると不思議と眠気が襲い、趙光は夢も見ずに寝入ってしまった。

翌朝回鶻の商人が迎えに来た時、既に佐為はいなかった。
趙光は悲しく思ったが仕方なく馬に乗り、国境へ向かった。



興慶は思ったよりも大きな城邑であった。
趙光は、父・趙行徳の話していた安辺策を改めて思い出していた。
西夏は宋にとって、脅威となる。
いくら宋の兵力があっても沙漠での決戦で敵うはずがない。
地の利のある水草地帯に城を築き、西夏が攻め入って来るのを待って潰すべきであった。

だが、もう遅い。
興慶がこんなに大きな都邑になったのは、兵力を集めているからだ。
近く、大きな戦が始まる。
それが宋と西夏のものか、西夏と吐蕃のものかは分からないが、いずれにせよ遅かれ早かれだ。

趙光は自分を漢人だと思っていたが、この都は嫌いではなかった。
やっと辿り着いた母の故郷、という感慨は案外あまりなかったが、それでも
あらゆる民族の入り交じったこの場所では、趙光はまったく異邦人ではない。
涼州にも色んな民族がいたし混血も多かったが、今ひとつ心が落ち着かなかった。
それは、宋の国土にいる間は見た目はどうあれ、自分は高級官吏の息子であるという
気負いを捨てる事が出来なかったからであったからかも知れない。


趙光は黄金の腕輪の一つを売ってまとまった金を作り、町の真ん中寄りにある寺の僧坊に
落ち着いた。
あんなに焦がれた土地であるのに、いざ到着すると何かを見失ったような気がする。
これからどうしようという宛もない。
出来れば母の血筋の者でも探し出したいという思いもないでもないが、あまりにも
手がかりがない上に、何故か積極的に探したいという衝動も起きなかった。

僧坊の窓の外に、槐樹の木がさやさやと揺れている。
こんなに内陸に来ても、槐樹はある。丈夫な木だ。
昔は嫌いであったこの木に懐かしさを覚えながら
趙光は、うとうととまどろんだ。

夢の中で、趙光は佐為と再会していた。
佐為は優しく微笑みながら近づいてきて、趙光に口付けた。
駄目だ、と何故か思う。
男同士だから?それはそうだ。だが、趙光はそうなってもいいと思っていたのに
佐為は幾夜もただ添い寝するだけで、趙光の体に触れようとはしなかった。
今、望み通りに佐為が触れて来るのに、激しく同じ事を望みながら、いけないいけない、という
思いばかりが重なり、体が固くなるのだ。
佐為の優しい腕から逃れて川まで走り、水を飲もうと水面を覗き込んだ所で
目が覚めた。

汗をびっしょりとかいていた。
今、佐為は一体どうしているのだろうか。
まだ涼州で滞在しているのだろうか。

父に世話になったと言っていたが、父とどういう関係かは結局聞かなかった。
どうしてだろう。どうしてそんな、真っ先にするような質問を自分はしなかったのだろう。

こんなに頭が混乱するのは喉が渇いているからだ、と趙光は独り言を言って
水を買いに、町へ出た。


町は相変わらず活気溢れていて、西の東の商人があらゆる所で商売を、物々交換をしている。
匈奴の首領の首飾り、どこぞの可汗の宝玉といったいかがわしい物から、于闡の紅塩や
鬱金、天山の向こうから渡ってきた珍しい織物、金属の食器、駱駝、山羊、鳥、この市場に
ないものはないのではないかと思えるほどの品数であった。

・・・あの槐樹の木の下で眠らなければ。

不意に父の声が頭に響いたような気がしたが、それは自分の声だったのかも知れない。
眠らなければ・・・どうなったというのだ?
西夏の女に、母に会わなかった、会わずに済んだというのか。
それとも。
今自分の視線を釘付けにしている者に、出会わずに済んだというのか。

「さいっ!!」

高い声が、出た。何人かが振り向いたように思う。
だが物売りの姦しい声、ざわめきにすぐに紛れて消えていった。
しかし趙光は走った。

西域では珍しくはない光景だが、この街角にも異国の奴隷売りがいた。
西夏軍が他の国を攻め滅ぼした時に連れてきた女子どもを引き取って売ったり、
盗賊が自ら邑を襲ってさらってきた者達もある。
貧しさに耐えかねて親に売られた子もある。

趙光が目を留めたのは、明らかに妾、あるいは性奴隷向けの、年頃の美しい
娘を幾人か囲い置いてある小屋だった。

金髪碧眼、黒曜石の瞳に浅黒い肌、赤い巻き毛に小麦色の肌、
娘達は目の色も髪もまちまちで、血が混じりすぎて何人か見当も付かない者もいたが
それでもそれぞれに非常に美しかった。
各々美しさを引き立てるような煌びやかな布を纏っているが、恐らく売られるときは
それは剥がされるのであろう。
彼女らは諦観に囚われているのか絶望に疲れたのか一様に虚ろな目をして、
時折掛けられる下卑た冷やかしの声も聞こえぬかのように無感動な様子だった。

その一番奥に、その、一目で趙光の心を捉えた娘が居た。
一番地味な布を纏い、膝を抱えて丸まって俯いている。
顔はほとんど見えないが、やや彫りが深く、整った面立ちをしている。
趙光がまず惹き付けられたのはその髪であった。

西夏に入ってからは純粋な漢人の娘など、全く見ない。
その娘も一目で混血と知れたが、限りなく真っ直ぐで漆黒の髪を持っていた。
・・・オレと、逆だ。
顔立ちは完全に漢人で髪と肌の色が異邦な趙光と逆に、その娘は顔立ちは漢人とは違ったが
その肌の白さも黒い髪も紛れもなく漢人の物だった。

そしてそれは、誰よりも佐為を思い出させた。
顔立ちまで佐為と似通っているような気がする程だ。

父が、母と出会った時の事を話してくれた言葉を思い出す。
「命運」と。
どうしようもなく惹き付けられて、手に入れずにはいられなかったと。

「よし、買う。」
「おまえが?もっと大きくなって金を持つようになってから来るんだな。」

奴隷売りにしては怜悧な顔をした背の高い店の男の冷たい声に
どっと笑い声が起きる。

「金なら持ってる。」

首から下げた財布から金貨をちらつかせると、男の態度が一変した。

「あの子。黒髪の。」

しかし趙光が指さすと、男は少し考え込んだ後、金貨十枚と言った。

「法外だな。」
「あれは、回鶻の王族の子どもだ。」

そんな御託はごろごろと転がっている市場だが、本当にそうかも知れないと思わせる気品が
その娘にはあった。

「・・・高すぎますね。美しい『娘』だ、と言ってご覧なさい。」
「佐為?!」

確かに、耳のすぐ後ろで佐為の声がしたと思ったが、振り向いても見知った顔はなかった。
佐為に似た娘を買おうとしている時に、佐為の声がした。
不思議だ、手形もなしにこの国に入れる筈もないのに。
しかし趙光は、幻聴とは思わなかった。佐為の声に従うことにする。

「美しい『娘』だな。」

「娘」を強調して言うと何故か店主は苦笑いをして、金貨三枚と言った。
今度はどうした事か相場よりだいぶ安い。
しかし何れにせよ必ず手に入れるつもりだったので、趙光にはどうでもよい事だった。

「よし。決めよう。」

再び財布に手を入れ、金貨を取り出した所で・・・。

「いやだ。」

突然、娘がはっきりと言葉をしゃべった。それも漢語だ。

「おまえ、漢語が分かるのか。」
「おまえ?おまえにおまえ呼ばわりされる筋合いはない。私はおまえなんぞに買われたくない。」
「何だとテメエ!混血の奴隷の癖に生意気な!」
「混血はキミも同じだろう!何が悪い!」

趙光は言葉に詰まった。
自分が混血であるのは誰から見ても明らかで、しかしこの西夏ではそれは全く珍しい事でも
悪いことでもないのだ。
自分が開封で、洛陽で、官吏の息子でありながら混血であるという事にどれ程苦しんできたか
分かってくれる者はこの町にはいない。
しかしだからこそ、初めて解放されたような自由を味わっていた筈なのだが、それを今この奴隷に
言われると何故かどうしようもなく腹が立った。

「おい、坊主、じゃなかった、坊ちゃん!」

背を向けると店の男の声が追いかけてきた。

「二、三日中には飲み込ませるから!大人しくさせるからまた来てくれ!」


趙光は僧坊に戻ると、また窓際に行って槐樹の木を見上げた。
自分の「命運」は槐樹の下で始まったように思う。
槐樹の下で見る夢が過去なのか未来なのかは分からないが、それが自分の将来を
司る事は間違いがないように思えた。

佐為に、会いたい。

先程の奴隷の憎々しい顔が目に浮かぶ。
どうしてあんなに佐為に似ていると思ったのだろう。
そもそも、どうして自分はこんなに佐為を恋しく思っているのか?
佐為といると安心したが、一緒にいた時これ程までに焦がれていただろうか。

またしても、趙光はうとうととまどろむ。
少しの疑問も、もうどうでもいい事のような気がしてきた。

佐為の夢を見た。
今度は逃れようとする足を無理に戻し、佐為に身を任せた。








−続く−






  • リク部屋に戻る
  • SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送