ドッグファイト(後編) ドッグファイト(後編)









「なんだ、社と打ってたんじゃないのか?」

「いや検討してただけ。もう自分の部屋に帰ってった。」

「そうか。」

「打つのは本番だけに賭けるさ。それより今はリラックスさせてよ・・・。」

「やめろよ。リラックスもいいが北斗杯は、今日明日だけだぞ。」

「・・・そっか。誰にする?」

「決めてない。」

「高永夏の・・・鼻っ柱を折ってやりたいと思わねぇ?」

「言葉の通じないキミが行ったら不自然だな。」

「うん。お願いします。」

「って言いながらキミは・・・。」






【ウッテガエシ】


夜遅くに塔矢アキラが訪ねて来たのには驚いた。
是非聞いて欲しい手があるなどと明日戦う相手にわざわざ言いに来るのは
どういうつもりだろう。

余裕を見せたいのか。盤外戦か。

それなら受けて立とうと部屋に引き入れた時点で、もしかしたら既に
間違った選択をしていたのかも知れない。

しかし実際に違和感を感じたのは、しばらくの検討の後、
塔矢がちらりと視線を寄越してさりげなく自分のネクタイを弛めたのを見てからだった。

誘って・・・るのか?

まさか。
そのように見えなくもないが、それはあまりにも塔矢アキラがしそうにない事だ。
何と言っても明日は本戦だし。
関係ないだろう。
気のせいなのだろう。


『ね?ほら、ここで一手儲かる。』

『ああ・・・。』


・・・それにしても色が白い。
間接照明の中でも頬が光って、蝋か樹脂で出来ているようだ。
指の節で軽く打てば、コツコツと音がするんじゃないだろうか。

元々きれいな顔をした男だとは思っていた。
だがそれだけだった。

でもこうやって、薄暗い所で見ていると・・・そんな目でじっと見られると。
本当は女なんじゃないかだなんて、バカな考えが過ぎる。


『しかしもしこう来られたら。』

『ええ、その場合も・・・』


どうしたことだ、昼間の塔矢が思い出せない。
ええっと、塔矢行洋先生の一人息子で、物腰は柔らかいが気は強そうで
盤を挟んで向かい合えば獅子のようだと、鼻っ柱の強さではオマエに負けないと、
日煥も、言って・・・。


『・・・少し疲れましたね。』


椅子から立って、伸びをする。しなやかな身体。
無造作にベッドに腰掛け、後ろ手に体重を預けた姿勢でじっとオレを見つめる。

オレも無言で立ち上がって隣に座った。
塔矢の襟元に手を伸ばして、さっき自分で弛めていたネクタイと首の間に指を入れる。

・・・オレにそっちの趣味はない。
そう、間違いなくストレートだ。
今なら、まだ引き返せる・・・。


『息抜きを、しましょうか。』


それでもそっとオレの手を上から押さえ、
そのまま後ろに身体を倒した塔矢に引きずり込まれ

オレは、自分でも意外なほどあっさりと、境界線を越えた。




唇を合わせながら慌ただしく服を脱がせ合い、驚いたことに塔矢は
オレが止める暇もなく股間に舌を這わせ、丁寧に濡らした。
そのままイかせてくれるのかと思ったら、直前に根元を押さえて止め、
オレの前でゆっくりと足を開く。

実際に買ったことはないが、手慣れた娼婦のようだと思った。
信じられない。
あの塔矢アキラが。

しかも尻を開いた時に、中から、とろりとしたモノが少し、
もしかしてこの部屋に来る前にも誰かに?
いや・・・。

オレは騙されてるんだろうか。
これは塔矢アキラだよな。

混乱する。
混乱する頭の中で、何故か「誰に?」という疑問がひたすら頭の中を巡る。

やがて無我夢中で突っ込もうとしたオレをまた押さえて、塔矢は


『縛って・・・。』


両手を揃えて差し出した。
タダでさえおかしい上に、そういう趣味があるのか・・・。
もう驚かない。
自分の中で何かが麻痺しているのが分かる。

言われるがままに塔矢が脱ぎ捨てたシャツで縛り、一瞬行洋先生の顔が浮かんだが
本能には逆らえず、オレは今度こそ塔矢の中に自分をねじ込んだ。



・・・短いが、濃密な時間だった。
あまりにも良くて、狂いそうだった。

なんてことだ。

それでも声を押し殺した塔矢が内側で感じているのが分かって
不自由な両手で空を掴むのを見てオレも異常に興奮して

もっともっと貪りたいと思ったが、つい達してしまった。

癖にならないように気を付けないと。
二度とこんな事しちゃいけない。

なのに、塔矢の手の戒めを解いてもまだ身体は熱くて、
オレは今心の中で誓ったばかりの自戒に「塔矢以外には。」と付け加える。
そして腕の中の身体に

もう一度・・・。

声に出さずに囁くと、僅かに頷いた。



しかし今度は、塔矢が覆い被さってきて積極的に唇を寄せてきた。
上からか?
と思っていると、脱力したオレの両腕を、ベッドにくくりつけ始める。


『何をするんだ?』

『今度は、あなたが・・・。』


オレの服は使ってないだろうな。
と思いながらもなすがままにしてしまう。
面白い趣味だ。
縛ったり、縛られたり、そういうのが好きなんだろう。

さっきオレが早くイキすぎたので、今度は自分が動いて調整するつもりだろうか。
別に構わないが。
いやむしろ楽でいいかも。


両腕が完全に固定されたのを見て満足そうに微笑んだ塔矢は、しかし次に
意外な行動に出た。

オレの足を開いて、間に体を入れたのだ。

得体の知れない恐怖が走る。
こんなに無防備な姿で、相手の眼前に急所を曝す事は無条件に本能が拒む。
少し緊張していると塔矢はニヤリと笑って指を舐め、

・・・オレの尻に指を差し込む仕草を見せた。


『やめろ!』

『何故?』

『何をするつもりだ、』

『さっきアナタがボクにした事だよ。』

『な、』

『お互い様じゃないか。』


確かに自分が塔矢を抱いておいて何だが、自分が男を受け容れるなんて考えられない。
大体塔矢が女みたいに誘ったからこんな事になったんであって、
そんな、そんな、
このオレを女扱いするなんて、

許せない。絶対に。

もう忘れていた、幼い頃受けた嫌がらせの類が思い浮かべられてカッと血が昇る。
塔矢の手を止める為に一旦膝で締め上げ、小さな悲鳴を聞いたところで
胸を思い切り蹴って跳ね飛ばした。
塔矢はベッドから落ちていった。


『これをほどけ。』


睨み付け、低い声で命じる。
それでも呻きながら起きあがった塔矢の胸板は、腕の中にいた時よりも広く
何よりも股間で屹立しているモノが、男の性を主張している。


『早く。』


だが塔矢は無表情のまま電話に手を伸ばすと、ホテル内のどこかに掛けて
何事か言っていた。

何をするつもりだ?



しばらくして小さなノックが響き、恐怖に髪が逆立ったが
入ってきたのは果たして恐れていた人物だった。

・・・進藤ヒカル。

コイツだけには絶対に負けたくない。
日本人で年下で、生意気で。
最初に喧嘩を売ってきたのは向こうだが、去年の大将戦でオレは
生涯コイツだけには負けたくない、と思った。

一番弱みを見せたくない相手。
そんな男に、こんな、全裸で縛られている姿を曝すなんて。
舌を噛んで死にたくなる。

何故、オレは、大人しく縛らせてしまったんだ・・・!
だが塔矢のような異常性欲者がそんなに沢山いるとも思えないので
進藤なら助けてくれるかも知れない、という僅かな望みもあった。
この際背に腹は代えられない。


『進藤、これは塔矢が勝手にやったんだ、ほどいてくれ、』


だが奴はオレを見て小さく口笛を吹くと、塔矢が何か言ったのに軽く頷いた。
そしてベッドの側に来て・・・両腕でオレの右足を抱えたのだ。


『やめろ!』


通じない、いやこの位ニュアンスで通じるだろうがきっと聞いてはくれない。
そう思ってはいても叫ばずに居られなかった。
進藤はオレの顔を見て嫌らしくニヤニヤと笑った。


『オマエ・・・。』

『やっぱり一人じゃ無理だったからね、進藤に手伝って貰う事にしたよ。』


塔矢が微笑みながら言い、もう片方の足を押しのけて更に股を開かせる。
そして萎えきったオレを指で撫でた。


『やめろ!』

『殺すぞ!』

「××××××、×××。」


怒鳴るオレと対照的に明るい顔をした進藤が、こちらを見て何か言った。
塔矢も面白い事を聞いたかのように噴き出しそうな顔になる。


『進藤が、アナタのを銜えていいかって。』

『・・・!』


答えるより前に、オレの足に体重を掛けた進藤が顔を近づけてくる。

嫌だ!何を、何を言っているんだ!

暴れようとした足はマットレスにめり込んだ。
さっきの・・・塔矢ならまだいい。
見た目もあるし、盤を挟んで向かい合ったことがないというのも大きいだろう。

進藤は嫌だ。
コイツだけは。

それでも。
ぬめった舌が繰り返す動きに情けない事にオレはまた勃起してしまい、
溢れた唾液が睾丸に伝う感触を何かに似ている、などとどうでもいい事を考えてしまう。

やがて口を離した進藤がオレの足を肩の上に担ぎなおし、腰が持ち上がって
唾液はシーツに落ちずに尻の方に流れた。
一安心する間もなくまた塔矢が足の間に手を差し込んでくる。


『やめろ!いやだ!離せ!』


暴れても、指はオレの尻から離れず、
しばらく穴の周辺をくるりと弄んだ後、する、と入り込んできた。


『・・・!』


最悪な、感触に、身体の内側を触られる嫌悪感に嘔吐感が沸き上がり全てが萎える。


『どう?気持ち良い?』

『・・・気持ち悪いさ、オマエ等がな!』


締め付けても、容赦なく指は進む。
ギリ。
噛みしめた歯が、砕けそうだ。


『・・・やめろ・・・!』

『止めて欲しい?なら“止めて下さい。”って言ってみろよ。』

『・・・・・・。』

『“明日の勝負は譲りますからどうか止めて下さい。”・・・って言ったら止めるかも知れないよ。』


ギリ。
自分でも知らない間に歯茎の限界を超えていたのか、口の中に血の味が広がった。


『・・・ッ・・・。』

『強情だねぇ。』

『・・・・・・。』

『じゃあ明日の対局はお互い全力で戦おう。』

『・・・・・・。』

『まあ種を明かせば頼まれてもコレを止めるつもりはなかったけどね。
 そんな風に強情なアナタが、結構好きだよ。』


そう言って塔矢は笑いながら、熱いモノを押しつける。
オレは喉を反らし、悲鳴を飲み込んだ。








「高、強かったな。」

「ああ。初手から本当に凄まじい気合だった。」

「昨夜のんが響いてまともに対局出来ねえんじゃないかとちょっと心配してたんだよ。」

「それは大丈夫だろう。血も出てなかったし、そんな差し支えるような事はしてないよ。」

「ふふふ。悪魔。」

「キミがね。」

「オレは押さえて見てただけだもん。それより今日が最後だな。」

「うん。どうしよう。」

「韓国勢はもうマズいしな。社は・・・まあ今回じゃなくてもお楽しみに取っておくとして。」

「というか同じ年なんだから主旨に反するじゃないか。」

「あ、そっか。」

「で誰をヤるんだ。」

「今度はおまえ決めろよ。」

「・・・楊海さんが、結構気になる。あの『何もかも分かったような顔をした』。」

「なる。オレはどっちかってぇと『滅茶苦茶に突っ込んで欲しい』んだけど。」

「あの人はそういうタイプじゃないだろう。」

「ってかノンケだし。」

「どうする?正攻法では一人じゃ無理だったからな。」

「二人掛かりで、行くか。」

「そうだな。」

「突っ込まれた時のあの人の顔、楽しみだなぁ。」






【ハサミツケ】


部屋で今日の棋譜を整理しているとノックの音がした。
当然自国の選手の誰かかと思ったが、ドアの外に立っていたのは。


「原来、小双生呀。」

「え、何?」

「いや何でもない。まあ入ってくれよ。」


内心で「双子ちゃん」と呼んでいる、日本選手団の塔矢アキラと進藤ヒカルだった。

勿論彼等は他人で、顔も全く似ていない。ああしかし背格好は似たようなものか。
塔矢君の方が少しばかり長身だがどちらも性分化して間もない、
中性に少し男らしさが加わってきた、という程度の体つき、顔つきをしている。

だが何が似ていると言って、雰囲気が似てるんだ。
棋風も多少似通ってはいるが、普段から打っていればそうなるだろう。
雰囲気というのはもっとつかみ所のない・・・どこがどうとは言えないが、
例えば柳のように折れそうで折れない、妙な勝負強さや得体の知れなさや・・・
何かそんなもんだ。

二人は良い碁敵でもあるらしい。
棋力も拮抗していて、しかも二人して日本の若手の中では抜きん出ている。
加えて非常に仲も良さそうなので、やはり、何というか「双子ちゃん」なのだ。


「コーヒー入れようか?」

「え?部屋にありましたっけ。」

「豆を買ってきたんだ。」


これだけは譲れない。
オレはインスタントのコーヒーは好きではない。
かといっていちいちルームサービスを頼んでいては金が掛かってしようがないので
豆とフィルターはいつも持って来る事にしている。


「頂きます。」

「ブラックしかないが。」

「オレはいいです。」


慌てて断った進藤君が可笑しくて、少し笑いながら部屋の冷蔵庫から
オレンジジュースを取り出した。


「あ、すみません。」

「いやいや。」


香り立つ、カカオの香り。
二人はベッドに座り、当たり障りのない雑談をしながらそれぞれ飲み物を飲んだ。
しかしなかなか本題に入りそうにないのでオレはPCの電源を落とした。




・・・しばらく経っても二人はまだ「おまえ言えよ。」「キミこそ。」といった目配せをしている。
何だろう。何か言いにくいことがあるんだろうか。
ここは一つ水を向けるべきか。


「ところで今日は何の用だい?何か話があるんだろう?」

「ええ・・・まあ。」

「楊海さん!」

「何だ?」

「あのさ、いっこだけオレ達のお願い聞いてくれない?」

「どんなお願いだい?」

「聞いてくれる?」

「そりゃ内容によるさ。」


二人はう〜ん、と唸る。
何か、余程オレが首肯しかねるような願いなのか。
色々と予想を巡らせていると


「・・・えっとさ、こっち来て。」


進藤君が尻をずらして塔矢君との間を空け、子どもっぽい仕草で手招きをした。
それでオレは何となく小さい子の話を聞くような感じで塔矢君と進藤君の間に座り
視線の高さを進藤君に合わせる。


「で?」

「あのね。」


その時、全く予想外の事が起きた。
進藤君がオレの手をぐっと引いてベッドの上に倒し、上からのしかかって来たのだ。


「・・・何だい?」


真上にある顔からは先程の幼い表情が消えて、どこか狐のような
抜け目のない顔になっている。


「オレ達ねぇ・・・楊海さんをヤりたいの。」


気が付けば塔矢君の方もベッドの上に乗ってオレの腕を押さえている。
オレを、ヤりたい?
自分でも外国語の単語力はある方だと思うが、日本語の「てにをは」は
未だによく迷う。

しかし「ヤりたい」はこの状況から言って「姦りたい」でいいだろうか。
「殺りたい」だったら少し困るな。


「ええっと。具体的に言うと?」


オレが抵抗せずに冷静に返したせいか、進藤君は押さえつける手を離して
胸に頭を預けた。


「『あなたの尻に挿入したい』です。」


真顔で凄い事を言って、塔矢君も習うように身を擦り寄せて来る。
何か、いい香りがした。
少年特有の微かな汗の匂いに、石鹸か何かの香りが混ざって。

オレは何となく、両手で二人を抱き寄せた。
二人とも油断なく足でもオレの足を押さえているが、体重はベッドに逃がしているのか
さほど重くはない。

・・・さて。
挿入したい、とか言っていたな。
そんな事言われても困るが、まだ状況が掴みきれない以上何とも言えなかった。

もし言葉通りであれば色々と驚くべき事なんだろう。
しかし実際、さて自分はどうするという段になると、どうにも積極的な動きが思い付かない。
特に感情も湧かず「減るものじゃないしな」程度の考えしか浮かばないのだ。

それにこういう、大多数の大人が思うような常識が通用しなさそうな子ども達相手に
喧嘩なんかして変に逆恨みされたくもないし。

何よりオレは彼等が嫌いじゃなかった。
出来れば手荒な事をして怪我などさせたくない。

などとつらつらと考えていると。


「・・・驚かないんだね、楊海さん。」

「驚いてるよ。」

「そう?高永夏は、縛ったのに凄く暴れてたよ。」


韓国の高永夏に、こんな事をしたんだろうかこの子達は。
あのプライドの固まりのような「少年王」のその時の顔を見てみたかったような気もする。


「暴れても仕方ないしな。」

「・・・いいの?」

「う〜ん、別にいいんだけどね。」


まあ本当に構わないと言えば構わないのだが。


「明日は棋杯以外にも予定が詰まってるんだよね、またにしない?」

「・・・・・・。」

「それとも無理矢理する?」

「・・・・・・。」


二人は沈黙したままオレの腕の中にいた。
ぎゅ、とオレのシャツを強く握りしめたのはどちらの手だったのか・・・。

やがて塔矢君の方が先に起きあがって、ベッドの上で正座をした。


「・・・とは言っても二人掛かりでも難しそうですね。」

「まあ無理だろうね。」


多少体術の心得がある、というのは彼等には言っていないはずだが
少年は苦笑して、顔の横の髪を指で払った。
やがて進藤君の方も上半身を起こす。


「ったく。楊海さんてば普通に受け流すんだもんな〜。」


こちらは不機嫌そうに口を尖らせた。


「もっと驚いて欲しかったのかい?」

「うん。んで本気で抵抗してくれたらヤり甲斐もあったのに。」

「抵抗ねぇ。柄じゃないね。」


進藤君はやっとプッと吹き出し、座り直して尻ポケットから棒状の物を取りだした。


「こんなんまで用意したのに。」


刃の部分にカバーの掛かった、剃刀だった。





それからオレは起きあがり、子どもがこんなものを持っていては危ないと言って
進藤君から剃刀を取り上げ、PCの前に座り直して電源を入れた。


「ちぇ。やっぱり遊んでくれないの?」

「キミらで自給自足すればいいだろ。」

「じきゅう・・・?」


首を傾げながらも進藤君は仔猫が遊ぶように唐突に塔矢君にラリアットをかまし
そのまま押し倒した。


「そういえばさっきも双生と仰っていましたね。」


塔矢君は進藤君の行動に驚いたそぶりも見せず、身体を好きにさせながらも
冷静な声でこちらに話しかける。
聞き取られていたのか。


「ああ、すまんね。自分の中で勝手にあだ名を付ける癖があって。」

「ボク達は双子のようですか?」

「そうだな・・・似てるというか偶に二人だけで世界を作ってる事があるよ。」

「そうですか。マズいな。滅多に会わない人にまで分かるようでは。」

「いや、そういう関係だとは全く思わなかったがね。」


塔矢君の手首を押さえ、服を着たまま足の間に腰を入れて揺らしていた
進藤君がその時顔を上げた。


「だってぇ。コイツ女みたいな顔してるじゃん?性格がアレだけど。」

「アレって何だ。」

「いつからだい?」

「去年の北斗杯の前・・・塔矢の寝顔があんまり美人系だったから
 ちょっとだけ悪戯しようと思ったら、・・・わっ!」


突然塔矢君が進藤君を黙らせるように首を抱え、そのまま反転して
体勢を入れ替えた。


「や、塔矢!やめろよ!人前だぞ!」


耳を貸さずにシャツを捲り上げ、胸に口を付けながら素早い仕草でカチャカチャと
ベルトを外していく。


「痛い!」


急所を握って動きを封じながら服を剥ぎ、自分のシャツのボタンに指を掛けた。


「いや、楊海さん助けて!」


涙混じりにオレの方に手を差し伸べる進藤君の声には、
しかしながら明らかに嬌声が混ざっている。
オレは馬鹿らしくなって肩をすくめると、モニタに顔を向けてマウスを握った。


「・・・去年もこうやってね・・・進藤は最初からイイ反応を見せてくれましたよ。」


既に喘ぎになった進藤君の声に混ざった、くぐもった声。
もうこちらを向いてはいまい。
オレも画面の盤上に視線を当てたまま、口の端だけで笑った。

片や天真爛漫な天才少年、片や真面目一徹の秀才。
碁にだけ青春を捧げていて、性的な匂いが全くしない二人だと思っていたが。

人は見かけに拠らないものだな。
また一つ勉強になった。


そしてふと、自国選手の少年達を思い浮かべ・・・そうになったが、やはりやめた。








「ったく!何であんなトコで本気出すんだよ!」

「キミだって悦がっていたじゃないか。」

「う〜ん、まあ誰かに見られてると、つい、な。燃えちゃうけど。」

「だろう。」

「そうだ!来年も高永夏を縛り付けて今度はその前でヤッちゃおうか。」

「悪くないね。その後でボク達を忘れられない身体にしてやる。」

「んな事出来んのかよ〜。」

「まあね。経験あるから。」

「って、それ誰の事だよ。」

「キミ以外に誰がいる?」

「わぁ、ムカツク!力尽くだったくせに!永夏はああはいかないぞ。」

「そうか。今度は一筋縄でいかなかもな。」

「どうすっかなぁ。」


「まあ一年あるから。ゆっくり考えるよ。棋力を磨きながらね。」







−了−










※12万打踏んで下さったタマネギさんに捧げますリクエストSS。
 「ドッグファイト」は戦闘機の空中戦ですね。
 お互いに相手の尻を追いかけ回す所が犬の喧嘩に似ているから
 こういう名前がついたと聞いた気がします。
 いつかリバモノ書いたらつけようと思ってたんですが、ここまでリバまみれなんを
 書く日が来るとは。
 驚愕の(笑)リク内容は



一作のなかに 怒り狂いつつのヨンハ受・オマエもたいがい酔狂だな、の緒方受・
ベツにいいけどオレ明日仕事あんだよね、またにしない?の楊海受・
オレ様にのしかかろうとはいい根性だ。で、おまえ将棋は指せるんだろうな、の
加賀受があり、しかも彼らはオトコマエ。が、それはさしみのツマ。
メインはヒカアキヒカ。碁を打ってるとことか 碁の話してるとことか
碁の内容とか碁盤とか碁石とか碁笥とか棋譜とか、なんでも
いいけど碁道具か碁用語を小道具にからめてひとつお願いします、

と。 あたしが出されたら「ありません」なものを
お頼みしたいなあぁ〜とへけけけけけ、してたのに。
      <や、素直に読みたいんですよ?(笑)。

「碁はしょっぱなしくじったら ずっとそのヘマな棋譜を盤の上で
最後まで見てなきゃならねえだろ。将棋はちがう。マヌケなコトすりゃスパッと
とられる。それで、詰んだらしまいだ。いさぎいい。せいせいする。
な?碁なんかより将棋のほうが何倍もイイゼ?」なーんて言う加賀受。

みたいってばよーっ   
(あ、将棋と碁の違いの著作権ははつえさんに。勝手に書いてごめんにょ)

ちゃんとオトコの子で、まったくノーマルで、結構しっかりもので、
人生設計すらちゃんとあって、碁バカで、タイトル?とるよっで
でもそれ以外は明朗快活健全男子で、いうたらいづれ野郎テイストな子
なのに、ぶっとい手足は大きくなる印っとかなのに、
結構キャシャ系でそりゃうっとり美人系で「こいつが女だったらなーあーでも性格
アレだからなー(アレってなんだ?)」な塔矢に和モノなお道具つかわれて
いいようにされて驚天動地な野郎ピカ受け、しかもどうもそっちの
才能あるくさい とかどうだろう。 わっ目をおおいたいっっ

…それってアキラさんはどういうココロつもりなの。
昔はちんまかったこまかかった紅顔の美少年(…)だったヤツが
単にでかい図体で野放図に野郎をさらしているので ちょおっと
ヤっちゃおうかなーだったの。そいとも どっかでそういう
ことになじむ機会があったので ちょっとためしちゃおうかなー
女の子にひどいことしたらかわいそうだけど進藤なら壊れなさそう
だし、な若気のいたりなの。
いったいどういうつもりかわかりませんが なんか謎があるの?
「(煙草をくゆらせながら)進藤をコマシてこい(<誰よ)」
「イーー!(<ショッカーのお返事)」なの?そいとも
「すまない進藤 ボクだってこんなことはしたくないんだ。しかし
日中韓囲碁振興のためにはボクの碁打ち千人斬りが必要なんだ
やむを得ない 我慢してくれ」
「××××××××〜〜〜〜っっ」なの?
(<ありえねえ。しかも碁打ち千人斬りってコトバをあとから足したから
よけいこのひとがナニ考えてても不条理オチ、になっちゃったよ)

ヨンハとか スヨンとか 安太善とか 倉田とか 楊海とか 門脇とか
そおおおおゆうううひとがでてもいいんだけど〜〜〜(<伸ばすなよ)
でもやっぱヨンハか。だってヨンハが一番イキイキしてるっちゅうか
こう仇花?みたいな感じでさ。いいんですもん。

なんかおいしそうなもんとか 綺麗な植物とか花とか果物とか 少し古めかしい
室内とか箪笥とか猫とかなんかそーゆーのなんか出てきたら とても嬉しい。<潤いを
求めてるおりますようです


 マゾ冥利に尽きました(笑)
 いやこの中からチョイスとは言われてたんだけど、どれも美味しそうすぎて選べない・・・
 でもさすがに全部は無理なので、一話の中にどれだけ入れられるかに挑戦。
 「イーー!(<ショッカーのお返事)」や千人斬りなアキラさんは書けませんでした。
 他にも色々逃げてますけどね。アキラ攻めに謎も理由もないですし。
 潤いも足りなくてすみません。

 しかし受け様四人のキャラ設定は科白でしてて下さったので非常に楽だったし
 (イメージしておられたのと合ってるかどうかは置いておいて。)楽しかったです。

 ところで私の受けは今の所これが限界でした。
 ちゃんとした楊海さん受けも書きたいですねぇ。いつか。どこかで。

 ということでタマネギさん、キリ御申告&ナイスリクエストありがとうございました!






 すみません、頂いたコメントがまた面白すぎて(笑)
 いや他にも沢山愉快コメントがあったのですがこれだけは!


  それにしても リクしといて アレですけど、進藤と塔矢、
 ほんのこつファイターやわ。毀れそうってどのクチが〜。
 ヒトツ落とすと「次ィッ」と ばかりに。
 ( 武道? 武道なの? )

 その為ならネクタイも緩めましょう、娼妓の真似も「まかせておけ
 得意だ!」(とハナイキ荒くピカにいってのけそうな塔矢)。
 あげく 二人がかり(笑)悪ズルくてヒッキョウ〜。

 怒りアバレ狂うヨンハを制覇した後は小鬼子ズ
 「オレたちってすげえっ」「いい汗かいたな」
 「人間願ってれば叶うんだなあ」とか
 はきちがえた爽やかな会話をかわしてそうです。
 てか もっと黒いか。こいつら。このあたりから 
 人外魔境の住人。


 ありがとうございます(笑)





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