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口を塞げ オレの耳にもよく入ってくる噂だ。 仕方ないな〜、あいつ美形だもんな〜、と思う。 「どうした?進藤。」 「いや、あれ誰かなぁと思って。ほら、あそこで塔矢と話してる人。」 「ああ、院生の姉さんとかじゃない?」 「美人だな。」 「まあな。何、おまえ妬いてんの?」 「んな事ねーよ。」 「無理するなって。お兄さんが慰めてあげようっ!」 巫山戯て抱きついてきた和谷に、やーめろー!と喚いていると、塔矢がちらっとこちらを見た。 「お、ちょい!マジやめろって!塔矢が見てる!」 「関係ねーだろ?」 あるっつーの! アパートの部屋に戻ると、既に塔矢が部屋の中で待っていた。 オレは親にも渡していない合鍵を、塔矢にだけは渡している。 つまりオレたちには・・・そういう関係がある。 「あれ?早いな。オレが棋院出る時まだいたのに。」 「それから最速でここに来たんだ。キミが遅い。」 「いや、だってお前時間掛かるかも知んないと思ったから、伊角さんと和谷と・・・」 ドーナツ食いに行って、って言おうとしたら、塔矢の目が、怖かった。 「んだよ。」 「キミは・・・ボクの気も知らないで。」 「だーかーらぁ。男の友だちにまで妬くなっての。女ならともかく。」 「女?」 「お前だっていっつも、女の子としゃべったりメシ食いに行ったりするじゃん。」 「それこそ関係ないだろう!」 「関係なくねえさ!何で断らないんだよ!」 「食事くらい断ったら失礼だろう?」 ったく。これだから世間知らずは。 それが相手に期待を持たせるってのが分からないのか? というか、オレの気持ちは? 「だって・・・心配じゃんよ。お前がいつか女の子の方が良くなるんじゃないかって。」 塔矢は、怒らせていた目を急に和らげてオレに近づき、きゅ、と抱きしめた。 「そんな訳、ないじゃないか。ボクが女の子に、というかキミ以外の人に惹かれるなんて。」 「だって。お前モテるし。」 「それを言うなら。」 一旦顔を離してコツン、とおでこをぶつける。 「キミの方が心配だな。男にもてすぎ。」 「だから、そんなんじゃねえって。」 「分かってないな。ボクはキミがいつ他の男に持って行かれるかと 怖くて怖くて仕方ないのに。」 「変な事言うなよ〜。お前以外の奴なんて目じゃねえよ。」 「じゃあ、今からそれを証明してくれ・・・。」 そうして塔矢はオレを抱いたまま仰向けに体を倒した。 オレは反射的に足の間に体を入れ、塔矢の唇を探しながらシャツを引っぱり出す。 いつだってさ、こうやって流されちゃうんだ。 それがキモチいいんだけどね。 「本当に・・・気を付けてくれよ?」 手探りで袖口のボタンを掛けながら言い、上手く行かなかったのか手を持ち上げて 内腕を覗き込む。 そんな仕草一つが格好良くてさ、そんでまたオレを煽ってるって気が付いてるのかな? 「聞いてる?」 「え、何だっけ。」 「キミを狙ってる男に気を付けろって言った。」 「んな奴いねぇって。」 「いる!例えば・・・」 「例えば?」 「・・・和谷くんもそうだけど・・・緒方さんとか・・・。」 「はぁっ?!緒方先生?」 「あの人絶対キミを狙ってる!間違いない!」 「いや、ちょっと待てよ。」 よりによって緒方先生?あんな男っぽい人が? 思わず爆笑してしまう。 「何それー!有り得ねー!」 「笑うな!とにかく、特に緒方さんには絶対気をつけてくれ。 次にキミと緒方さんが一緒にいる所を見てしまったらボクは・・・。」 本当に恨みがましそうな顔をする塔矢が可愛くて、思わずまた抱きしめてしまう。 「分かった分かった。緒方先生には近づかないようにせいぜい気を付けるよ。」 「頼む。本当に。」 そんな会話があった何日か後の事だったんで、塔矢が伊角さんと歩いてるのを見たときは キレそうになったんだ。 オレには男に気を付けろってって、何で自分はそういう事するわけ? いや、普通に歩いたりしゃべったりしてるんなら気にしないよオレだって。 塔矢ほどシット深くないもんな。 でもな。 肩抱くのはやりすぎだろう!伊角さん! 伊角さんらしくない、とも思う。 だけどその時はもう、なーんも考えられなくて、オレはこっちに気付いていない二人に向かって 怒鳴りそうになった。 でもその直前に後ろから大きな手に口を塞がれた。 誰だっ!と思ったけどすぐに、その指の煙草の匂いと視界の隅の白い袖に 否応なしにその正体が分かる。 「・・・放って置け。」 左肩は掴まれて振り向くのを止められ、右から回した手で相変わらずオレの口を覆いながら 頭の上で声がする。 「今お前が行ったら邪魔だろう?」 「〜〜〜〜っ!」 邪魔したくて行くんだっての! 「お前はいつもアキラくんを独占しているんだからいいじゃないか。」 二人が連れだってエレベーターに乗ってから緒方先生はやっとオレを解放した。 「・・・独占なんて、する仲じゃねえよ。」 「なら余計に別に構わないだろう。伊角くんとアキラくんが何をしようと。」 「何って何するんだよ!」 「分かるだろう?」 オレの顎をぐっと掴み、その顔を近づけてくる。 そこでやっと塔矢が言っていた事を思い出した。 「あの、オレ、」 「分からないなら教えてやる。・・・こちらはこちらで楽しもう。」 「おが、おが、」 でーーっ!マジかよ! キモっ!オレアンタなんか抱きたく・・・ってもしかしてオレがされる方? いーやー! 塔矢にあんな事しといて言えた義理じゃねえかも知んないけど、 オレは自分が掘られるなんてまっぴらゴメンだ。 てか何でそういう回路でオレを見られるワケ?美人の塔矢ならまだしも。 っとと。んな場合じゃなくて。 伊角さんと塔矢が何をしようと、だって・・・? 「すんませんっ!」 言いざまにオレは緒方先生にアッパー頭突きをかまして、 ぐらりと揺れた体の行方も見ずに塔矢達が消えたエレベーターに向かってダッシュした。 確か四階までストレートで来てた・・・。 ちゃんとエレベーターの階数ボタン見てたもんね。偉い!オレ! と思って回りを見渡しても塔矢はおろか伊角さんも陰も形も見えないんだけど。 全部の部屋をウロウロ見て回った後、ポン、と手を打ってトイレに向かう。 っていや、二人がトイレにいたら不味いだろう! 大急ぎでトイレに向かい、勢いよく駆け込んだ。 「塔矢っ!」 ・・・そこには塔矢はいなくて、用足し中の伊角さんがびっくりした目でオレを見ていた。 「し、進藤、何だ?止まるじゃないか。」 「あ、いや、ごめん、じゃなくって、塔矢は?」 「塔矢?」 「さっき一緒にいたじゃん。」 「ああ、彼なら5階に行った。」 なんだ・・・。一安心。 でも、やっぱり肩抱いてたのは気に食わない。 ここは一つ釘を刺しておこう。 伊角さんが赤い顔をして終わるのをぼーっと待って、手を洗い終わるやいなや襟首を捕まえる。 「な、何だよ。」 「あのな、伊角さん。ちょっと話があるんだけど。」 「え?」 「さっきなんだけどさ、塔矢の肩抱いてただろ?」 「あ、うん。」 その時、廊下で人の話し声が近づいてきた。 このトイレに来るのか?ヤバい! 「ちょっと!」 「何なんだ、さっきから。」 「いいからこっち来て。」 伊角さんを個室に連れ込み、鍵を掛けてドアに押しつける。 「な、」 「しっ!」 手で口を押さえると、丁度二人連れらしいのがトイレに入って来た所だった。 『ははは。だから山本先生が扇子叩き出したらまずいんだって。』 『扇子囓りの座間先生とどっちの方が扇子に金使ってると思う?』 そしてちょろちょろ言う音。 狭い個室で伊角さんの体を自分の体で押さえ、口を塞いだまま外の気配を伺う。 やがて二人はまたどうでもいい話をしながら出て行った。 オレはホッと息を吐いて、伊角さんの口から手を離した。 「・・・ごめん。だって個室で話し声がしたら変だろ?」 「・・・ああ。」 「でね、さっきの続きだけど。」 「進藤。」 伊角さんはオレの言葉を遮ると、いきなり手を伸ばして、そしてオレを抱きしめた。 顔が変に赤い。 ただでさえ密着していた体が更に押しつけられる。 「何すんだよ!」 「進藤、進藤、」 譫言のように言いながら体を回転させて、今度はオレをトイレの壁に押しつける。 「だ、だからやめろって!どういうつもりなんだよ、伊角さん!」 「済まない進藤、本当はこんな状況で告白するつもりなんかなかったんだけど、」 ・・・こっ、 「こくはくっ?!」 「塔矢に触れば進藤が釣れるって教えて貰ったけれど、こんなに早く来てくれるなんて。」 「はぁ?誰がそんな事!ってか!」 「好きだ!・・・好きなんだ、進藤・・・。」 っえーーーっ!! 「ちょ、ちょっと待ってよ!オレ男だぜ?」 「知ってる。普通ならこんな気持ち、伝えないよ。」 「だったら、」 「でもおまえだってその男の塔矢に・・・。」 ・・・突っ込んでるけどさ。 「・・・その、体を許してるんだろう?」 「・・・・・・。」 微妙な表現に、微妙に頷きがたい。 「でもそんな事、関係ない。進藤、オレは本当におまえを、」 「だーかーらーっ!」 トイレの個室なんかで男に迫られたら、恐ろしいことこの上ない。 オレは全力で伊角さんを突き飛ばし、よろけた隙に鍵を開けて外に逃げようとした。 バタン! 勢いよく扉を開けたら丁度誰かが駆け込んで来て、お見合いしてしまった。 けどその相手ってのが。 「・・・こんな所にいたのか、進藤。」 ずれた眼鏡もそのままに、肩で息をしているのは。 「緒方さん・・・。」 げーっ!この人もヤバいじゃん! 緒方さんはそのままオレの胸をドン、と押し、また個室に戻した。 そして何と自分も入ってきて後ろでカチャ、と鍵を掛ける。 「緒方先生・・・。」 伊角さんも目を丸くしていた。 実際こんなとこに三人て。狭いってーの。 「ったく・・・。」 緒方さんは舌打ちをして、胸ポケットから煙草を取り出す。 「禁煙です。」 伊角さんの言葉に眉を顰めて煙草を戻した。 「あの・・・。」 「オレは塔矢アキラに接近しろと言っただろう。これはどういう事だ。」 「いえ、先生が仰った通りにすぐに進藤が来て、」 「ちっ。自分で自分の首を絞めたか。」 「どういう事ですか?」 「オマエが進藤から塔矢を引き離している間にこちらで進藤を頂くつもりだったが。」 「えっ。ひ、ひどい!」 「いきなりこんな所に連れ込んだら警戒するだろう。どうするんだ。」 「どうするって、別に・・・。」 「・・・ヤッちまうか。今ここで。」 「えええっ!」 最後の叫びは伊角さんとオレの両方だ。 二人の会話を呆然と聞いていたオレだけど、恐ろしい科白に頭がパニックを起こした。 な、な、アンタら、 「緒方先生、何を言ってるんですか!」 そうだそうだ!言ってやれ!伊角さん! 「このまま逃がしたら二度と近づけないぞ。」 「でも・・・。」 「既成事実を作っちまえば後はどうにでもなる。」 「・・・・・・。」 考え込み始めた伊角さんに、オレの膝はカクカクと笑い始めた。 「いや、いやだ!アンタら頭おかしいよ!」 立ちふさがった緒方先生をどかせて、鍵を開けようとするけどすぐにその腕を掴まれた。 「おい、押さえてろ。早くしないと人が来る。」 「は、はいっ。」 はいっ、じゃねえだろ伊角さん! でも混乱した表情で、言われた通りにオレの腕を掴む。 「やーめろーーーっ!!!」 「静かにしろ!」 緒方先生の方は暴れるオレを後ろから捕まえ、ベルトに手を伸ばして器用に外すと パンツとトランクスを一気に引き下ろし、オレの尻を剥きだした。冷てっ! 「アキラくんよりヨくしてやるから、大人しくしろ。」 また何か勘違いしっぱなしで尻を掴み、ぐいっと開く。 「いやだあっ!いや、やめてっ!」 「しっ!今誰かに来られたら困るのはオマエも同じだろう。 じっとしていればすぐに済む。」 済ませられたら困るんだって! でも、確かに男にトイレに連れ込まれて半ケツ曝してるのを人に見られたくはない。 かと言って、そんな、こんなの嫌だっ! どうしていいか分からなくて黙り込んだオレの尻をするっと撫で、 緒方さんは「いい子だ。」と言った。 「オマエにも後で味あわせてやるからな。」 「はぁ。」 呆然とした感じで答える伊角さんの、でも鼻息めっちゃ荒い! キモっ! 緒方さんの手が前に回ってオレのモノを掴み、萎えきってるのを軽く揉む。 塔矢以外の男に触られる日が来るなんて・・・。 でも今からされる事を思うと、怖くて怖くてとても感じることなんて出来ない。 無言で抗うけど、腕は押さえられてるし大事なとこ掴まれてるし、微かにしか動けなくて 全然だった。 しばらく遊んだ後緒方さんは諦めたらしく手を引いて、 自分で指を舐めたらしい・・・すぐに冷たい感触がオレの尻の間に・・・ああ・・・。 塔矢、ごめん。 オレ、オマエんとこに戻れるかどうか分かんない・・・。 その時。 コツ、コツ、と靴音が廊下を近づいてきた。 緒方さんもオレもびくっとして、動きを止める。 コツ、コツ・・・。 トイレに入ってきていよいよ大きくなった靴音はゆっくりと移動し、小用便器の前を通り過ぎて こっちに来た。 ヤバ・・・。 三人で目を見合わせて、息を潜める。 ここでオレが慌ててパンツ穿いたら遊んでた、で済むかも知れないけど、 今更無理だ!布が擦れる音するし。 コツ、コツ、コツ。 いよいよドアの前で靴音が止まる。 この板の向こうに、今誰かが・・・。 ・・・コン。 丁度緒方先生の真裏あたりでノックの音がした。 コンコン。 伊角さんは鼻息が漏れないように大きく口を開けて、目を閉じている。 緒方先生も額に汗をかいて、ドアの向こうの気配を伺っている。 ノックの主も、こちら側を伺っているみたいだった。 静かな便所に、何種類かの微かな呼吸音と、緊迫した空気が流れる。 やがて 「・・・誰か、入ってますか?」 ! この、押し殺した声は! 「と、」 開きかけた口を伊角さんが慌てて塞ぐけど頭を捻って逃げ、 「塔矢っ!」 「進藤?!」 叫んだ後に、ガンガンッ!とドアを叩く。 ってか殴ってるなこの音は。 「開けろっ!ここを開けろっ!」 「と、塔矢、たすけっ!」 慌ててオレを押さえようとする伊角さんと緒方さんの手をかいくぐり、 何とか今の状況を伝えようとする。 でも何も言わなくてもさっきのと中で暴れてるのだけで十分だ。 塔矢の気配はますます激しくなり、 「開けないのなら、」 ドンッ!ドンッ! ドアが激しく振動する。 体当たりしてるのか、キックかましてるのか。 「こっちにも考えがある!」 急に静かになったと思ったら、何か、向こう側から静かに強く押してるような、変な音が・・・。 オレまで怖くなって来た。 カタ、カタカタ、 ガンッ! ・・・何の音だよっ! そして。 「・・・おがっ、そっちのアンタも進藤を放っ、」 「うーわーーあーーーっ!」 突然思いもかけない上から降ってきた声。 あのつるっとしたドアをどうやってよじ登ったのか、天井とドアの間の隙間から 髪を振り乱して真っ赤になった塔矢の顔が、覗いていた。 オレと緒方先生と伊角さんは、開いた口が塞がらなかった。 結局その後緒方先生と伊角さんは観念してドアを開け、オレを解放してくれた。 そして塔矢にこんこんと説教をされ、レイプしようとしていた事をバラさない代わりに 二度とオレに手を出さないと約束させられたらしい。 そんな訳で「災い転じて福と為す」って言葉を塔矢に教えて貰ったんだけど、 塔矢の心配事、オレが他の男とどうにかなるんじゃないかなんて可能性は減ったと思う。 ところが塔矢の方と言えば、相変わらず女の子たちとの浅く広いお付き合いは続けていて それってどうなのって感じではあるんだけど。 でもあの日、トイレのドアを蹴飛ばしたり(後で見たらへこんでいた) ドアをよじ登ったり、なりふり構わず「囲碁界の貴公子」らしからぬ必死さで オレを助けてくれたのを思うと、多少いっか、なんてね。 それに万が一塔矢が女の子とどうにかなりそうになったら、相手の子に 「コイツ棋院のトイレのドアよじ登ってたんだぜ。」って教えてやろう。 −了− ※ 100000打踏んで下さいましたみぃさんに捧げまする。 リクエスト内容は @ ヒカル×アキラ A ヒカル、アイドル状態 B ヒカアキだけど、周りはアキヒカだと思っている。 G ヒカル自覚無し。 狙われてるのはアキラだと思いこんでて、牽制をかけるつもりが、危険な目にあう。 それをアキラに助けられるv 他の内容は内緒☆です(笑) 普通、攻めにもてるのは受けなんだけれども、攻めが攻めにもてるのが見たいなぁと 思ってたのですよ。 私的には、同姓にもてるのは攻め側だと思ってるんで。 それも受けにではなく、攻めに! 同感です!私も攻められる攻めって大好きですv と言うことで、今回モテモテ王国。 ヒカアキラブラブかどうかはちょっと自信なし・・・。 アキラさんがトイレの上から覗くのは「呪怨」のCMでもいいし、 「すごいよ!マサルさん」のマサルさん初登場の時のイメージでも。 こんなんで良かったかな・・・?(汗) みぃさん、御申告&素敵リクありがとうございました! | ||
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