裏盲日9
裏盲日9






夏になって、社と進藤がボクの家に泊まりに来た。


進藤が僕の部屋に来ず、手洗いのはす向かいの納戸に呼び出したときから
進藤の企みは薄々分かっていたような気がする。

納戸の扉を指一本分開けたままにしておいたのに気が付いた時に、
確信に変わったような気がする。

それでも僕は、それに気付かない振りをした。




彼が夜中に目を覚ますかどうか分からない。
人の気配のする部屋を、覗き見するタイプかどうかも分からない。

それでも、可能性を秘めた指一本分の隙間は、随分と僕を興奮させた。
勿論進藤をも。

いつもより、少し乱暴な扱いに、
いつもより、少し激しい突き上げに、

我ながら呻きとも喘ぎともつかない声が漏れてしまう。

否、漏れて「しまう」、んじゃない。
殺そうと思って殺せない声なんて、ない。



・・・その時足音と、手洗いの戸が開く音が、した。

ギッ・・・
古い廊下が音を立てる。


「声、立てるなよ・・・・。」


僅かに掠れた、進藤の声。
そんな事を言って、待っている癖に。

社を。

本気で静かにさせようとしているとは思えない抜き差しに
本気で押さえる気のない声が漏れる。


僕も進藤と一緒に、待っている・・・。

ギ・・・
さっきよりも近い音。

ボクの中の進藤が、膨れ上がった。






社なら、覗き見なんて真似はしないんじゃないかって思ってた。
だけど、気が付いて付かないフリが出来るとも思わなかった。

どうすっかな・・・・。

と思っていたら無造作にガラリと開けられる扉。

オレも少なからず驚いたが、呆けたような顔に思わず笑ってしまった。

やっぱさ、そう?
こういうのって人に見られちゃいけないものかな。
オレと塔矢がやってることは、・・・罪なのかな。

でも、オレは最初から見られていたんだよ。
オレの情事はいつも視線に晒されていた。

好きでもない奴に体を弄ばれながら
別の視線に苛まれていたんだよ。




「来いよ。」


オレが立ち上がると、オレの体に、勃ったままのモノに、
社の視線が浴びせられる。
肌の上を走る・・・・・・快、感。




部屋に引き込んで閉じこめると、社の注意は塔矢に向いた。
タオルケットを被った塔矢を守るようにその肩を抱く。

何だろう、この・・・興奮は。



アイツは・・・もういないアイツは・・・ただ手を拱いて・・・
扇子で顔を覆って・・・
オレを、見つめることしか出来なかった。

青く、痛ましい視線。



でも社は違う。
その気になればオレから塔矢を救い出すことも出来るだろう。

そして塔矢に欲情することも。

ホラ、ねえ、こんな風に・・・。




いつかこんな日が来るような気がしていた。


塔矢が社のモノをくわえる。
その光景に、オレはすごく興奮した。

社の目が細まる。
快感に歪む。

上手いだろ?塔矢は。
そりゃそうだよー。
オレが仕込んだんだから。

オレは満足して、塔矢の後ろに回り込む。


なあ社、目をつぶるなよ。
見てろよ、塔矢が穢れて行くのを。

見て。
柔らかいよ。
でも、いつもより締まるよ。
んで、キモチ良さそうだよ。

キモチいいよ?オレ。
汚れていくのは快感だよ?
見て。
犯されているオレを。


ああ、随分久しぶりだよ、オマエの視線。
懐かしいよ。
大好きだよ。
凄く感じるよ。

オマエは悔しい?
痛々しい?
歯がゆい?

でも、オマエも楽しんでるよな?


見て。

汚しているオレを見て。
穢されている、オレを見て。


もっともっと、オレを見て。


佐為。










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