まだ物語は始まらない 4 「で。何で、おまえたちがここにいるんだ?」 家に帰り着くと、門の内側でLとニアが膝を抱えて座り込んでいた。 「行く所がないので」 隣でニアもこくこくと頷いている。 「寒います……」 「未来へ帰れよ」 「それが」 「私消える、世界も消える、私戻る、世界も戻る、 でも戻る手段分からないます」 「はあ?」 「デスノートを処分したら、死神が迎えに来てくれると思ったんですが」 「思ったんですがって」 「あなたが変な事を言うから、あの場を去ってしまいましたが、 あの後迎えに来たのかも」 へえ。それは気の毒だね。 まあ、待ってればその内また迎えに来るんじゃない? 「はい。私もそう思いたいです。 つきましては、あなたの家で待たせて下さい」 「いつになるか分からないのに、無理だよ」 「おまえの由来?原因?で、こうなてるのに酷いです」 はぁ……身に覚えの無い事でおまえのせいだと言われても困る。 さっきの焚き火にしても、ごく常識的な事を言っただけなのに。 だが……今日、これまでにない程わくわくしたのも確かだ。 超常現象だけでなく、この二人。 Lもだが、ニアだって日本語はまだ不自由だが、非常に回転が速い。 正直今まで出会ったことがないレベルだし、このまま別れてしまって この先同レベルの人間と出会えるかどうか。 「……迎えが来なかった場合、この世界のLやニアとはどう折り合いをつけるの」 「ありがとうございます夜神くん」 Lは、心底嬉しそうに、顔を輝かせた。 パンダのマーチを与えたとき以来だ。 「ニアはともかく、私は、この世界のLの影武者として生きる事にします。 この先、『L』に何かないとも言い切れませんから」 「なる程ね。なら、この世界のLと連絡を取らなければならないね」 「はい。お願いできますか?」 「は?何で僕が?」 「Lは世界の切り札であり、世界中の犯罪組織の敵です。 ですから、顔も居場所もトップシークレットです。 Lに連絡を取れるのはワタリのみ、そのワタリに連絡出来るのも 限られた人間だけです」 「なら尚更、おまえが連絡しろよ」 「いいえ。どうせあなただって探すつもりだったんでしょう? 世界規模のかくれんぼです。退屈する暇もありません」 ……なるほど、この僕にも、キラのように、Lを探し出せと言う事だ。 ただし、殺す為ではなく、Lやニア、そしてこの僕に会わせる為。 僕を退屈させたら、また何かやらかすと考えているのか。 二人が僕の家に住みたいと言うのは、僕を監視するためかも知れないな。 そう思っても、高ぶる気持ちを、抑える事は出来なかった。 ばれないように、精一杯しかつめらしい顔を作る。 「父と母が、良いと言ったらだぞ」 「大丈夫です説得します」 「僕と妹の勉強の邪魔をするなよ」 「分からない所があったら言って下さい」 「僕はないから!」 きっと、両親は困惑するだろうな……。 僕も困惑していたが、Lはまだニヤニヤしていた。 「……楽しそうだね」 「はい。私、キラでない夜神くんと友だちになりたいと、ずっと思ってました」 「ああ、そう。同居したからと言って友だちになるかどうかは別だけど」 「L、carried awayだめです」 「別に調子に乗ってないよ」 「私、おまえの性格直すます。おまえ、私に日本語教えるます」 「日本語を教えてやるのは構わないけど、性格を直すとかは余計なお世話だから!」 居候を許した事を少し後悔しながら、僕はドアを開けた。 「ただいま」 おかえりー! 「ねえ母さん、僕、全国模試でまた一位だったんだ。 何か欲しい物はないかって、前から言ってくれてたよね?」 --了-- ※欲しい物は「友だち」ですかね。 神様ありがと〜う〜僕に〜友だちをくれ〜て〜♪ という事で、24000踏んで下さいました、そまりさんに捧げます。 リクエスト内容は 無理のあるトリップもので、デスノートを月が丁度拾った瞬間に、 既に月がキラだと分かっているL(原作ではそろそろ殺される)と ニア(その頃、独自の調査により月がキラだと確信…Lと会ったことがある)が 突如現れ、月の退屈さを当てた上で、月が大犯罪者になると指摘、 説得、その場でデスノートを燃やしてしまう。 そして、二人は行くところもないので月の家に居候したいと頼み、 月は混乱の中でも自分の人生が楽しくなる(話がテンポ良く続くし、合うから) 予感がして、一瞬両親の困惑が頭に浮かぶも承諾してしまう。 でした! ニアがどこから来たかと言うのは、ちょっとずらしてしまいました。 Lが死ぬ前に既に月がキラだと分かっていたとなると、色々と 齟齬が出て来てしまうので。 あと、「その場で燃やして」もちょっと無理でした(笑 しかし非常に楽しく書かせて頂きました。 何が楽しかったって、高校生月を書くのが。 基本白月でありながら、デスノートを拾ったら使っちゃうんですよね。 難しいけど楽しかったです。 ほとんど会話しかない話なので、Lと区別しやすくする為に ニアを片言キャラにしてしまいました。 でも、そのお陰で幸子さんが「可愛い〜v」とか気に入っちゃって 喜んで世話するんですよ。 彼らの同居生活や、どうやってLを探し出すか、 「L+ワタリ(+ワイミーズ)」vs「L月ニア(+総一郎)連合軍」なんてのも 面白そうですが、ひとまずこれにて。 ご申告、楽しく意外なリクエストありがとうございました!
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