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「その様子では、知らなかったようですね。
 デスノートを人間に拾われた死神は、その人間から離れられないそうです」


嘘、だろ?
リュークって奴が最期までキラに憑いていたのは、
自分がそうしたかったからじゃないのか?

俺は迷わず高く飛び上がった。
天井を抜け、建物を抜け、数十メートル羽ばたく。
だがそこにあった筈の死神界への帰り口はなく、それだけでなく
それ以上ニアのいる建物から遠ざかる事も出来なかった。

俺は一直線にニアの元へ戻る。


「そのノートを、返せ!」

「嫌です。強引に取り上げても、私が自分で所有権を捨てない限り
 私の持ち物です」

「!」


そんな……。


シドウ!!!


ここに居もしない死神を、思わず心の中で怒鳴りつける。
何故、そんな大事な事を言わない!
好きな人間を助ける為にとかそんな事より遥かに重要だろう!


「……だが、キラも最期には死神に名前を書かれた筈だ。
 今すぐ、おまえの名をデスノートに書いてノートを取り返してやる」

「その中途半端な知識はどこから持ってきたんです?
 リュークは、リューク自身のノートに夜神月の名を書いたんです。
 あなたは見た所他にノートを持っていないようですが」

「そのノートには、俺は書き込めないと?」


だとしたらマズい。
人間が生きていく為に食べるように、死神は人の余命を食うんだ。
その手段がなくなったとなると。

慌てて鏡を探す。
俺の、俺の死神としての寿命は一体、

使っていないモニタを見つけて自分の顔を映す。

金色の髪。大きな火傷の痕。

俺は、こんな顔だった、か……。
ニアも目つきが悪いと思ったが、俺も相当なもんだ。

黒いレザーのノースリーブ……金色の十字架。
普通の人間みたいな格好だな。
死神の胸に十字架とは、笑える。

……鏡面に映った残り寿命は、人間時間で約百年。
まあ、ニアがどんなに長生きしても、死後何とか取り上げて
ノートを使える、か。


だがそれまで、このニアと、ずっと過ごさなければならない……。

うんざりするが、死神界でニアの名は有名になってしまったようだから
わざわざその名前を書く奴もいないだろう。
つまり、恐らくこいつは天寿を全うしてしまう。


「なら、アフリカに行く、というのも本気か」

「はい。一人では無理ですが、あなたが付いていてくれるのなら何とかなります」

「おまえ……人をツアーコンダクター扱いするなよ」

「でも、私の命を狙っている輩をそのままにはしておけませんし」

「だからってわざわざ罠に掛かりに行くか?」


ニアは、またニヤリと笑った。
いや、そう見えるが、こいつの中では一番愛想の良い笑顔なのかも知れない。


「やはり、瞬時に私と同じ事を考えていますね。
 そんな人、キラが死んで以来、居ませんでした」

「ああ、そう」

「私、褒めてます」

「ってめえは!何でそう上から目線なんだ!」


一人で外も歩けない癖に!

……そうだ、こいつは、院の外に出た事がなかった。
遠足も常に欠席、勿論脱走もしない……、

何か、頭の中に湧き出すように、断片的な映像が浮かんでくる。
少しづつ、記憶が戻って来たのかも知れない。


「だが、監察医が黒となると、組織犯罪の線もあるぞ?」

「その辺は勿論、私を狙う動機も含めて出来るだけ下調べします」


……レンタカーで遭難した観光客。

ヘリから見ていた全員の前で死んだ。
その肺には砂が詰まっていた。

それはあり得ないから、どちらかが、あるいはどちらも嘘なのだ。
ヘリに乗っていた者がシロで、事件自体が捏造でないのなら
答えは一つ。

そいつの死因は、恐らく普通に衰弱か脱水だろう。
運悪くというか、救助ヘリを見た途端に張り詰めていた緊張の糸が切れたのか
ヘリの前で倒れて死んだ。

それを利用して、解剖の時に肺に砂を詰め、不可能死に仕立て上げたのは
監察医以外あり得ない。

そしてその動機が、世間を騒がせて楽しむ為でないのなら、

……ニアをおびき寄せる為としか思えない。

何故なら、「L」に対する依頼が早すぎる。
地元警察に十分捜査する暇も与えず、最新ニュースと同じスピードで
Lに依頼してくるなんて、普通はあり得ない。

この事件は「L」に任せ、現地に来させるべきだと強く主張した者がいる。
それが監察医なら話は早いが、グルになった別の人間となると
少しやっかいだな……。


「やっぱり、おまえが動くのは危なくないか?」

「大丈夫です。あなたと一緒なら、どこへでも行ける気がします」


そういう事を言っているんじゃないが。

この俺を使う気満々かよ。
絶対に一度は、空港かどこかで放置して困らせてやる……。

そう思っていると、ニアがどこかへ行くのか、億劫そうに立ち上がった。


「あれ?」

「……」

「お前、そんなにデカかったか?」

「私は逆に、あなたが低くなったような気がしました」


とは言え、まだ俺より目線は低いが。
背丈が殆ど変わらない。


「あれから三年経ってますからね、私も今やあなたより年上です」


小さいニア。
立っても座っても、いつも見下ろしていたニア。

それでもその視線は、いつも下に向けられていて、
こいつ以外誰も気づいていないけれど、本当は下の方が高みなんじゃないか、
俺は見下ろしているつもりが実は見上げて居るんじゃないか、
そんな事を思わされて苛々した。

だが、こうして視線の高さを合わせてみると、
逆にどちらが高いかなんて、気にならなくなって来る。

年下だと思えばこそ人を食った態度に腹も立ったが、
そうでないとなるとさほどでもないのだから、俺も我ながら単純だ。


……意外と。

こいつと居れば、退屈しないかも知れないな、と思い始めた。
コイツにデスノートを拾わせたのは、案外悪い選択じゃなかったかも知れない。

俺たちは、一緒にいた方が、互いの力を発揮できるのかも知れない。

どちらが上とか下とかじゃなく、相手に出来ない事を補い合える、
そう思えば、「死神」と「人間」という立場の違いは、
俺たちの出会い方の中ではベストなんじゃないか?

なんてな。


なあ、あんたもそう思わないか?




……L。






--了--






※12000打踏んでくださいました、そまりさんに捧げます。
 リクエスト内容は


"原作通りに死んだメロが、死後死神になって

(レムが死んだりジェラスが死んだりで、死神が少なくなった為、
最近死んだやつの中でいい奴いるー?ってなった死神大王に
シドウが、"めっちゃ怖いやついるー"って進言して例外的に決まった

いきさつはシドウから、生前の自分や状況についてはシドウを通じてリュークから、
紆余曲折の後、ある程度聞いた)

生前の記憶はないが因縁はあるらしいし
とにかく暇なので、取り敢えずニア(と、リュークが言っていた)の目の前に
メロの持つ白いデスノートを落として、硬直するニアとLと月…。

結局、一般人に渡されるのは危険すぎるので、話し合った結果ニアが妥当と考え、
ニアが所有権を持つことに ーメロと対面ー??

…複雑すぎて絶句するニア(でも嬉しい)と月と、少しの応答の間に死神になっても
性格と頭の回転が変わっていないことに気付き、面白く感じているL"


※メロのビジュアルは、メロが思うかっこいい感じの皮服とか適当に。
顔はヤケド痕のある時の顔。眼は黒。髪色、髪質は変わらず。
パッと見、人と大差ないが、黒い爪は死神っぽく尖ってて、背中には焦げた天使の羽が(mihaelだし)ある。

※あくまでもメインは、 2人の微妙だったもやもや関係がなくなって、
何となく執着してた生前のメロへの気持ちがスッキリした、
思春期(遅れ気味)の青い(比較的)ニア です\(^o^)/


出来れば横文字シリーズで、との事でしたが無理でした。
横文字の可愛い(?)ニアよりちょっと大人っぽいというか
原作寄りの無表情キャラにしてみたつもりですが如何でしょう。

というか今リクを読み直してみたら、スッキリしてるのは
ニアよりむしろメロって感じですね。
でもニアもこの後変に行動的になりそうです。

二人が知恵比べ的な事をして、「やっぱりメロだー!」と喜ぶニアを
書きたかったので、ミステリにありがちそうな事件を捏造してみました。

もっと難しい、本当にこの二人以外は答えに辿り着けないような事を
考えたかったんですが、私の頭では。

メロは書いていて楽しかったです。

ご申告&素敵リクエスト、ありがとうございました!







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