All Night Long 5 絶対に楊海達と会わないように裏口から出して貰い、タクシーを広う。 「どうする?念の為にもう一泊していく?」 「楊海達の飛行機は何時発ですか?」 「多分これ」 夜神が運航表から、16時台の北京行きのエアチャイナを指差した。 「なら16時以降に空港に着けばはち会わせることはありません」 「まあね。僕達は、一応19時の便を予約してある」 「グッジョブです」 普通に会話をしているようだが、夜神が少し緊張しているのを感じる。 「最後、写真撮られたけど大丈夫かな? 自分だけ上手く逃げやがって」 「大丈夫ですよ。顔半分も映ってませんし、ピントもずらしました。 例えデスノートの所持者に見られても、あなただけは殺せないでしょう」 「……まあ、それくらいならいいけど……」 それからしばらく黙っていたが、「そうだ」と言って、運転手に 「そこのドラッグストアで駐めて下さい」 と頼む。 そこで鋏を買い、近くの店のトイレで器用に自分で散髪を始めた。 私に他の客が来ないように見張らせて、シャキシャキと要領よく切っていく。 「上手いですね」 「昔から器用だと言われるよ」 「昨日の理髪店に行けば良かったのでは?」 「もう出来るだけ顔は曝したくないし」 切った髪はトイレに流し、半乾きの髪を手櫛で整える。 まるで、自分の表面に貼り付いた永夏の面影を跡形もなく捨て去りたいかのように。 カットは中々上手く行っていて、まるで昔に戻ったようだった。 「ああ……学生時代のあなたのようです」 「うん、ずっとこの髪型だったから、やっぱりこの方が落ち着く」 「でも成田からアジトに着くまで、絶対に知り合いに会わないようにしないと」 「サングラスをして帽子でも被っていくよ」 まるで。 ただの友人のような会話だ。 とても親しげで、とても他人。 私たちの間には、「知遇」以外の何物も無い。 そう思ってしまいそうな程。 再びタクシーを拾い、走り出すと夜神はやはり黙り込んだ。 「月くん」 「ん?」 「言いたい事があれば、今言いませんか?」 夜神は少し考えた後、 「別に」 と窓の外に目を遣った。 「怒ってます?」 「何が」 「私と、永夏との事」 「……別に」 「では、嫉妬してます?」 夜神は心底鬱陶しそうに、横目で私を睨む。 「正直、あなたがそんなに反応してくれるとは思いませんでした。 本当に永夏と私の事はどうでもいいのかと」 「……だから。そんな事は気にしないって言ってるだろ」 「そんな顔で言われても。 本当に気にしていないのなら、いつも通り機嫌のいい顔で甘えて下さい」 「はあ?誰がおまえに甘えたんだよ!」 だが、すぐに思い直したように、唇を噛んだ。 私は、そんな夜神を暫く眺める事にした。 昨夜は永夏を寝かさず、早碁を何局も打った。 着衣を賭けて。 私は手加減せず、永夏が眠そうなのにも気付かない振りをして、全ての対局に勝った。 勿論、ちょっと夜神に誤解をさせたいと。 私の言葉尻にまんまと乗って永夏と自分と私の3Pを想像していた夜神を揶揄ってやろうと思っただけだったのだが。 彼は本当に、私が永夏と寝たと思って怒っているのだろうか? それとも、そんな事はどちらでも良くて、ただ私を喜ばせる為に嫉妬している演技をしているのだろうか。 あるいは……他に何か、もっと大掛かりな企みをしている? まあ、何にせよ。 彼が私から逃れる事は出来ない。 この世にいる限りは。だが。 --了-- ※お読み頂いてありがとうございました! 13000打リクエストです。ちさとさん大変お待たせして申し訳ありませんでした……! 以下、リクエスト内容です。 横文字シリーズとヒカ碁コラボで舞台は韓国です ある日ネット碁でヒカルと月が対局していたところある相談をされます 高永夏の周辺で不審死が相次いでいて、高永夏も命を狙われているかもしれない助けてほしいと そこで月逹は 中韓合同囲碁イベントに潜入捜査で高永夏に近づこうとするがそこに中国に留学していた伊角さんと和谷、そして楊海さん逹に出会う。 そしてイベントの帰り道、高永夏たちと飲みに出掛けたところ高永夏が銃で狙われて…!! 高永夏の出世は複雑で遺産相続争いに巻き込まれているみたいな 展開が韓国ドラマみたいなかんじでお願いします。 またまた凝ったリクエストありがとうございます。 もうね、全てが難しい! 前回のヒカ碁コラボで結構ヒカ碁出し尽くしていたので取りかかるのに時間が掛かってしまいました、申し訳なし。 まず、前回と同じく登場人物が多いお話はやはり難しいですね。 それぞれまた好きな人達なのでおざなりにしづらいし。 伊角さんと和谷の、取って付けた感! でも久しぶりに楊海さんや永夏を書けて楽しかったです。 しかし、私、韓国ドラマ見た事ない……!どんな感じ? 韓国ドラマが好きな友人に聞いて見ましたが、話を総合してみると、日本のドラマより波瀾万丈らしい、という事しか分かりませんでした。 何とか波瀾万丈感を出そうと思ったのですが、気付いたらいつもどおりこぢんまりと纏まっていました……ごめんなさい。 こんなんで良かったとですか? ちさとさん、面白いリクエストありがとうございました!
|