藪の中 4 【ニアの話】 それから数日、我々は垂れ絹に閉じ込められた天蓋の中で過ごしました。 今でも鮮明に思い出せます。 あの、狭くて爛れた空間。 宮部分には、開きっぱなしの私のノートPC、潤滑剤の瓶、 避妊具の入った箱、ティッシュ。が乱雑に散らばり。 咽せるような精液の臭い。 獣の臭い。 私達は、人間の知性も、野生動物の運動能力も持たない、 蝸牛か何かのようにべたべたと、ただ交わり続けていました。 今思っても不思議です。 私の人生の中に、あんな期間があった事が。 夜神も私も、最初は声を殺していましたが、お互いの喘ぎ声が 相手を刺激する事に気付いてからは、敢えて声で快感を訴え合いました。 終わった後、緞帳を開けると寝台横に食事がそっと置いてあって 多少気不味い思いをした事もありますが。 私達はどんな恋人も及ばないほど濃密な時間を共有し、 けれども心は月と火星ほど離れていた事でしょう。 Lも、こんな体験をしたのでしょうか?
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