Guiniol 8 「……分かったよ、ステファン。 君に手を出したのは、申し訳ないが自分の意志ではないのは本当だ」 「……」 そう。 あの時の私は、初代Lのギニョールだった。 だが。 「だが私は、一度深い関係になった相手は生涯大事にするよ。相手が逃げ出さない限りね」 「……」 ジェバンニが、まだぐずぐずと泣いている。 シャツが濡れる。 やはり代わりの服を買うべきか、しかし日本の既製品ではサイズが。 「私は私で、こちらの方が遊ばれているのかと思った」 「そんな、事、ありません!」 「ああ。こんなおじさんを、泣くほど想ってくれるだなんて思ってもいなかったから」 遠くから。 ここから見ると無音で、まるで無声映画のように、夜神の部屋が燃える。 壁が崩れ落ちる。 そこに、漸く辿り着いた消防車が激しく放水する。 「待っていてくれ。今度は私が追いかける。本名も教えて貰った事だしな」 「は……い……」 それで私達のキラ事件は、本当に終わった。 その翌週、ジェバンニは帰国した。 当然ながらお互い涙など流さすビジネスライクに別れた。 私もその後ニアをイギリスに送ってから帰国したが、新しい任務に就いたり何やかにやで一年ほど全く身動きが取れなかった。 丸一年経ってようやく生活に余裕が出て来た頃、懐かしい日本で大地震があり、志願して現地に駆けつける事になる。 日本語を話せる米国人ボランティアというのは貴重らしく、大変重宝された。 この国に来た甲斐があったという物だ。 初夏になり、一段落付いて帰国の途につく。 飛行機に乗る前に何気なく夜神月の家があった場所を見に行ってみたが、新しい家が建っていた。 ネームプレートは「夜神」ではなかった。 火事になったから家を壊して土地を売ったのだろうが、そうでなければ引き払う時に小火を出して夜神月が訝しまれていただろう。 家をそのまま置いておけば、あの大地震で恐らく夜神の引き出しから出火していただろう。 地震の混乱の中、消防車が来るのも遅れただろうから、全焼を免れないどころか、この辺り一帯に類焼した恐れもある。 無人の家とは言え、放火をした事に心が痛んでいたが。 こうなってみればあれはあれで良かったのかも知れないと、少し気が軽くなる。 解体前、粧裕はあの夥しいぬいぐるみを少しでも持ち出せただろうか。 夜神の母は、オブツダンを移動出来ただろうか。 想いを成し遂げて。 この世に拠り所を失って。 ……Lと夜神月の魂は、連れ立ってあの世へ向かっただろうか? 「……さて」 長らく待たせたが……彼はまだ待ってくれているだろうか。 まあ私の事を忘れていたら強引に思い出させるまでだが。 「覚悟を決めて待っていろよ、ステファン・ラウド」 私はシャツの袖をたくし上げた。 --了-- ※104000打を踏んで下さいましたカヌさんに捧げます。 レスジェバという事で、全く意識した事がなかったCPなのですがそこが面白かったです! カヌさんの思われるレスター、ジェバンニ、二人の関係とかを色々書いて下さって洗脳された(笑) リクエストは、メールで仰っていた内容からでしたが掲載は恥ずかしいと仰っていたので箇条書きで。 ・セックス ・レスター→ジェバンニ ・お互い本名を知らない方が好き ・時間軸は原作添いでキラ事件解決後 ・キラ事件の時に意識し始めて解散する頃お互い気付いてホモに ・レスターの包容力とジェバンニの可憐さの純愛アダルティーなお話。 かなり省略しましたがレスジェバへの熱い想い、しかと受け取りました! と言いながら、ホモにする為に原作から受ける印象を少し曲げてしまいました……。 ジェバンニは真面目で出来る人、そして一途、というイメージだったんですが、一途を通り越して情けなくなってしまった。 一応最初の方は、出来すぎて少々可愛くない部下、くらいのつもりで書いていたのですが。 あと、ついL月要素も入れてしまいました。 やはりキラ事件の中心にいるのはこの二人で、それ以外の人は彼等の周囲を回る衛星のように、多かれ少なかれ彼等の影響を受けていると思うんですね。 というような事も今回再認識しました。 まあ書きやすい二人という手癖もあるのですが。 いつもは一生懸命賢そうな二人にしようと意識しているのですが、今回はLや月程は賢くない、でも馬鹿でもない二人、という事で、これが意外と難しかったです。 でも、過去作との重複を全く気にせず新鮮な気持ちで書けたのは久しぶりで、とても楽しかったです! カヌさん、目新しいリクをありがとうございました!
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