初恋 31
初恋 31








「ワタリ。次のインターで降りて下さい」

「しかし……」

「計画は中止です。夜神月くんはキラではありません」

「……」


運転手は返事をしなかったが、次にインターが見えた所でウィンカーを出した。

いきなり僕はキラじゃないだなんて。
次は、どんな計略なんだ……?

僕はただぼんやりと、下道の景色を眺める。


「夜神くんがキラなら、気持ちが無くても私に付き合い
 始末する、あるいは本名を知る事の出来る隙を窺うでしょう」

「……」

「でも、夜神くんは本当に私を愛してくれています。
 キラではあり得ません」


ははっ。
何を馬鹿な事を言ってやがる。

僕は、キラだ。

口に出して認めてはいないが、知ってるんだろ?


「その証拠に、不安定な小舟で目隠しをした隙だらけの私に
 一片の殺意すら向けなかった」


……それは。
それは。


「夜神くん。一度しか言わないので、心して聞いて下さい」


流河はシートの上で膝を抱えたまま、こちらを向き直って
真っ直ぐに僕の目を見つめた。

そう言えばリムジンの後部座席なのに、シートベルトなんかしている。
こいつは本来、相当生き意地が汚いというか命に対して用心深いんだな、
まあ「世界の切り札」としては当たり前か、などと僕は頭の隅で考える。


「私、気が変わりました」

「?」

「やはりあなたは、キラではない、と確信しました」


何……だって……?


「ただその根拠は、あなたが私を……Lを、愛したというその一点だけです」

「……」

「あなたがキラなら、Lを愛する筈が無い。
 私の誘惑を全く意に介さないか、あるいは乗った振りをしても
 何とか私の本名か弱点を探ろうとするだけでしょう」

「……でも、さっきまで、」

「……」


今度は流河が黙り込む。
助け船を出すように、運転手が口を開いた。


「L。どこへ向かいますか?捜査本部に戻りますか?」

「いや……拠点Bに頼む」


そう言って、僕が何も訊いていないのに、


「万が一に備えて、首都圏に三カ所ほど押さえてあるアジトがあるんです」


と、早口に言った。


「そして、あなたが本気で私を愛していると断じた根拠は……
 その涙、です」

「いや、」

「という事にしておいて下さい」


何だそれ……涙も止まる。


「なので、どうか私を愛している事を認めて下さい。
 そして私を愛し続けて下さい」

「……」

「もしかして、私の頭がおかしくなったのかと思ってます?」

「ああ」

「でも、条件を飲まなければあなたは終わりだと言うのは、」

「理解してる」


流河は無表情のままだったが……心の中では、教会の入り口で
語り合っていた時のように、相好を崩しているのがありありと分かった。


「流河」

「はい」

「違っていたら申し訳ないけど、僕の事、愛してるのか?」

「まさか!」


流河は大袈裟に頭を仰け反らせた。


「先程も言ったように、『L』には、感情はありません。
 機械的に、ただ有り得る選択肢の中で最善の物を選ぶ。
 それだけです」

「そう。そういう事に、しておいてやるよ」


シートベルトを外してまで、僕を強く強く抱きしめている事にも
言及しないでおいてやるよ。


「夜神くんこそ、『Liebe』なんてドイツ語、良く知ってましたね?」


今朝、『Ich liebe dich』と言った時の事か。
我ながらどうかしていたし、今となってはこっ恥ずかしいが、
まるで遙か過去の出来事のようだ。


「水兵リーベ、僕の船……ってね」

「何ですか?それ。何かの呪文ですか?」

「さすがのLも、知らないか」


思わず笑ってしまったが、流河は不機嫌そうに爪を噛んだ。


「教えて下さい」

「良いよ。おまえが日本で育ったという可能性が消えただけで痛快だし」

「……」

「ある記号表の、日本人に馴染み深い覚え方」


流河は二秒程宙を見上げた後、「ああ、」と頷いた。
さすが、回転が速いな。


「水素、ヘリウム、リチウム、ベリウム、ですか」

「そういう事。英語圏ではどうやって覚えるんだ?」

「一般的なのは、.Harpies Heal. Little Bed Bugs Can Not Ovulate For……
 ですね。意味の無さではどっこいです」

「そうか。ついでに、昨夜言っていたドイツ語の意味も教えてくれよ。
 本当は、愛の言葉なんかじゃないんだろ?」


鎌を掛けただけだが、流河はニヤリと笑った。


「Wenn auf der Erde die Liebe herrschte, waren alle Gesetze entbehrlich.
 ですね」

「そう」

「満更愛が関係無いとも言えません。
 あなたと私が、共存して生きて行ける世界ですよ」




    “愛が地球を統治すれば、法律は必要ない”






--了--






82000打踏んでくださいました、さこさんに捧げます!
リクエスト内容は、



キャンパスラブ、純愛ラブ路線で東応大で展開された探偵兼業L(もとい竜崎)と
犯罪者兼業月のラブストーリーをお願いさせて頂ければと存じます。
(更に願わねば、年齢、身体能力..設定を原作よりに、ハッピーエンドでお願いいたします)


でした!時間がかかってごめんなさい。
原作寄りで書き始めて、途中で「これはパラレル向け?」と
気付いたりして、変な所で迷走していました。

それにしても、さこさんのご考察がなんとも萌えるんですよ!
うんうん、二人とも人より満たされているのに、どこか渇いた人達ですよね〜。

その乾きを癒やせるのはお互いだけだったりするのではないかと
原作を見ても思ったりする訳ですが、探偵と犯罪者の間の壁は高くて切ない。

と、この辺りでイメージに苦慮して、リク主さんにヘルプ要請を出しました。
そのお返事が、



(※Bad Romance を歌う大学男子グループの動画と共に) 大学男子が一緒にバカをやって、変なことを一緒にやるのが何か楽しいな、と感じました。


実際Lとライトの性格から考えると、同窓と一緒にバカ面白いことをやるのが、ありえないけど、二人には通じる、分り合える所があるので、犯罪学のゼミで論争になったり、一緒に林道の間に馬を乗ったり(スピードを競ったり)、二人で小船をこいてる最中にLがライトに迫ったりとか、イギリスのお城みたいな校舎で二人が天井ついてるベットがある寝室でルームメートとか、見れたらと思いました。

また、ライトがドキとしたシーンとして、リューザキが多言語を使って犯罪学教授と案件について話す場面に入れればと願います(ドイツ語の法律専門用語とか。。Prisoner of conscienceについてとか※良心から犯罪を犯した犯罪者、例えば国家の歪んだ農業政策に反対するため政府部門に爆弾と警告書を送る)。

何となく、ライトがモーリス[Maurice 1987年製作のイギリス映画]のクライブに似ている所があると感じます。
そしてLがペドロ・アルモドバル tie me up tie me downの主役みたいに攻め攻めしく、ライトの意思などをお構いなしで一夜の乱暴でライトが開発されたというか、もともと隠れゲイであることをライトに自認させられずにいられないとか、、。

お触りについてですが、それは勿論是非ともありえないほどエロくお願いさせて頂ければと存じます。

出てくるシーンとして、深い霧につつまれるお城か校舎、湖岸、林道が出てくることをお願いしたいと思います。

まあ、以上の設定では、東大にありえないでしょうが、何せ東応大ですので、豪華な校舎があっても、避暑地で第二校舎があってもおかしくないということで。


(笑)これで一気におバカ大学生路線に決定しました。
Lと月にしては頭の悪そうな言動も多いですが、そこは開き直る方向で。
ゼミの人達は皆癖のない良い人達です。
エロは中途半端に変態プレイです。
 
あと、Lの心情は細かく描写出来ませんでしたが、リク内容でフォローとさせて下さい。(ひどい!)

色々詰め込みすぎて変な感じになっていないか、ちょっと心配ですが
こんなんで如何でしょう?
さこさん、楽しいリクエストありがとうございました! 

 

(最後、後部座席のシートベルト着用義務は調べたら2008年からでした。
 ですので月はシートベルトしてません。時の流れを感じる〜) 







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