人形の家 「美しいといへば、あなたのご氣性は本當に美しい」2 「もしもーし!定期検診です!」 突然の声に二人とも驚いて入り口の方を見ると、そこには ライダースジャケットのメロが居た。 「あれ?ヘリの音、しなかったけど……」 「道の突き当たりまでバイクで来て、そこから歩いて来た」 「それはご苦労様でした」 「っつーか、明るい内からイチャイチャすんなよ男同士で」 「イチャイチャなんかしてない!」 「個人の嗜好に口を出さないで下さい」 メロは眉を上げた後、大股で中に入ってきて、テーブルの上に 持ってきたトランクを乱暴に置いて開き、中から聴診器を取りだした。 Lと僕の間に割り込み、無造作にシャツを捲り上げて、胸に当てる。 「その後どう?ライト。発熱や麻痺は?」 「特にないよ」 「そう。じゃ、ちょっと患部見せて」 僕が横向きに座ると、首の後ろの髪を持ち上げてガーゼを剥がし、 項に顔を近づける。 視界の隅でLが顔を顰めていた。 「メロ」 「なんだよ」 「近いです」 「何が」 「ライトくんに」 「何言ってんだよ。化膿はしてないな。次の週末抜糸ね」 「もう抜糸できるでしょう?今日して下さい」 「なんか来て欲しくなさそうだな。 まあ、脱毛があるからあと何回かは絶対来るけどな!」 「はぁ……」 脱毛って……髭か。 膣形成のインパクトが強くて聞き流していたが、本人の意志を無視して そんな事をするのも大概だな。 「施術の助手にマットを連れてきても良い?」 「……というか、私の所にアルバイトに来るのは内密にするよう言いましたよね?」 「マットにしか言ってない」 「もう言ったんですか……」 掛け合いをしながらもメロは手早く消毒を済ませ、ガーゼを貼り直した。 「じゃあ、あと二、三日は無理しないようにな、ライト」 「ああ」 「それから……俺がこの間言った事は気にするなよ?」 「……」 Lが僕に夢中だから面白くない、ムカつく、というやつか。 僕のせいではないし、全く気にしていないが。 ……いや、僕が最初に誘惑したんだから……僕のせいか。 「メロ……」 「いくら何でも、Lを取られて本気で怒るほどガキじゃないぜ。 俺は別にライトが嫌いって訳じゃ無い」 「それは……、どうも」 「あんたが何者か知らないが、Lが選ぶに相応しい頭脳と器を持ってる事を期待するよ。 少なくとも美人ではあるしな」 「……」 『三角関係……か?』 ぼそっと呟くリュークを、Lと同時に思い切り見上げてしまった。 傍から見れば、かなり異常な光景だったのだろう、 Lと僕に何が起こったのかと、ギョッと目を見開くメロ。 それを見てLと僕は、腹が捩れる程笑ってしまった。 --了-- ※乙女な月。 お読み頂いてありがとうございました!
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