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086:肩越し こんな夢を見た。 ある日町外れに不思議な男がやって来た。 ボク達の町には鼠が多く、食料を食い荒らされてみんな困っていたが、 その男がそれを全部退治してくれると言うのだ。 約束の日から、本当に鼠はいなくなった。 誰かが夜中にこっそり見ていたら、その男が笛を吹きながら歩いて行き、 その音に釣られるように町中の鼠が着いていってしまったと言っていた。 あ、これはハーメルンの笛吹き男だ、と夢の中でボクは思った。 鼠達は、男の笛の音に抗えず、川かどこかへ沈められてしまったのだろう。 だが、町長は、約束を違えた。 ・・・イケナイ・・・ 本当に男が退治してくれたのかどうか分からないと。 ・・・イケナイ。 金を払えないと。 イケナイ! その次の夜、ボクは何か、とても美しい音に目が覚めて、夢うつつのまま寝台から起き出した。 裸足で部屋から飛び出し、寝間着のままに表に出て、その音色を追う。 通りには件の男がいて、笛を吹きながら非常にゆっくりと、歩を進めていた。 そのすぐ後ろを、進藤が歩いている・・・。 はっと我に返る。 ダメだ!ダメだ! その男に着いていったら、きっと破滅する。 もう、この町には戻れない。 進藤! 行くな! 進藤・・・! だが、そう思うボクの足すら止まらず、笛吹き男を追う進藤に並ぶように、 足早に、駆ける。 気が付けば他にも子ども達がいて、進藤の後ろに付き従っている。 ボクの後ろにも沢山着いて来ていた。 ダメだ。 あの町から、子ども達がいなくなる。 ダメだ。 破滅する。 ・・・しかし、ふと気が付けば、周りにいるのは子ども達だけではなかった。 ボクより年上の棋士達。 北斗杯で戦った選手達。 倉田さん・・・楊海さん・・・安さん・・・ 煙草をくわえたままの緒方さんもいる。 そして、あの腕組みをした和装の男性は・・・お父さん。 ・・・・・・ ・・・・・・はは。そうか。 そうなのか。 みんなで行こう。 あの町は、空っぽになる。 みんなで笛吹き男に着いていこう。 何処へ行くか分からないけれど。 それは遠い道のりかも知れないけれど。 笛吹き男の行こうとしている所に行ってみよう。 先頭を行く笛吹き男は相変わらずゆったりと歩をすすめ、 真っ白い狩衣の袖に風をはらませていた。(何故か和風のイメージだ) そして、優雅に構えた篠笛から妙なる調べを奏で続ける。 一体誰なんだろうと思った途端にボクの心を読んだように、 長い黒髪を翻して肩越しに振り返り、 振り返り。 −了− ※何回か書きましたが、アニメの最初期のOPの、篠笛を吹いている佐為ちゃん。 月岡芳年の絵が元絵だと思うんですね。 非常に優美なイメージで、大好きです。 佐為のいい人なんだか怖い人なんだか分からない感じが、パイドパイパー。 |
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