074:合法ドラッグ
074:合法ドラッグ









オレが事務の人に、出来るだけ塔矢と同じ部屋にしてくれと頼んであるので、
今回のイベントでも同室だった。

地方のホテルで囲碁教室の後、部屋に戻るとその塔矢が茶を入れてくれて、
少しだけ対局の話をして並べられた布団に入る。

それから隣の布団に潜り込んで向こうを向いているのに後ろから抱きつくと、
居心地悪そうに身じろぎをした。


「塔矢・・・。」


耳元に囁く。


「・・・やめてくれ。」

「どうして?」

「それはこちらのセリフだ。どうして、こんな事をするんだ。」

「好きだから。」

「・・・・・・嘘だろう。」



「勿論。」







小学校時代から妙な奴だとは思ってたけど、中学を卒業した辺りで
塔矢はオレの事が好きなんだと告白してきた。

急に壁に押しつけられて見下ろされてそんなことを言われて、
固まってしまったオレをどう見たのか。

コイツは、
ずっと好きだったけれど、それを勝負欲にすり替えて自分を誤魔化してきた、
だけれど普通に対局出来るようになるとそういう訳にも行かなくなってきて、
今ではオレを思って自分でしたりする、

なんてことまで、早口で言い募りやがった。


キミガホシイ。


その時オレはただただ自分の身に危険が迫っている恐怖と、気色悪いという感想しかなく、
やっと出てきた言葉は


「・・・変態。」


その一言だった。
塔矢は酷く、酷く傷ついた顔をして、それ以降は迫ってこない。


オレはと言えば、言った瞬間恐怖が拡散して、そして安心した途端に・・・
その傷ついた顔に、ヤバいくらいゾクゾクした快感を覚えてしまったんだ。


それ以来、一緒に泊まるような機会がある度に同じ部屋にして貰ったり、
一人部屋だったらわざわざ訪ねてまで、こうやって塔矢を嬲るのが、
密かな楽しみになっている・・・。







「こないだ和谷におまえがホモだって言ったらさぁ。」


腕の中の身体が小さく震える。


「アイツも気色悪いって言ってた。」


優しく優しく耳に吹き込みながら手を前に伸ばして、塔矢の股間あたり指ではじく。
ふふふ。やっぱり固くなってる。

変態。

オレは萎えた自分を、ことさら塔矢の尻に擦りつけた。


「おっ勃ててやがんの。」

「・・・・・・。」

「なあ塔矢。オレに入れたい?」

「・・・・・・。」

「オレの尻に、突っ込みたい?」

「進藤・・・やめてくれ・・・。」

「いーや。」


最初の頃は、もっと抵抗していた。
怒ったり頼んだり、何とかオレを追い出そうとしたけれど、結局はコイツは
本気になれない。
オレに惚れてるから。


「塔矢。」


しつこく呼びかけると遂にくるりと寝返りを打ってこちらを向く。
じっとこちらを見る。


「んだよ。」

「自分の布団に戻ってくれ。」

「いやだね。・・・襲えるもんなら、襲ってみたら?」


それが出来ないのも、実践済みだ。
一度切れた塔矢が逆に向かって来た時に、あっさりと体勢を入れ替えて
組み敷く事が出来た。
コイツの方が背は高いけど、運動神経や筋力はオレの方が断然上だ。
当たり前だ。
碁石より重いもん持ったことない奴に、負けて堪るもんか。


「・・・何が望みだ。」

「別に。」

「なら、もう・・・やめてくれ。・・・苦しいんだ。」

「ああ。望みってったら、おまえのそういう顔見る事かも。」

「・・・・・・。」


塔矢はうつぶせになって、枕に顔を埋める。
泣かないかな?
泣いたら、やめるかも。
おまえを泣かせてみたい。

けれど、塔矢アキラは、絶対に泣かない。
それも分かってる。

オレがくすくす笑うと少し顔を上げて、凄い目でオレを睨んだ。
・・・ぞくぞく、する。






それからどのくらい撫で回したり、言葉で苛んだりしたか・・・
異変に気付いたのが、少し遅かったかも知れない。



「・・・・・・?」

「・・・どうしたんだ。進藤。」

「何でもない。」


自分の布団に戻ろうとするオレの腕を塔矢が掴んで、簡単に引き戻す。


「?!」

「へえ・・・本当に、効くんだ。」


声音が。
さっきまで弱々しかった声に、僅かに笑いのような・・・興奮のようなモノが。

どきりと、
胸が、打つ。

『効く』?


「・・・てめえ、何、した。」


今度ははっきりとした、笑い声。


「襲えるものなら。って言ったよね?」


・・・さっきの、お茶。

う・・・そ、だろ?
額に、汗が噴き出す。
そろりと手を動かしてみる。
大丈夫、大丈夫だ。動ける。
ヘンな興奮剤でもないみたいだ。

オレは思いきりよく立ち上がった。

だがそのとたんにぐらりと眩暈がして、すぐに膝を突いてしまう。

すぐに塔矢が追ってきて、布団に引きずり込んだ。


「抵抗しないで欲しいな。」

「い、いやだ。」


白い腕が、レスラーの力強さでオレの肩を布団に押しつける。
絶対に敵わない、そう思わせるほどの、強さ。
そんなはずない。
オレが塔矢に勝てないはずがない。

それなのに頭を押さえ込まれて押しつけられた唇を、避ける事も出来ず。
男の舌が、歯を舐め回す。
塔矢のツバが、入り込んで来る。
荒い鼻息が、頬に当たる。

嫌だ、嫌だ、自慢じゃないけど、初めてのキスなのに。

気持ち悪い。
気持ち悪い。


けれどその感触よりも、簡単に唇を奪われた事実にオレはゾッとした。


尻の穴がきゅっとすぼまるような感覚。
もしかして、塔矢は。オレを。







塔矢は難なくオレのTシャツとトランクスを脱がせて、素っ裸に剥いた。
そして逃げられないように跨ったまま、自分のパジャマのボタンも外していく。


「塔矢・・・一体何・・・。」

「薬品名聞きたい?アメリカ直輸入の合法ドラッグだけど。」

「んなことどーでもいい。何、するつもりだ。」

「すぐに分かる。」


イヤだ。分かりたくない。


「なあ、やめてくれよ。」

「ボクが言ったセリフだ。あの時キミがやめてくれれば、こんな事はしなかったのに。」

「頼むよ。」

「キミがこんなに煽らなければ、あのまま布団に戻っていれば何も気付かずに寝て、
 朝になれば薬の効果は切れていたのに。」


歯がみをする。
何でオレは。
少し前に戻って、飽きずに悪戯を繰り返していた自分の後ろ頭をはたきたい。


「イヤだ。イヤだよ。」

「それも言った。」



イヤだ、塔矢、やめて、助けて。



塔矢が、笑いながら枕元に手を伸ばして、自分の鞄を手探りして何かを取り出す。
チューブから捻りだして、オレの股に、手を、伸ばして、揉みしだく。


「やめろ。」


勿論、萎えている。


「やめてくれ。」

「元気がないね。怖いの?」


それでも、与えられる刺激に。
だんだんと。
どんなに気を逸らそうとしても、少しづつ、血が寄り集まって。


「固くなってきた。」

「そんなの・・・。」


コンニャクにでも何でも刺激を与えられたらそうなる。機械的に。
でも、その刺激を与えたのが塔矢なのに・・・そう思うと、情けなかった。
変態に触られて、勃起しちゃうなんて。


オレが十分固くなると、塔矢はオレの上にのし掛かった。
ああ・・・いよいよ・・・オレの、尻が・・・。



なんて来るべき痛みに怯えて、ギュッと瞼を閉じたんだけど。




「ウッ・・・。」


呻き声を漏らしたのは、塔矢の方だった・・・。


オレの先っちょは、きつくて熱い場所に飲み込まれていて。


「あ・・・。」


思わず、声が漏れる。

塔矢はしばらく辛そうに腰を浮かせていたけれど、やがてオレの両脇に手を突いて
ぐっと一気に腰を落とした。


「あああッ!」


・・・息が、止まる。
一瞬気が遠くなるような、
背筋を貫く、
信じられないほどの快感。

きつくて、熱くて、ぐにゅっと動いてて。


「・・・気持ちいい?」


片目を眇めて耐えながら、
唇の端を上げて無理矢理笑いに似た表情を作って。

腹の上に塔矢のモノがあるけどよほど痛いのか
さっきまでキンキンだったのが今は萎えきってぺたりと垂れている。
オレはそれを見て吐き気がしそうになったのに、
下半身は逆に、大きく脈打って塔矢の尻の中を更に押し広げて。

塔矢が歯を食いしばって喉を反らす。

それから・・・それから、髪をばさりと跳ねさせて俯き、
ゆっくりと腰を上下始めた。


「塔矢!」


やめて。

いやだ。


男の中で、こんな。


感じたくなんか、ないよ。


オレは、変態じゃ・・・。





どの位経ったのか。


気付けば、さっきより塔矢の顔が高い。
逃げるように腰を上げているのに、それに無器用に突き上げているのは・・・オレだ。

もう、いい。

変態でも何でも。

ただただ、出したい。

この狂おしい快感にケリをつけたい。



そう開き直った途端に、アッという間に、出た。



塔矢は、動きをピタリと止めたオレを見て、微笑んだ。

それから萎え始めたオレを入れたまま、自分で自分を扱き始める。
痛みがマシになったのか、ちゃんと大きくなって、
他人が自分でやってるの見たの初めてだけど、ぼうっとしていて、
ああ、似たような事してんだな、って思ったぐらいで。

やがてぼんやりしたままのオレの胸に、顔に、生ぬるい白い物がピピッと飛んできた。
オレは避ける事も忘れて、ただ目に入らないように固く瞼を閉じていた。

それからの記憶は曖昧だ。

けど、塔矢が自分でやってる時に中で締め付けられたり動かされたりして、
オレはまた勃ったらしい。
塔矢の中がきつい感じになって、頭の上でかすかな声がした。

塔矢は痛そうだったけどそのまままた動いてくれたような気がする。
霞の掛かったような頭のまま、今までの人生で体験したことのない

オレは、溶岩に、溺れた。







意識が戻ったのは既に次の朝で、日差しの眩しさに目が覚めた。

一瞬見慣れない天井に驚いて、その後仕事の事を思い出して、
それからオレの胸に手を乗せて寝ている裸の塔矢に気付いて固まった。

顔の皮や耳の辺りが少し突っ張る感じがする。
でも、塔矢ちゃんと拭いてくれたんだ・・・。

きっちり覚えている自分と、認めたくない自分が少しの間せめぎ合ったけれど、
最初から勝負は決まっていた。


「ん・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「あ・・・おはよう。」


塔矢は普通に身を起こすと、少し目やにのついた目を擦った。

その、白い裸の背中。
背骨が浮いている。
尻の割れ目が見える。


オレ・・・昨夜・・・。


「シャワー浴びた方がいいな。ボクはキミが寝てから身体を洗ったからいいけど。」


オレはドキッとしたが、塔矢は何でもない顔をして、
枕元に畳んであった着替えに手を伸ばした。

昨夜の話をしないでくれるのは助かる。
こうやって普通にしていたら、何もなかったんだと、
ちょっとふざけて裸で寝ちゃったんだと言っても通りそうだ。


・・・けれど。


オレが。
オレの方が。


次から塔矢と別の部屋にしてくれと、事務の人に言えるのか。

塔矢と同じホテルに泊まっても、塔矢の身体に触れずにいられるか。

・・・昨夜の快楽を、忘れられるのか。




自信が、ない・・・。






−了−






※ 黒ピカ黒アキラ。

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