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066:666 コイツ・・・最近どっかで見たことあるよな・・・。 小学6年生のヒカルは、目の前でぱたぱたと涙を落とす黒髪の少年を見て、 薄ぼんやりと考えた。 最初に会った時から、何となく思ってはいたのだ。 コイツと碁会所以外の場所で会ったことがあるような気がする・・・。 ヒカルは塾にも習い事にも行っていなかったので、他校の生徒に会う機会など そうそう多くはない。 なのに思い出せない。 苛々する。 がしかし、思い出さなくていいような気もする。 いや、今はそんな事よりも。 「塔矢、おまえすげーよ!おまえの真剣さってこわいくらいだぜ!」 ・・・聞いちゃいない。聞いちゃいないんだ、オレの言葉なんか・・・。 ・・・あ。また何か思いだしちゃいそう。 「なんて勝ち方したんだよ・・・佐為・・・。」 ポケットに手を突っ込んで拗ねた歩き方をしていたヒカルの、 頭の中にいるのはやはり塔矢アキラだった。 ・・・最近あいつの事を考える事が多すぎるような気がする。 どこかで見たことがある気がするのも相変わらずひっかかっているし。 その時、目の前の自動販売機に、清涼飲料水の小瓶があった。 あー、小遣いがもうちょいあったら、ごくごくっと・・・。 「あっ・・・!!!」 『何ですか!ヒカル!』 「い、いや、何でもない!」 思い出してしまった・・・。 ヒカルは、思い出してしまった。己の罪を。 たった何ヶ月か前の事なのに、どうして忘れてたんだろう・・・。 いや、分かる。本当は忘れたくて忘れていたのだ。 それはまだ佐為に会わない秋の頃で、その日は珍しく山手の方の公園まで遠征していたのだった。 公園とは言っても半分くらい森のようなもので、奥が得体の知れない場所が沢山ある。 そんな所をヒカルは気に入っていて、ごく偶に元気な日は自転車を飛ばして 一人で遊びに来たりしていた。 今日はどこを探検しようかとブラブラしていると、目の前の藪から同じ年位の数人の 少年が飛び出してきた。 揃いの開襟のシャツ、胸の校章、どこかの私立小学校だろう。 くすくすと笑いながら走り去っていく後ろ姿に、私立の生徒でもあんな風にやんちゃに 遊ぶんだな〜、とぼんやり思う。 そしてこの藪の奥には彼等の秘密基地でもあるのか、と思い至った途端に、 矢も盾も堪らなくなってヒカルはしゃがみ込み、茂みをかき分けて探検を始めた。 中は雑木林のような場所で、道と言えるような道はなかったが、何となく進めそうな方向に 木に触りながら進んでみる。 公園とは藪に遮られているだけなのに、いきなり山奥に来たような、別世界のような ワクワクした気持ちがした。 距離にして数メートル・・・それでも随分奥に踏み込んだ観のある場所で、 ヒカルはそれを見つけた。 少年が横たわっている。 その髪型も目を閉じられた顔も、少女のようなのにそれがはっきりと少年だと分かったのは、 彼が素っ裸だったから。 一瞬死んでいるのかと思ってドキッとしたが、その胸が微かに上下していて、 確かに生きているのが分かる。 それにしても、えげつない・・・。 ヒカルの学校でも多少のいじめはあったが、こんなに酷いのは見たことがない。 私学の生徒は表面上はいい子なだけに、裏では手加減を知らないんだろうか、 と彼らしくもなく分析をしながら、それでもつい見つめずにはいられない。 脱がされた制服や下着は木にひっかけられていて、展示されているようだ。 ランドセルも中身をぶちまけられて根元に転がっている。 そして彼の体に、傷や痣こそなかったものの、汚されていて・・・ 胸や腹に、何か白くてべちゃべちゃしたモノがついている。 唾だろうか・・・。 そして・・・膝を立てて開かれた足の間、尻から何か出てる、と思ったら、 清涼飲料水の小瓶の口が、何と尻の穴に突っ込まれているのだった。 「あの・・・大丈夫?」 少年は答えない。目を開けない。 しかしヒカルの声を聞いて顔を赤くした所を見ると、気を失っている訳ではないらしい。 多分恥ずかしくて目が開けられないのだろう。 寝てる振りをしている間にどこかへ行ってくれ!と激しく思っているのだろう。 ヒカルにもそれは何となく分かったが、そのまま立ち去るのも去りがたかった。 それに、さっきから、何だかパンツがきつくて、 体の中心が疼くような、居ても立っても居られない気分なのだ。 ヒカルにまだ精通はなかったが、この所偶にこういう、何とも行き場がない、 ぞくぞくというかわくわくに、体を苛まれてはいた。 学校で習う程度の性知識はあったが、それに自分自身がどう手を触れていいのか 分からない。 突然目の前に妖精のような女の子が裸で現れて、自分にセックスを教え、 そしてどこへともなく消え去ってくれればいいのに。 なんてご都合主義な事を考えずにはいられない、そんな年頃だった。 ヒカルはおずおずと少年に近づき、その足の間に立った。 取り敢えず、と尻に突っ込まれた瓶に手を触れると、振動が伝わったのか 少年の足がぴく、と震えた。 構わずに引っ張ると、多少の抵抗の後にきゅぽん、という空気音と共に 瓶の口が抜ける。 開いたままの尻の穴は、尻の穴なんて間近で見たのは初めてだけど 意外とキレイだと思った。 それから中に入っていたらしいジュースをとろとろと流しながら、じわりと閉じていく。 それを見た瞬間、あ、ヤバイ!と思って慌ててパンツと下着を一緒にずらすと その擦れた感触と共に、頭が真っ白になる快感が走った。 「痛っ!」 痛い、とは少し違うけれど、その感覚を表す表現が他に思い付かず、 ヒカルは小さな悲鳴を上げながら自らのモノを掴み、 裸の少年の萎えたものや、足に、精液を掛けてしまった。 それがヒカルの精通だった。 信じられない感覚、初めての経験にヒカルは呆然と尻餅をついた。 それでもまだ彼の息子は元気で、その存在を主張している。 理不尽に見ず知らずの少年に精液を掛けられた方の少年は 相変わらず目を閉じたまま現実を拒否した人形のようだった。 その、少年の先端から、自らの掛けた粘液がぽたり、と垂れたのを見た時、 ・・・ヒカルに悪魔が囁きかけた。 「なぁ。・・・瓶が入るんだから、オレのちんちんも入るよな。」 答えない足の間に腰を入れ、太股に手を掛ける。 男同士のセックスについての知識はなかった。 自分で、女の子と似たような場所にある似たような場所だから、似たような事が出来ると気付いた。 今まで出す事しか出来ないと思っていた場所に、入れてあったというのもある。 ・・・やっちまえ。どうせ知らない奴だ。 ・・・汚いじゃん。 ・・・大丈夫だよ、ジュースでキレイになってるさ。 ・・・でも男だぜ。 ・・・でも女みたいな顔してるじゃん。変わるもんか。 それに抵抗もしない。顔も見られてない・・・。 少年ヒカルは、その誘惑に抵抗することは出来なかった。 ・・・中では肉の締め付けと、僅かに残った炭酸が恐ろしいほどの刺激と、快楽を与えてくれた。 夢中で動きながら、白い胸や腹の固まり掛けた粘液がどろ、と動くのを見て これは最初に見たあいつらの、だと頭の隅で理解した。 ヒカルの人生二度目の射精は、塔矢アキラの中でだった。 しばらくはぼんやりしていて、ただ酷く自己嫌悪に襲われた事を覚えている。 悪魔に魂を売ってしまった、自分も悪魔に成り下がったのだと思った。 それから俯きながらティッシュを取りだし、自分の物を拭い、少年の足も拭ったがとてもとても足りない。 それで一旦公園に戻り、母親に持たされているタオルを水で濡らして絞り、 また帰ってきても相変わらす目を閉じたまま横たわっていたので 胸や腹や足を拭い、泥も落とした。 それでも尻や背中はどうしようもなかったので、少し迷ってからそのタオルを腹の上に乗せて 取り敢えず彼の服やランドセルを一カ所に集めて、そのまま帰ってきた。 黒い犬のキャラクターのついた、タオルだった。 あいつか・・・。 二度と会う事はないだろうと思ってたけど、あいつ「塔矢アキラ」って言うんだ・・・。 あの時は服も着てなかったし目も閉じてたし、声も聞いてないし。 あんまり印象が違うんで気付かなかった。 向こうも気付いてない筈だ。 それでも、ヒカルはアキラの顔をまともに見ることが出来なかった。 だけどあいつは碁が大好きだ。 オレがあいつと同じくらい強くなれば、きっと許してくれるんじゃないだろうか。 ずっとずっと碁が上手になって、あいつに追いつくことが出来た時に、 もし、もし出来れば、勇気が出たら、告白して謝ろう。 と考えつつヒカルは、碁で塔矢アキラと並んだとしても、 きっと告白する事など出来るはずがないと、心のどこかでは分かっていた。 それから、長い長い道のり。 ヒカルは碁の精進を続け、プロになり、佐為を失い・・・ 悪魔に魅入られた幼い日の記憶は、いつしか夢か現か分からなくなり、 そして消えた。 「うわっ!」 「どうした?」 「おまえんちって犬飼ってたの?」 友人になる事が出来たアキラの家に、今日は両親がいないから泊まりに来いと誘われて 恒例の北斗杯前の合宿以来久しぶりに足を踏み入れた。 「ああ。中学に入った頃から飼ってるよ。」 「だって前いなかったじゃん。」 「母が長いこと家を空ける時は、人に預けているんだ。」 庭先には、巨大な真っ黒い犬が繋がれていて、じろりとヒカルを睨む。 「ひでー!先に言ってくれよ。オレが犬苦手なの、知ってるだろ?」 「大丈夫だよ。ボクがいれば絶対に噛んだりしないから。」 「てことはおまえがいなかったら噛むのかよ!おいおい。」 「犬に近づく時はせいぜいボクの側から離れないようにしておいてくれ。」 「近づかねえよ!」 ヒカルはいつしか犬が、特に黒い犬が苦手になっていた。 いつからかは分からない。 子どもの頃は好きだった気がする。 小学校の時に、犬を飼いたい飼いたいと駄々を捏ねたことがある。 それが何でだろうな? 自分でも訝しく思うが、何となく、その辺りを考えようとすると、頭の中で警鐘が鳴った。 その日もいつも通りに打ち、検討を重ね、小さなケンカもし、 二人でコンビニに買い物に行き、夕食を食べてまた打った。 交代ごうたいで風呂に入り、また打ち、もうそろそろ寝る?という話が 出だした時の事。 アキラが、瓶のままの清涼飲料水を出してきた。 自分でも分からぬまま、ヒカルの胸が何故か動悸を打つ。 「喉乾いただろう。」 「うん・・・。」 だけれど、何だろう、この違和感。 塔矢の家で今まで出された飲み物は、お茶ばかりだ。 冷えたほうじ茶、甘い緑茶、お茶っていいもんだな、と薄い陶器の茶碗に口をつけながら よく思った。 塔矢家に、塔矢に、清涼飲料水は似合わない。 しかも瓶のまま。 塔矢なら、コーラだってコップに入れて出しそうなもんじゃないか? 「でも、オレいい。もう寝るし。」 「そう?」 アキラは一人で、ゴクゴクと喉を鳴らす。 その反った首に、自分の中の何かが疼きそうになって、ヒカルは慌てて布団を敷いた。 「じゃ。おやすみ。」 「ああ。」 立ったアキラが、障子を開けて、ふと振り返った。 「あ、そうだ。今日6日だったね。実は今日中に返したいものがあるんだ。」 「へ?何?」 塔矢に何か貸していただろうか? 「うん、キミには借りがある。」 「?」 「ちょっと待っててくれ。」 やがて帰ってきたアキラは、食品用の真空パックに丁寧に保存された、タオルを差し出した。 「え?これオレのじゃ・・・」 手に取りかけたヒカルが、小さな悲鳴を上げる。 「絶対オレのじゃないよ!だってオレ犬嫌いだって、」 タオルには、黒い犬のキャラクター。 可愛らしいはずなのに、今まで見たどんな犬よりも、犬の絵よりも、禍々しい犬。 「キミのだよ。忘れたのか?」 そんな・・・。 だけれどそう言われてみると、どこか懐かしい気もするのは何故・・・。 「キミのだ。」 その時。 ヒカルの脳裏で、何かが光った。 いや、思い出さない、思い出しちゃいけない、 「忘れたとは言わせないよ。」 雑木林の中で足を開いて横たわっていた、白い体。 壊れた人形。 そして自分が・・・。 ヒカルが、もう一度悲鳴を上げる。 「・・・思い出したみたいだね。」 認めたくなくても、自分の顔がどんどん青ざめていくのが分かる。 「おまえ・・・覚えて、」 「忘れるものか。キミだってどうしてボクの前で普通の顔をしていられるのか不思議だったけれど すっかり忘れていたとはね・・・。」 「・・・・・・。」 「それとも、ボクがキミの顔を見ていなかったとでも思った?」 アキラの唇が、吊り上がる。 そう、見られていないと思っていた。 自分以外誰も知らない事だから、自分が忘れてしまえばなかった事になるような気がしていた。 それなのに。 塔矢は、オレの前で微笑みながら、友人の振りをしながら、ずっと・・・。 「丁度ねぇ・・・。6年前の、今日なんだ。」 「・・・・・・。」 「だから、今日中に借りを返して置こうと思って。」 ぞっとした。 アキラの目に、狂気が感じられる。 ヒカルには6年前に自分に囁きかけた悪魔が、今はアキラの身内にいるのが分かった。 ガタガタと震えながら、パジャマのまま荷物を抱え、玄関の方へ走ろうとする。 「あ、進藤。」 止まらない。止まれない。 「言い忘れてたけど、夜は犬を庭に放してあるんだ。 悪い奴が入って来ないとも限らないからねぇ。」 ・・・止まりたくないのに足が竦み、動かなくなる。 「外に出たら、噛みに来るよ。でもキミは犬が嫌いな割りに噛まれた事はないみたいだから 一度噛まれてみるのもいいかも知れない。」 「・・・そん、」 「ボクはね、昔、黄色い犬に噛まれたから、その痛みがよく分かるんだよ・・・。」 「・・・・・・。」 「好きな方を、選んでいい。」 ヒカルは立っていられなくなって障子に縋り、ずるずると座り込んだ。 その後ろで、アキラの低い笑いが響いた。 −了− ※結局「オーメン」ネタ。確か黒い犬が悪魔だった・・・よね? アキラさん、タオルを握りしめて延々と復讐計画を練ってたんでしょうね。 所で小6での精通経験割合は1割前後らしいのでピカは意外にも早かった事になります。 一応666も意識はした。(出てくる数字が三つとも6) | ||
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