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045:年中無休 年中無休のファミレスの隅の席で。 進藤と塔矢と、そのツレらとメシ食った。 和谷と越智ともう一人伊角さんとか言う人や。 和谷と越智は北斗杯の予選で会うたから、顔は知っとる。 越智は・・・相変わらず生意気や。 でも、北斗杯に出るチャンスくれたからっちゅうワケやないけど、 オレはコイツが嫌いやない。 いや、そやからかな? プライドの高い男。 プライドの為に死ねるような、昔気質の男。 ちびっちゃいけど、オレにはサムライに見える。 和谷は、割としゃべりやすいな。 一コ上っちゅう話やけど、進藤もタメ口やし、オレもそうさしてもらお。 予選で越智に負けとったけど、関西総本部の秋山さんには勝っとった。 一回戦っただけやけどオレの感触では、秋山さんと越智はそんなに差ぁない。 そやから和谷も弱いっちゅうわけやないんやろ。 力にムラがある感じなんかな。 伊角さんっちゅう人は初めてや。 プロになったんは遅いけど、なった時は全勝やったとか。 不思議な人や。 もしかしたらこの人が18歳やったら、オレは北斗杯に出れてへんかも知れん。 人が良うて真面目で大人しそうな感じ。どっちかっちゅうたらボケ。 やけど碁に関しては激しいもん持っとるんやろな。 進藤は相変わらず。 すごい場ぁ盛り上げて、気ぃ使ことるかと思たら、急に機嫌悪なったり。 ホンマガキやな。ガキやからこそコイツの碁はおもろいねんけど。 他のメンバーも慣れとるみたいで、「はいはい」って感じで流しとる。 越智より下っぽいっちゅうか一番弟分みたいやのに、この場では塔矢と並んで一番強いねんな。 なんやおもろいわ。 その塔矢は・・・。多分、オレと同じでこういう場に混ざるん初めてちゃうんか? オレが来るっちゅうんで引っ張り出されたんやろか。 進藤とはかなり仲ええ感じがしたけど、今は席離れとるせいか、あんまりしゃべらへん。 でも他の奴とは今ひとつ話題がないというか雰囲気に馴染めてへん感じ。 越智や伊角さんとはぽつぽつしゃべっとるけど、和谷とは目ぇも合わさへんしな。 ん〜、ちょっと気ぃ使うよな、こういう奴が一人おると。 まあでもそんな感じでそれなりにワイワイ騒いどったねんけど。 メシ終わってコーヒー飲んどったら進藤が急に 「あ!」 なんやなんや? ゴソゴソポケットを探るのに、みんな黙って注目してまう。 開けた財布の中を覗いて、ぱたりと閉じ 「あー。今日オレ金持ってねーや。」 「うわ、最悪ー。自分が誘っといて。オレ貸さねえぞ!」 和谷が薄情な事言うんを口尖らせて睨んだ後、進藤はメンバーを見回しかけてオレに目を留め。 「社、旅行中だから金持ってるよな。貸してくんない?」 「あ、ああ、ええけど。」 くるくる表情の変わる無邪気な顔に ふと。悪戯心が湧いて 「・・・それより、5000円やろか。」 「マジ?ちょーだい!」 「その代わり、賭すんねんで。」 「え、どんな?」 オレはブザーでウェイトレスのねーちゃん呼んで、アイスバーを一本頼んだ。 木の棒に付いとって、円筒形で、ミルク味の奴。 「オレがコレ持っとるから、オマエは5分以内に舐めきる。」 「はははっ簡単じゃん!」 「でも、舐めるだけやで。絶対歯ぁ立てたらあかん。手ぇも使ったらあかん。」 「え、囓っちゃだめなの?でも大丈夫だよ。オレソフトとか食うのめっちゃ早いもん。」 「さよか。ほな5分以内に出来たら5000円やるわ。」 「それだけ?」 「それだけ。」 「よっしゃあ!頂き!」 オレは立って、アイスのセロファンを破ると、向かいに座った進藤の方に突き出した。 進藤も中腰になって、顔近づける。 「よ〜い・・・ちょお待った。」 「んだよ。」 「手ぇ使こたらあかんて。」 進藤は無意識にか、オレの手首掴んでアイスを固定しようとしとった。 「おい、ちょっとコイツの手、後ろで縛って。」 「よし!」 ニヤニヤしながら見とった和谷が、ハンカチを取りだして斜めに引っ張る。 「何すんだよ、さっきはうっかりだって。もう使わないって。」 「一応や。」 和谷が進藤の手首を後ろで重ねて縛る。 「ほな行くで。アカン、溶けてきた。よーい・・・・・、スタート。」 進藤は猛スピードでペロペロと舐め始めた。 一分経過。 根元の方から舐め上げ、オレの顔を見上げてニヤリと笑う。 まだ余裕やと思っとんのか、一旦口を離して唇の周りについたミルクを ぺろりとなめ取る。 鼻の頭にも付いとったけど、それはさすがに舐め取れんかった。 「おい進藤、頑張れよ。」 「間に合うのか?」 二分経過。 相変わらず少し余裕を見せとるけど、少しヤバなってきた。 疲れてきたらしう、スピードが落ちとる。 冷たさで赤うなった舌を突き出して、ねっとりと削り取るみたいに アイスバーを舐り続ける。 「ほら、裏側も舐めねーと垂れるぞ。」 「・・・汚いなあ。」 「社くん、もう少し近づけてあげてもいいんじゃないか?」 手ぇ縛られて、顔突き出して夢中で舐めとる進藤が、あんまり、アレで、 オレは少しアイスを引いとったらしい。 三分経過。 先の方はだいぶ細なってきたけど、冷たなってきたんか、元気がない。 目ぇは半眼で眉間を寄せて、舌先でちろちろ舐めるだけになって来た。 「なあ、唇も使っていい?」 「ああ、ええけど中で歯ぁ立てんなや。」 「分かってるよ。」 口を大きく開けてアイスをくわえ、唇でしごくみたいにして溶けた部分を舐め取ってく。 だいぶスピードが上がった。 口を離す時に汁が垂れへんように、舌先でじゅるりと舐める。 もう、誰も何も言わず、魅入れたみたいにじっと見守っとった。 和谷の喉がごくり、と鳴った。 四分経過。 木の先が見えてきたけど、まだまだアイスは残っとる。 「あと何分?」 「50・・・45秒。」 「やべっ!」 泣きそうなりながらバーくわえて、猛スピードでピストン運動を始める。 ・・・そーいう自分の方がヤバイっちゅうねん! 口の端から顎の方に白い液体が垂れ、それを拭う暇もなく、 舌を使い続ける。 赤い赤い舌が、ねっとりとねっとりと、からめられ、その舌にも白いミルクが伝い・・・ 「・・・5・4・3・2・1。終了〜!」 「くっそおー!」 「あー、汚い!」 越智が自分の鞄から携帯用のウェットティッシュを取り出し、進藤に渡そとするけど 進藤の両手が使えへんのに気ぃ付いてばっちそうにやけど手ずから口元を拭いたっとった。 他のメンバーは動けんかった。 「おい!和谷、早く取ってくれよ。」 「あ、ああ・・・。」 呆然としとった和谷が、慌てて進藤の後ろに手ぇ伸ばしてハンカチの結び目を解く。 和谷は座っとるのに必要以上に前屈みな感じがした。 伊角さんもちょっと気まずそうな顔しとった。 「お、サンキュ。あー!悔しい!イけると思ったんだけどなー!」 「お疲れさん、ほい、責任取って食えや。」 「ああ、貰う。」 アイスの残りを進藤に渡そとすると、木のバーから落ちそうなる。 進藤が慌ててオレの手を掴んで、舌で迎えに来る。 垂れかけた雫をこぼさんように受け止めて、満足そうに笑ろた。 オレは思わずしばらく見とれて、それからミルクの垂れた自分の指を、 ちょっと迷てから口に含む。 何とのうゾクリとして顔を上げると、塔矢が目を細めてこっち見とった。 意味ものう脳天気な声が出したなった。 「まあええやん、そのアイスは奢ったるし。」 「ありがと。ラッキー・・・かな?」 「ん、5000円。やらへんからな。返せや。」 「わーってるって。借りるな。」 次会う時まで、進藤がこの借金覚えとるかどうか分からへん。 次いつ会うかも決まってへんし。 でも別にかめへんねん。 ホンマはええもん見して貰ろた礼に5000円くらいやりたい気分やねんから。 そやけど、それは、ちゃうよなぁ。 さすがに。 塔矢がまとめて精算してくれとる間に、ぶらぶらしとると越智が 「あれは下品で汚い遊びだな。大阪では流行ってるのか?」 って聞いてきた。 越智には、単にやたら汚な見えたんやろ。 オレも、そんな風に、見れたらよかった。 和谷は 「おい、あれ、面白れえなぁ!女の子だったらもっとすげえんじゃね?」 「いやぁ、女はさすがになかなかやってくれへんわ。」 女の子はやってくれへんし、されても洒落ならんし。 男がやるからこそ洒落なるっちゅうか、笑えるっちゅうか、 文化祭で男がバニーガールの衣装着るようなもんで、 受けてなんぼというか、笑って貰えんかったらどないもならんというか。 まさか男がやって、あんなに洒落ならんとは思わんかった・・・。 「そっか。でも、」 ・・・オレちょっとコーフンしちまった。 オレもや。 共犯者の笑いを交わす、和谷とオレ。 短時間で妙に仲良うなれた気がする。 「あれは感心しないな。」 口元で笑いながらも、少し眉をしかめたのは伊角さんや。 「あれでは進藤がなぶり物というか、まあ本人気付いてないからいいようなものの もしビデオか何かで見たらショックを受けると思う。」 「はあ・・・。」 「彼は碁は強いけれど、やはりまだ子どもな部分があるから、 あまりからかわないでやってくれないか。」 「すんません。」 ゆーてもオレも同い年やねんけどな。 でも、確かに伊角さんが言う通り、進藤にあんまり人前であんな事させん方がええとは思う。 にしても真面目な人やなぁ。 ええ人やねんけどな。 この人に輪ぁ掛けて真面目な塔矢は・・・滅茶苦茶怒っとるやろな・・・。 いや、越智みたいに気ぃついてへんっちゅう可能性もあんで。アイツやったら。 そっちにオレは賭けたい・・・。 その塔矢と何かしゃべっとった進藤がこっちに向かってきた。 「はい、5000円。返すよ。」 「あれ?他の奴に借りたんか?」 「ううん。塔矢がくれた。」 「くれた?えらい気前ええなぁ。いっつもそうなん?」 「そんな事ないけど。」 「何でやろ。何か言うとった?」 「そういや・・・5000円で『さっきのキミを買う。』とか言ってたな。」 「・・・・・・。」 「どういう意味だろ。分かる?」 思わず塔矢に目をやると、また目を細めて・・・笑っとる・・・ような怒っとるような。 アカン、怖いって。その表情。 北斗杯で高永夏に負けた進藤の 肩を抱かんばかりやった塔矢を、不意に思い出す。 あの頃から何となく妙な空気は感じんでもなかったけど。 おとん・・・おかん・・・東京は年中無休で洒落ならんとこやで・・・。 −了− ※アキヒカ、ヤシヒカ、ワヤヒカ派の方に媚びてみました。 嘘ですけどね、自分の趣味ですけどね。そういう発作。 ※カザミンにいただいた、ピカアイドル小ネタ! 和「な、塔矢。頼むって。オレ、もっかいアレ見たい〜」 ア「仕方ないなぁ。…いいか、見るだけだからね。 ちょっとでもボクの進藤に触ったりしたら、 たとえキミが進藤の親友でも容赦しないから、そのつもりで。…はい、進藤これ」 ヒ「あー?またこれ舐めんのー?もう季節、冬なんだけど」 ア「うん、舐めて(にっこり)。今度はゆっくりとね。 後でちゃんと美味しいものも食べさせてあげる」 ヒ「マジ!?時間制限ないなら大丈夫かな…(ぺろり)」 和「うっ、」 ヒ「?――おい、大丈夫かよ、和谷?調子悪い?」 和「い、いいいいいやっ!大丈夫!(鼻押さえつつ)むしろ元気!」 ヒ「?」 ア「ほら進藤、早くしないと溶けちゃうよ?――ああ、どうせならボクも一緒に舐めようかな(ぺろり)」 和「(ぎゃあ!)と、塔矢!それもマズイ!!ダブルは止めろ!」 ヒ「…マジで大丈夫かよ、和谷?(舐めながら上目遣い)」 ――和谷、撃沈。私も撃沈。 |
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