044:バレンタイン
044:バレンタイン










塔矢が一週間も東京にいない。
別に一週間くらい会わないことはざらにあるけれど、
棋院に行っても昨日は塔矢がここにいたんだな、みたいな気配が
感じられなくて、それがなんとなく物寂しいのは自分でも意外だ。

だから

オレらしくもなく、手紙を書いてみた。

手紙じゃなきゃ言えないこと。
オレの考えてる事や思いや、そんなものを
一生懸命
オレに出来るだけだけど、一生懸命
綴った。


葉書で出しても十分な量だけど、
出来ればこんなの人に見られたくないから、封筒で出す。







『もしもし・・・。』

「あ、とーや?」

『うん。』

「そっちの仕事はどう?」

『ほとんど順調に終わったよ、あとは土産物買いがあるけど。』

「芦原さんに頼まれたやつと。」

『そうそう。』

「いいなぁ、のんびりしてやんの。」

『・・・手紙、受け取ったよ。相変わらずの字だ。』

「字のことは言わないでくれ・・・。」


それに、照れくさいからその話はして欲しくないんだよ。


『情けない声を出さないでくれ。』

「だって、精一杯だったんだよお。」

『ああ、十分嬉しいよ。』

「・・・なら、もうその話はいいじゃん。」

『でも、何処を縦に読めばいいか分からなかったり。』

「え?」

『横に読んでも意味が通らないと言うことは、どこかを縦に読むんだと思うんだけれども。』


むかつくー!
声はいつも通りだが、かなり馬鹿にされてることは分かる。


「どーせオレは手紙書くの苦手だよっ。大体今時手紙はねーよな。オレがバカだよ、全く。」

『いまどき・・・。』

「いーよ。意味分かんなかったら捨ててくれたら。」

『そんな勿体ないことはしない。折角の今時の『おてがみ』。』


ホント、なんて腹立つ奴。
手紙なんて書かなけりゃ良かった。
一生懸命、一生懸命、書いたのに。
一生の不覚。
・・・・・・。


『・・・悪い、ちょっとからかっただけだよ。キミの気持ちが嬉しかったのは本当だ。』

「ふん。暇つぶしだよあんなの。」

『嘘つけ。』

「本当だもん。よっぽど退屈じゃなきゃ書いてない。」

『今更何を。』

「あんなのなしなし!取り消した!」

『キミは話すと本当に素直じゃないなあ。』

「るっせえっ!」

『そういうそっちがうるさい。』

「あー、ムカつく。切るぜ!」

『あっそ!失礼します!』




・・・って本当にあっさり向こうから切りやがって!
何なんだ?何の為に電話なんかしてきたんだ?
手紙の礼も結局聞いてねーし。

あ〜あ。バカみてえ。

こんな気持ちなの・・・、オレだけなのかな。
オレが地方に行っても、塔矢はきっと手紙なんかくれない。

電話をくれたのだって、奇跡みたいで。
結局喧嘩で短時間で終わっちゃって。

ホントに、何のために電話してきたんだか・・・。

何のために・・・。
と、ふと見た小さな液晶画面に、


「2月14日 14:20」


・・・ははは。まさかな。
クリスマスまで知らなかった奴だもんな。
バレンタインデーなんて、絶対知らないし知ってても気にしてねえよな。
ないない。うん。





とにかく。


あーー!早く帰ってこい!塔矢!
すっげー一発殴りてぇ!

あ、でも土産に・・・チョコ買ってきてくれたら勘弁してやらなくもない、
かな。


早く、帰ってこい、塔矢。






−了−







※頭を使った割りに何とも不出来。もっと時間が欲しかった。
  キモい激甘。
  苦心の仕掛け(って程じゃない。割と古典的。)が分かった人、教えて下さい。

  翌日追記
  アレです。塔矢も進藤も何も仕掛けてません。私が遊んだだけ。
  あと時刻も関係ないです。ゴメンなさい。
  同じ方法で二つの文章が隠れています。



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