032:鍵穴
032:鍵穴










あ、じいちゃん!・・・じゃなくて桑原先生・・・。


おお、進藤か。・・・ああ、キミ、良いんじゃ。この子は。
まあ先に行っておってくれたまえ。


・・・あ、ごめん。オレいつまで経っても敬語って苦手だよ。


構わん構わん。


そうだ、本因坊防衛おめでとうございます。


フォッフォッ。そちらこそ今年も北斗杯の出場権を手に入れたようじゃな。


うん。見ててくれた?


おう。すっかり女の子らしくなったと思って見ておった。


はははっ。そこかよ。






・・・・・・。


どうしたの?あの俳優がどうかした?


ああ・・・もしかしたら長くないかも知れんな。


何で?


よくないモノが、憑いておるようじゃ。


え・・・!そういうのって見えるの?


見えはせん。何となく感じるだけじゃよ。


ってか、幽霊って信じてるんだ?


信じるも信じぬも、目に見えるものだけが全てではないからの。
・・・ん?どうしたんじゃ?


いや・・・何でもないよ。
ええっと、そだな、碁と関係ない話なんだけど、ちょっと聞いてくれない?


ああ、構わんよ。


オレの友だちでそういう奴がいて。


そういう?


霊感があるっていうか、幽霊が見えるんだ。・・・見え、たんだ。


ほほう。


そいつには触れそうにはっきり見えて、でも触れなくて・・・
ってそう。一人の幽霊が、ずーっと見えてたんだって。


それは珍しいのう。


うん。もう怖いって感覚もなくて、友だち、いや家族みたいっていうか・・・。
でも。





ある日突然・・・消えちゃったんだって。見えなくなったって。


・・・なるほど。


・・・なあ。それって何だと思う?あんなに大事だったのに、ずーっと側にいたのに、
急にいなくなるなんて。何が原因なんだと思う?!







・・・そうじゃのう。
その子自身に、その前後に変わった事はなかったかの?


別に・・・なかったと思うけど。


そうか。古来より、純潔でなくなるとそういった能力は消えると言われておるがな。


純潔?


処女ということじゃよ。
例えば巫女なども男を知るまでと言うことになっておる。


・・・男って・・・。


心当たりはないかの?


・・・・・・そう言えば・・・。


何かあるか?


その頃に・・・その・・・レイプされたって言ってた、かも。


レイプ。


強姦って事。


そのくらい知っておるわい。近頃の子はあけすけじゃのう。


じいさんには負けるよ。
とにかくほとんどしゃべった事ない奴だったし、ある意味ライバルだとも思ってたし・・・
何よりそういう事しそうにない奴だったから、凄くショックだったみたい。


うーむ。


・・・もしかして、ソイツのせい?!さ・・・その、幽霊が消えたっての。
ソイツが、ソイツが、あんな事しなけりゃ、







・・・そうでもないじゃろう。


だって!処女じゃなくなったらそういう能力がなくなるって今言ったじゃん!


まあそれはそうじゃが・・・腑に落ちんの。


何が。


それは本当に単なる強姦じゃったのかの?


・・・どういう意味?


その子は、真剣に拒んだのかえ?本当に嫌だったのかえ?


・・・・・・。


心底拒否しておれば、そう簡単にはできぬはずじゃ。
よしんばされたとしても、だからと言って乙女の誇りを失うものではなかろう。
それが「ばぁじにてぃ」という物ではないかの。


・・・何が言いたいの。


その男は本気でその子に惚れておったのではないか?
その子も・・・その男を、心では既に受け容れておったのではないのかの?


・・・・・・・・・・・・。


その二人はその後どうした。


今は・・・、ケンカもするけど結構仲いいみたい・・・。


フォッフォッフォッ。やはりの。


でも、てことは、オ・・・その友だち本人のせいなのかな。
友だちがその男好きになっちゃったから、幽霊消えたのかな。


そうかも知れぬな。


・・・・・・。







じゃが、遅かれ早かれじゃろう。そしてそれは自然の摂理であろう。





いつまでも汚れを知らぬではおれぬし、また真っ白なまま終わってしまうような人生はつまらぬ。


でも・・・選んじまったんだ・・・あいつを。
それによって幽霊を失うなんて、気付かないで。


・・・・・・。


・・・バカだ。あいつなんて、あいつなんて、好きにならなけりゃ・・・。


恋なぞというのは、自分ではどうしようもないものじゃよ。


だって。でも。
本当に、本当にその幽霊の事も、大事だったんだ。大好きだったんだ・・・。


では、その幽霊とやらと一緒に、あちらの世界へでも行ってしまうつもりだったのかえ?


・・・考えた事なかった。


牡丹灯籠ではないがのう、幽霊との恋など悲劇的な形でしか成就せんのじゃ。
一生その幽霊と、二人だけで繭に籠もっておる訳にもいかんであろう。


恋じゃ、ないよ・・・。


同じ事じゃよ。
むしろ、その男は鍵を開けて外の世界に連れだしてくれたのではないかの。
じゃから。





その男は悪うない。確かにおまえさんが、自分で選んだのじゃ。
じゃが、それは間違った選択なんぞでは決して、ない。


・・・・・・。


・・・と、その友だちとやらに伝えてやるがよい。








うん・・・そうするよ・・・。







−了−







※理由無くピカを女の子にするのにはまだ照れがあるようです。
  実はピカの鍵穴にアキラさんの鍵が・・・という下ネタ。

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