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027:電光掲示板 |
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『・・模様。/囲碁の・・・元名人が・・日早朝、・・・市内の病院で死亡。享年・・・』 「へえ。この人、有名なの?」 「そうじゃな、昔はとにかく強かったし一時テレビの解説で人気があった。」 「にしても碁打ちが電光掲示板に出るなんてすげえよな。」 「・・・おぬしはいつまで経っても年長者に対する口のききかたがなっとらんのう。」 「あの人と対局したこと、ある?」 「無論じゃ。」 「どんな碁を打った?」 「・・・美しい、碁であったな。」 「へえ!」 「じゃが、きれい事過ぎて、ある時から勝てなくなった。」 「・・・・・。」 「懐かしいのう。あやつとワシとは宿命のライバルと呼ばれたこともあった・・・。」 「・・・寂しい?」 「何の。引退してからは賀状もよこさなんだ奴じゃ。」 「先生は出したの?」 「何故ワシから出さねばならん。」 『・・・降水確率80%/沖縄の・・・』 「今頃、天国で打ってるかなぁ。」 「死んだらそれまでじゃよ。」 「オレは碁が好きだった奴が死んだら碁の天国で打ちまくれるって信じたい。」 「フォッフォ。年の割に幼い事を言う。」 「もういない奴とまた打ちたいんだよ。今生きてる奴とも死んでからも打ちたいし。」 「そうじゃな、碁の極楽だの地獄だのあるとしたら、アヤツは間違いなく極楽に居るじゃろう。」 「先生は?」 「ワシは地獄じゃ。」 「あははっ。それじゃ打てないじゃん。」 「いいんじゃ。あやつとはもう、打ちとうない。」 「・・・・・。」 「良いか、小僧。キレイな碁なんぞクソの役にも立たん。」 「そうかな。」 「石にかじりついてでも、どんな手を使ってでも勝つ、それが本当の碁というものじゃ。」 「まあ、勝てなきゃ意味ないもんね。」 「相手の一手の美しさに飲まれて、それに答えたくなってしまった時点で負けじゃ。」 「ペースに巻き込まれなかったのが。」 「左様。結局あやつは塔矢行洋という若い才能の前に、破れた。」 『・・・原告団、敗訴。/映画監督・・・』 「・・・でも、負けてもいいからそんな美しい一局を打ってみたい。」 「フン。そんな根性ではいつまで経っても塔矢アキラに勝てんぞ。」 「冗談だよ。ねえ先生。いつか地獄で、打とう。」 「地獄の方が打つ相手に事欠かなんじゃろうからな。」 「大丈夫。きっと天国も地獄も一緒だよ。」 「何が大丈夫、じゃ。」 「きっと、また打てるって事。」 「誰が、」 「ふふっ。先生、さっき『寂しくない』って言ったの、嘘でしょ。」 「・・・・・・。」 『・・和解の模様。/囲碁の・・・元名人が・・・・』 −了− ※桑ヒカラブラブデート。ありかよ、おい。 |
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