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100:貴方というひと オマエってどんな奴なんだろうな? とりあえず碁バカなのは間違いないんだけど、それ以外は何にも知らないよ。 綺麗な髪をしている。最初は女の子かも知れないと思った。 だけど碁石を握った瞬間、その「かも」はふっとんだ。 学校まで追いかけてきた時、オレよりもずっと男らしかったよ。 嬉しかったけれど恐ろしくもあった。 ストッパーのない情熱が、オレだけでなくオマエ自身をも焼き尽くすんじゃないかと。 灼熱の朱夏のような男。 オマエは今、オレの少し前に立って遥か前方を見つめている。 オレだって、オレだって、オマエの前に立てるように頑張りつづけるからさ、 いつか、オレだけを見てくんないかな。 貴方というひとに、ボクは感謝している。 母親と違って、「産んでくれてありがとう」などと言ったことはないけれど。 貴方というひとを、ボクは尊敬している。 ご自分のことを白秋だと言うけれど。 それは寂しい季節ではなくて実りの秋だ。 何者にも染まらぬ白でありながら まだまだ新しく芽吹く可能性を秘めている。 ご自身でも分かっているでしょう? 幼い頃からその背中を見つめていた。 いつか捕まえたいと、ずっと思っていた。 貴方のもとに辿り着くには越えていかなければならない壁がいくつもあるけれど、 ボクは立ち向かって行くだろう。 いつか越えたいけれど、越えたくないひと。 貴方というひとは、一体何者なのだろうか。 あれほど心躍った一局、何年ぶり、いやどの位ぶりであったろうか。 貴方に教えられた。 碁打ちでなくとも碁を打てるのだと。 そしていつまでも成長し続けることが出来るのだと。 貴方の経歴は全く想像がつかない。 プロ棋士でないのに、あの肌を切り裂く吹雪のように厳しい一手。 だが、玄冬に立ち向かっているようでありながら、 私はいっそ清々しい気持ちだったのだ。 実体のない、貴方。 電脳上だけに存在した棋士。 しかし電子の海の向こう側には必ず生身の人間がいるのだと、私は信じている。 貴方というひとを、どう表現して良いか分からない。 生身の私ですら疾うに通り過ぎてしまった季節を、青春を生きている。 神の一手へと続く梯子の一段としての役割を終えてしまった私と違い、 貴方には未来がある。 もしかして最後の一段なのではないかと思えるほどの才能と可能性。 嫉妬した。 何故私ではなく貴方なのだと。 思い上がっていた。 二度も転生した自分こそが神の一手を極めるために選ばれたのだと思っていたのだ。 けれど、今は分かる。 神が貴方を選んだ理由。 でもせめて神の一手が極められる瞬間を、この目で見たかったな・・・。 少し悔しい。 それでも。 私は貴方が、大好きでしたよ・・・。 −了− ※多分ヒカルは「朱夏」なんて言葉使わないだろう。 最後にアプするつもりでしたが、時間が経つほど恥ずかしくなりそうだ。 |
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