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010:トランキライザー |
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雨音が聞こえる。 なんか、ごっつ変な夢見た。 変っちゅうか、えらい現実離れした、怕い、夢やった。 目、開けたら、見慣れへん白い天井で、ちょっとびびったけど あー北斗杯か、ここ東京やんってすぐ思い出す。 それにしても何であんな夢・・・ っちゅうか! ケツ、痛い・・・。 嘘やろ・・。。 顔からざざぁって血の気引いてくんが自分でよう分かる。 動けへん・・・。ベッドから出られへん。 いつの間にか雨の音は止んどって、窓から差し込む光に あれは雨やのうて、シャワーやったんや、って気い付いた。 バスルームのドアがカチャリ、開いて、 何でオレの部屋に人おんねん! 腰にタオル巻いて頭拭きながら出て来た影は、背が高うて、 高いだけちゃうんや。結構ええ体しとる。 水泳でもしとるんかな。 モテるんやろなぁ・・。 やのうて! 「ええっと、こ、高永夏!」 「・・・ニョンハセヨ。」 ニッと笑いながら、何か分からへん事言う。 外人に見えへんけど、外人なんやなぁ、なんて今どうでもええ事を。 「な、何しとんねん!何でここおるねん!」 言うても通じへんことは分かっとる。 それに・・・、実は答えも分かっとる。 二重に無駄やと分かっとりながら、言わんとおれんかった。 奴はタオルを首に掛けてしばらく首かしげとったけど、 いきなりベッドに膝突いて、オレの方ににじり寄ってきた。 「○○○○、○○。」 「分からへんて!」 「○○○、○○○○○○。」 空調がええ感じで、暑くも寒くもないから気いつかんかったけど、 肩掴まれて、自分が裸やっちゅうことに気が付いた。 ぽふっと大きな枕に押し倒されて、尻の痛みに思わず息が止まる。 その間に睫毛の長い女みたいな顔がどんどん近づいてきて、 まさかまさか、と思う内に 口づけを。 あかん、あかん、頭真っ白。 オレ、大阪に彼女おるっちゅうねん。 「しばくぞワレぇ。」 「○○○○○○、○○○○○○。」 「ちゅうか、何さらしとんじゃ。のけや。」 「○○○○○○、○○○○○○○○○、○○○。」 我ながら声に、覇気がない。 多分内容は全然通じてへんやろ。 言うてもコイツ、何かヤバいねんもん。目えおかしいし。 外人やから怖いんやない。 何者でも普通あんなことされたら、その相手が怖なってもしゃーないと思う。 「○○○○○○、○○○○○○○・・・・・」 何かしゃべっとるけど全然分からへん。 頭痛い。 何でオレは、抵抗も出来んとこんな奴にヤられてしもたわけ? 嫌や。 なかったことに、なって欲しい。 「○○○○、○○トランキライザー・・・・・」 ?今、知っとる言葉が出てきた。 指さされたサイドテーブルに、丸と棒のハングルが印刷された薬局の袋。 手を伸ばして引き寄せ、ガサガサと開けてみると 「・・・ハルシオン、か。」 「○○○○○、Do you speak English?」 「ノー!じゃボケ。」 どうせ分からへんねんから言うとけ言うとけ。 マイナートランキライザーのこの薬は、偶々知っとる。 もう学校やめてしもたツレが、よう飲んどったから。 不安で、不安で、不安で、不安で、どうしようもないんや、と。 あんま薬飲んで寝るんってようないんちゃうかな、と思たけど、 訳もなく緊張して死にそうな気持分かるか、って言われたら分からへんし。 日本でも韓国でも、同じ錠剤やねんな。 どうでもええけど。 高慢な目をした韓国人に、 躁鬱が激しうて、手がじっとりと湿っとった友だちを、重ね合わせる。 にしても。 昨日か一昨日来日したばっかりやろに、袋の中、なんか滓が多いな。 「お前、ゆうべこれ全部飲んだんか?」 「○○○、○○○○○○○。」 ニコニコしながらオレの胸を指さす。 「オレかーーっ!」 ・・・思い出した。 昨夜は興奮しとったんか、なかなか寝れんかったんや。 しゃあないから起き出して、寝酒に自販で缶ビール買うとったら コイツが現れて。 まずっ! と思うた。 何か一応国際試合やし、出場選手が未成年で飲酒っちゅうのは。 下手したらオレ出場停止とか、最悪日本チーム棄権とか。 口止めしとうても言葉通じへんし、頭パニックでどうしょうどうしょう、 って固まっとったら、コイツ、 自分もオレの前で堂々とビール買うて、ウィンクしよったんや。 それに、見惚れてしもたのが運の尽きやったんかも知れん。 永夏はまだ半分固まったオレの肩を抱いて、自分の部屋に連れ込んだ。 そうや、ここ、オレの部屋やない。 永夏の部屋や! その後、薄暗い間接照明の中、ベッドに腰掛けて、何やわからん間に カンパーイ!みたいになって、二人でビール飲んで。 テレビつけて、初めて見る東京の深夜番組にオレだけ笑ったり、 永夏が変な所で爆笑しとったり。 暗い部屋中がテレビの光でちらちら揺れて、真夜中の東京の空の下、 隣には綺麗な顔した外国人。 現実を超越した、非日常的な空間にも酔うとったんかも知れん。 オレは、永夏がくれた幾つものタブレットを お菓子みたいに一気に口に入れてしもた。 ガリガリ噛んだらごっつ苦かったんで、ビールで流し込んだんや。 そら、意識も飛ぶわな。 その後のことは思いだしとうもないんやけど、何でかめっちゃ覚えとる。 ベッドに寝転がって、服脱がされても、まだ夢の中のような気がしとった。 ってゆうか、朦朧として、オレって女やったっけ。コイツ、オレのオトコか何か やったっけ、とか普通に考えとった・・・。 ・・・激しく不本意な記憶が戻ったところで、痛む尻を押さえて 散らばった服を何とか身につける。 あー。まだちょっと頭ぼーっとした感じする。対局、大丈夫かなぁ。 まあお陰で緊張もどっか飛んでってしもたわ。 中国戦やから、こいつと顔合わせんで済むのは有り難い。 「とにかく。」 「○○◯◯?」 「オレ、帰るわ。」 ドアを指したら、永夏はまた薬を一粒、二粒、と出しとる所やった。 その手首を掴む。 「それ位でやめとけや。」 「○○。」 「緊張するんも不安なんも分かるけどな。ツレがエスカレートして ・・・死にかけたことあるんや。」 「○○◯◯◯◯◯◯◯、○○○○○、◯◯◯◯◯◯◯○○◯○。」 「うん、そいつではいくら飲んでも死なんのは知っとる。それでもな。」 永夏は微笑みながら溜息をついて、取りあえずは薬を袋に戻した。 オレが帰りかけている事に気づき、立ち上がる。 でかっ!オレも高い方やのに、ほんまにいっこしか違わへんのか? 差し出しされた右手を握り返し。 「○○○○○◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯○○○。」 「ああ。お互いに頑張ろや。日本は、負けへんでぇ!」 シャワーを浴びたせいか、まだ湿っけとる手にまた ツレを思い出す。 あいつは、ほんまに弱い奴やった。 永夏はあいつなんかとは正反対に見えるけど・・・。 自分の強さに嫌味なくらい自信を持っとるように見えるけど、本当は。 次にコイツが日本に来る時までには、簡単な韓国語くらい覚えとこと思う。 今回言えんかった文句を思いっきり言いたいからな。 それにオレはホモやないって絶対伝えなあかんし、ついでに説教もしたる。 その後、鶴橋に焼き肉でも食いに行こや。 −了− ※この後社対中国戦ですか。無理! カザミンに「昼休みに彼女に電話してみたり」というコメントを貰って嬉しかった。 |
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