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009:かみなり 今日進藤は女の部屋に泊まっている。 外は豪雨。 傘がなければ、帰りたくなくなるかも知れない。 今日進藤は女の部屋に泊まっている。 夜半過ぎ、雷が激しくなってきた。 これでは、帰りたくても帰れないだろう。 この部屋に一人で過ごす事なんて珍しくないのに、今日はやけに広く感じられる。 どうせ明日になればまた狭くなり、きっと進藤は後ろめたくもなさそうな顔で 「昨日女ンとこに泊まっちゃった〜。」 などと言うのだろう。 いや、それか下手な嘘でもつくかもしれない。 一緒に暮らし始めて一ヶ月。と5日。 当初狂ったように求められて、殺されるかと思ったが 最近やっと落ち着いてきた所だ。 そして今日、進藤は女の所に。 泊まっている。はずだ。 構わない。 女の部屋に泊まろうが、そこで何をしようが。 この部屋に連れて来ようが、その女をボクに紹介しようが。 構わない。 ボクに飽きても構わない。 自分から手を出して来たくせになんて言わない。 別れたいと言うなら別れるし、 ここから出て行けというなら出て行く・・・。 構わない。 彼女と目の前でキスしようが、いや、男でも良い。 ボクの知っている人間であったとしても許す。 家事を全部しろと言うならするし、 ボクにキミの従僕になれと言うなら、奴隷になる。 何もかも許すから、 だから、どうか。 どうか女の部屋にいてくれ。 どんな女でも構わない。 不美人でも頭が足りなくても、 全然ボクの好みの人じゃなくても。 結婚したいというならすればいいじゃないか。 子どもが出来たからコイツと結婚してやってくれというなら、判をつく。 だから、どうか、女の部屋にいてくれ。 どうか、いてくれ。 どうか。 どうか・・・! 神様。 お願いです。何でもします。 だから、どうかいてくれ進藤。 この世のどこかに。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カチャ・・・・。 「あれ?塔矢早起きだなぁ。」 「・・・・・・・・今、起きた所だ。」 「そう?えへへー。昨夜和谷んちの研究会の後飲み会になってさ〜。 潰されちゃった。」 「・・・・・・。」 夢なら・・・醒めて貰っては困る。 だからボクはほとんど考える事も口を開く事もできない。 「今朝はいい天気だけど昨日の晩、えらく降ったみたいだな?」 「・・・知らなかったのか。」 「うん。ぐーすか。・・・・・・あの、連絡しなくてゴメンな。」 何事も無かったように上着を脱ぎ、後ろからボクを抱きしめる。 進藤の、腕・・・。 生きている進藤の。 ・・・暖かい。 一晩凍り付いていた身体が、芯から一気に溶けるようだ。 「・・・いいよ。別に。どうせ女の所にでも泊まってるんじゃないかと思ってた。」 「え、そうなの?」 「ああ。」 「・・・もしかして、怒ってる?」 「いや。」 「えー。それってどうなんだろ。オレ女の事まで疑われてるとは思わなかったけど、 絶対今日はかみなりが落ちると思ってた。」 「馬鹿馬鹿しい。」 「おまえ、ホンットに淡泊だなぁ。・・・あれ?」 覗き込む鳶色の瞳が眩しくて、目を逸らす。 「大丈夫?昨夜一睡もしてませんって顔してるけど。」 「ちゃんと寝たよ。」 嘘だけれど。 何もない、早く寝なければと思いながら、ベッドの中でまんじりともせず。 進藤の残り香が鼻をかすめる度に、恐ろしくて身体が震えたけれど。 「もしかして、やっぱり嫉妬した?」 「まさか。」 「うっそだぁ。じゃあ何でそんな不機嫌そうな顔してんだよ。」 「嫉妬なんか全然してない。」 それは本当だ。 嫉妬なんかしなかった。 キミが女の部屋にいればいいと思っていた。 キミが、この世のどこかで生きてさえいれば。 でもそんなこと言ってやらない。 今不機嫌そうな顔に見えるのは、きっと涙が出そうになるのを必死で堪えているからだなんて、 キミになんか教えてやらない。 一生。 一生だ! −了− ※アキラさんは心配性。こんな女々しいアキラさんいやだ。 でも連絡しないのって罪ですよね。特に嵐の夜は。 「073:煙」の数年後っぽいというか、対になってます。 んでまた和谷かいっ!な。 |
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