008:パチンコ








こんな夢を見た。








何故か僕はパチンコ店に入った。

外から見ると煩くて狭そうで、いかにも苦手な場所だと思っていたが
中に入ると広々とした空間にぽつんと一台だけ台がある。
うるさそうなのは店の外だけなのか、と思った。



その一台には進藤がこちらに背を向けて座っていて、一心不乱に打っている。

近づくと


『塔矢か。』


と言ったが振り向きもせず、その内代わるから待っていてくれと続けた。







進藤が親指で銀色のレバーを弾く度に、銀色の玉が上に向かって飛び出し、
色鮮やかな台の上をくるくると回りながら落ちていく。


ぴん。

ころ、ころころころ・・・


つぎつぎ、つぎつぎ、進藤は打つのをやめない。
その内


『これは。』


ころころと、銀の玉が転がり落ちる。


『緒方先生に負けたとき。』


ぴん。

ころ、ころころころ・・・


『これは、新初段。』


・・・何を言っている?


『忘れたの?』


ころころ、ころころ。
きらきら、きらきら。


『全部おまえが流した涙だよ。』


次々と転がり落ちる銀の玉は、台から飛び出し、僕の足元に転がって来る。


『違う。』

『そうだよ。』



これは、中学囲碁大会の三将戦。

これは、二度目にオレと対局してボロ負けした時。


ぽろぽろ、ぽろぽろ、流れ落ち続ける、銀の玉。
僕の足元も、進藤の足元も、銀色に埋まって動けなくなりそうだ。



『おまえが今までに落とした、沢山の涙。』




・・・違う・・・!!!




『僕の涙じゃない。僕は、涙を流したりしない。』



驚いたように振り向いた進藤が、最後に弾いた玉は

勢いよく台から飛び出し、しかしいつまでも落ちなかった。

そのことに僕は酷く安心する。



『僕の涙は、天に昇る。』



そう言うと本当に自分の目に涙が滲んできて、
僕は上を向いた。



溢れた涙はやはり頬を伝わず、空へと落ちていった。






−了−







※今時こんなパチンコ台はない。塔矢の夢だから。

  ええっと・・・「ボクの涙はそんな安いもんじゃない!」みたいな・・・。
  「落とさなければいいんだろ」みたいな・・・書いててよく分からないや。






  • 戻る
  • SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送