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003:荒野 |
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こんな夢を見た。 目前には果てしなく白い荒野と、ゴッホの絵のように渦巻く暗い空。 寒い。 寒い。 それでもああ、この白い大地と黒い空は、きっと碁盤の中の世界だと思った。 碁盤の中なら、僕は得意だ。 歩いてゆかなければ。 きっとたどり着ける。 どこへ? どうやら僕は黒っぽい着物を着ている。 今年の正月に合わせて母が誂えた・・・。 お母さん。 会いたい。 絶え間ない強風が裾をまくり上げ、襦袢から覗く白い素足が 我ながら眩しい。 ここでもまた、黒と白だ。 どうも僕を含めてこの荒野はモノトーンで出来ているようだ。 寒い。 でも歩き続けていれば、きっと総天然色の誰かに会えるような気がした。 遥か向こうに誰か見える。 まだとても小さいけれど、確かに見える。 お母さん、じゃなくて。 お父さん、じゃなくて。 ・・・進藤? そうだ、きっと、明るい色の髪を揺らして、今日も原色の服を着ている。 この色のない世界に暖かい風をもたらしてくれる。 近づくにつれ、だんだん不安になってきた。 本当にこんな荒れ果てた野に、進藤がいるんだろうか。 もしかして、あれは怪物。 僕を喰らい尽くすために待ちかまえている・・・。 微かに赤く見えるのは、怪物の長い、舌。 いや、あの赤は見慣れた進藤のTシャツだ。 近づけばきっと「5」とか書いてあって。 それが証拠にだんだん暖かくなってきたじゃないか。 こんな世界でも、君がいればきっと楽しい。 ねえ、また打とう。 神の一手を目指そう。 ・・・この暖かさは一体。 進藤の体温のはずがないじゃないか。 これは天地をも焼き尽くすサラマンダーの炎。 僕も白い荒野も黒い空も、赤く染められてしまう。 僕は 進むべきなのか、退くべきなのか。 嗚呼、どちらなんだ。 行く方に待っているのは 進藤なのか、怪物なのか。 その内。 どちらでも同じ事だと言うことに、気が付いた。 −了− ※アキラさんにとってヒカルってかなり怖い存在と思います。 小学生時代のアレが実力なんじゃないかと、いつ捻り潰されるかと、内心戦々恐々だったり。 私ならそんな怪物の側にいたら胃に穴が空く。 |
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