022:MD








アー・・・・・・ベマリィイ〜アーー・・・・・・我〜ぁぁがぁ・・・君・・・


頭蓋骨の中で女の高い声がする。
どっかおかしいんじゃないかと思うほどに震える声。

足の裏から、ぞわぞわと這い上がる感覚。



・・・


  「進藤、今日は暇か。」

  「え?ええ。もう仕事ないですけど。」


  棋院で緒方先生にマンションに来ないかと誘われて、何となく着いてきた。
  何となくって、別門下の先輩棋士に、ってまあそれ自体おかしいんだけどさ。
  リビングに入ったら赤い蝋燭があって、今日クリスマスイブじゃん!って気付いた。


  「す、すみません!」

  「何がだ。」

  「今日って、オレなんかと会ってる場合じゃないんじゃないですか?」

  「ああ・・・夜になったら客が来るが。」


  何だ、オレは彼女が来るまでの繋ぎか。
  と思うとちょっとだけがっかりしたけどさ。
  でもそれを聞いて気が楽になったのも確か。






野のぉ・・・果ぁてに嘆かうぅ・・・・・・乙女のぉぉお 祈ぉりを・・・・・・


ぽた、と胸の上に何かが落ちてきて、冷てっ!と思ったけどそうでもなかった。
流れて肌の上に広がるのが嫌で、上を向いたけれどどうもすぐに固まる液体らしく
全く流れず、少し引きつるような感覚をもたらす。


哀れとぉ 聞こぉぉし 給へ・・・・・・


液体は後から後からぽたぽたと垂れてくる。
どうも、オレの乳首辺りを狙っているらしく、その辺りに集中している。
もぞもぞする感覚がして、思わず身を捩って逃げたが、遂に乳首に命中させられてしまい


う・・・!


思わず上げた呻きは、噛まされたタオルに吸い込まれていく。




  ・・・コーヒーだったか、紅茶だったか、その辺の記憶が既に曖昧なんだけど。
  緒方先生が入れてくれた飲み物を飲んで・・・タイトル戦の話でもしてたか?

  ソファに座っていても眩暈がするような気がして、ちょっと立ち上がってみたら
  まともに二歩歩けなくて、同時に立ち上がった緒方先生の腕の中に
  倒れ込んでしまった。


  「すみませ・・・」


  肩に縋り付いたら煙草の匂いがして、ああホントすみません、と思いながら
  オレの意識は途絶えた。






御許にぃ安らぁけーくー・・・・・・
 

ぬるぬると冷たい手が、脇を這い回る。
このぬるぬる何だろ、汚い物じゃなきゃいいな、って思いながら。
段々下がってきた指にぞくっとして、身体が勝手に跳ねる。


憩わせぇ給ぁへ・・・


指はオレの閉じた股の間に入り、睾丸をすくい上げる。
既に半分勃ちかけてるだろうオレは、その器用な動きに簡単に屈して。
緒方先生の碁石や煙草を挟んだ指を思い浮かべながらも
高まっていく。




  ・・・頭の奥で鳴る音に目を覚ましたら、柔らかいマットレスか何かの上に寝かされていた。
  目を開けても視界は閉ざされていて、睫毛が何かに当たる。

  やべっ、何かで目隠し状態になってる?
  と思って慌てて右手を目の所に持ってこようと思ったら、左手の強い抵抗にあった。
  つまり、両手は前でひとまとめにして縛られていた。

  一瞬パニックになったけど、縛られている事が分かってから、落ち着いて
  両手で目元に触る。
  案の定、目隠し状態というよりは目隠しされているようだった。






悩める〜我が心〜・・・君〜に祈〜ぎ祀〜るー・・・・・・


指は、オレを爆発寸前まで追い込んでは焦らすように外す。
そうしながら別の手は尻の間を往復してたけど、ある瞬間、穴の回りをぬるりと撫でた後
ぐっと力を掛けてきた。
慌てて括約筋を締めたけど、それでも、簡単に中に入ってきて。

驚いたけど、ああ遂に来たか、と安心するような気持ちもある。
思ったより簡単に入って、痛くなかったからかも知んないけど。


  ・・・何となく、緒方先生なら仕方ないかと思った。
  碁の腕もあるけど、オレよりずっと大人で、色んな経験があって。

  大人の女の影が見え隠れして、そういう所、かっこいいと思ってしまっていた部分もあって。
  きっと沢山の経験をする内に、オレみたいなガキで遊んでみようかだなんて
  ふと思ったのかも知れない。

  オレにとってはこんな、他人とする性体験なんて初めてだけど。
  きっとキモチ良くしてくれる。
  一回きりの、割り切った体験なら悪くない。
  無駄な抵抗して後で気まずくなるより、出来るだけ楽しんじゃえ。
  なんて思っちゃうオレってどうかしてる?



アヴェ・マリア・・・・・・


  ・・・ただオレを不安にさせたのは、聴覚が奪われている事だった。
  最初鳴っててオレの目を覚まさせたのは「きよしこの夜」だったか。
  両耳にイヤホンが入れられてガムテープか何かで留められ、
  それから絶え間なくクリスマスソングを聞かされている。


アヴェ・マリア・・・・・・


聖母を讃える声を聞きながら。
頭の中に広がる、教科書で見た西洋の宗教画の世界の中で
オレは足を開かされる。

男神の長い指をもう一本入れられて、かき混ぜられると。
時折泣きたくなる程の快感が訪れて、もっと、と腰を突き出してしまう。


やがて、指が抜かれて両太股を抱えられた。

ず・・・

覚悟はしていたけれど。
予想以上に太いものが、それでもぬめりを借りて滑らかに入り込んできて
今度は痛みに泣きたくなった。


やだ、
裂ける、
先生、


声は、やっぱり呻きにしかならず、
それでも同時に前を扱かれると痛みと正比例して今まで感じたことない程の
気持ちよさで。


思わず頭を激しく振ると、耳元でべり、と音がして片方のイヤホンが外れた。
ずっと響いていたソプラノが、左側に遠ざかる。
右耳からはやけに生々しい、衣擦れの音が聞こえて。
そして。



「・・・最高の、クリスマスプレゼントですよ・・・。」



・・・・・・・・・え・・・?



とても久しぶりに聞いた現実世界の音。
相変わらずキレイなピアノの伴奏も響いているけれど。
今の、声・・・。


ぞくっとして、無茶苦茶に頭を捩って肩で目隠しをずらすと、

最初に目に入ったのは赤い斑点が不規則に散った自分の胸。
リビングにあった赤い蝋燭を思い出すと同時に、今まで何ともなかったその箇所が
急に熱く疼く。

次に頭の横にのたくった細いコードと、その向こう側に置かれたコンパクトMDプレーヤー。
中では聖歌が入ったディスクが回転しているんだろう。

そして思いっきり顎を上げて、目隠しの下の隙間から自分の下半身の方を見ると。

入り口から差し込む、四角く切り取られた光の中の影は
やけに線が細かった。



・・・・・・!!



オレは今日初めて本気で暴れた。

怒りと屈辱と、混乱で、頭の中が沸き立つ。

けれど、殴りかかろうとした腕はすぐに頭の上に縫いつけられる。
多分、緒方先生によって。



「進藤・・・気持ちいいよ、キミの中。」



そして再びオレの中で動き始めた圧迫感に、
もたらされる痛み。

と、絶望的な、快感。


耐え難い現実から逃れようと、沈みかけた意識の中で
最後に響いたのは、



アヴェ・・・マリア・・・・・・



やはり、聖歌だった。







−了−








※キリスト教の方、すみません。悪気はないです。
  でも歌詞うろ覚え。

  2005年。メリークリスマス、皆さん。(すみませんハッピーエンドじゃなくて)
  去年もアキヒカだった気がします。どういう法則なんでしょう。






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